第121話 チェック


 猫屋の顔が赤いのは、きっと温泉から出たばかりだからだ。


「え、えっとね……えっと…………そう!! 制服!! 制服デート!!」


 どこか緊張してる面持ちは、頼りない俺の主観でしかなく。


「も、もう高校卒業して3年も経ったじゃーん? だ、だからー、ちょうどいい時期かなーって!! 大学生なら1回は制服着てデートしとかないと!!」


 彼女の早口は、デートなどという単語を連発する羞恥心を誤魔化すための物じゃなくって。


「それにお盆で実家に帰るから制服を取りに戻れるしー!! ほら、超グットタイミングー!! 今を逃せば2度と来ない、みたいなー!!」


 嘘っぽい取ってつけたような理由は、裏表なく本当にその通りの意味で。


「ど、どうかな……陣内…………」


 俺の返事がないせいで、ひどく不安にこちらの顔色を窺っているのは…………えっと、その…………あれ?


「へ、へぇ。お、面白そうだな、やってみようぜ」


 不安げな顔が見ていられなくって、俺は考えるよりも前にそう口にしていた。


「~~~~っ!!」


 ぱっと、花火でも上がるみたいに彼女は表情を一変させる。


 それは明るくって、綺麗で、一瞬でこっちの目のさらおうとする大輪の花だった。


「ほ、ほんとに!? いいの!? 私、本気にしちゃうからね!!」

「な、なんだよ。お前から誘ってきたんだろ? そんなに驚く事か?」

「あ……だ、だよねー!! あ、あははは、そうだよねー!! 私から誘ったのにねー!! 変だよねー!!」

「あとな……もうちょい声量を落とせ。お願いだから」

「へ?」


 言われて、猫屋は周りに目を向ける。


 喫煙所内の関心は、大声で話していたせいで俺たちが独り占めしていた。集まっているのは『大学カップルか。若いっていいね~』と言わんばかりの生暖かい視線。


 勝手に祝福でもされている気分だった。居心地が最悪に近い。


「す、すいませーん……」


 喫煙所の雰囲気に気が付いた猫屋は、消えそうな声で他の利用者に向かって謝り、くるりと視線から逃げるように背を向ける。俺も彼女に会わせて観客の視線に背を向けた。


「ご、ごめんねー、陣内。変に目立っちゃってー」

「いいよ別に。それより、ほれ」

「へ? んぐっ!?」


 彼女の口に、自分が吸っていた甘い煙草を突っ込む。


「悪い、トイレ行ってくる。酒飲むと近くってな。猫屋はそれの処理よろしく」

「……りょ、りょーかい」


 トイレなど嘘だった。


 腹の底から湧き上がってくる説明のつかない感情に居たたまれなくなってしまい、周りの雰囲気も相まってとにかくこの場から離れたくなっただけだ。


「温泉前でまた集合な」

「はーい」


 半分近くあったラキストを捨てた猫屋は、これ幸いにと俺のアークロイヤルを吸い始める。


「すぅ、ふぅー……えへへー、これやっぱしあまーい」

「………」


 ふにゃりと煙を楽しむ可愛らしい彼女をなるべく見ないようにしながら、俺は早足で喫煙所から飛び出した。


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 ずかずかと荒い歩幅であの場から離れ、深い呼吸を繰り返す。


 そうしていると懐に酒瓶があったのを思い出し、わき目もふらずに胃に流し込んだ。


「ふ゛はっ」


 酒を飲みながら汚物にも劣る自身の穢れを振り払うために足を速める。


 こびりついているのは、男特有の痛々しい勘違いだ。


(クソみたいな期待してんじゃねぇよ。最近告白されたからって調子に乗ってるよな、お前。舐めてんのかよ、おい。前にふざけてデートしたのと同じだ、同じ)


 心の底から罵倒の言葉が溢れ出して止まない。


 自分を戒めていたその時、不意にスマホが短く震える。画面を確認してみると、猫屋からの個人メッセージが届いていた。


『さっきの話、行き先は遊園地ね!! シーかランドかは一緒に相談して決めよー!! あ、それと、恥ずかしいから安瀬ちゃんたちには秘密でよろしくね』


「…………」


 スマホの画面を無言のまま凝視する。

 

 了解という2文字を返信するだけの事に、俺は5分近くもかけた。


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 愛媛の名産品と言えば、それは蜜柑である。なので安宿での晩酌は蜜柑尽くしとなった。


 道後オレンジブロッサム蜜柑酒peelのスプラッシュオレンジ煙草半生のドライオレンジつまみ。口の中が甘さと酸味でいっぱいで、温泉あがりなのも相まってか、体から柑橘系の良い香りが立ち上っているような気がする。


「私、そろそろ塩辛いのが食べたいかもー……」


 酒盛りを初めて2時間が経過したころ合いになると、猫屋が蜜柑酒を前にして


「我もじゃ。段々甘いのと酸っぱいのが判別できなくなってきたでござる……」

「そうか? 俺はまだまだいけるけど」

「君は結構な甘党だからね……僕なんてもう胸やけがしてきたよ。猫屋、悪いんだけどお土産用のクラフトウイスキーを開けてもらえないかな?」

「全然いいよー。というか最初からそうしとけばよかったー。ドライフルーツにはやっぱりウイスキーでしょー」

「で、あるな」


 ふぅむ…………初めは喜んで飲んでたくせに、これくらいで情けない奴らだ。まぁいいや、蜜柑酒は俺が独占して楽しませてもらおう。猫屋のウイスキーに蜜柑酒を合わせてクロンダイクもどきにして飲むのも旨そうだ。


「ふわぁぁー……でも、もう12時かー。明日もあるし、ここら辺を飲み切ったらそろぼち寝ちゃおうかー」

「何を言ってるんだい猫屋。今夜は日が昇るまでボードゲーム大会だよ」


 西代はそう言うと、酒と煙草が錯乱したテーブルに大量のボードゲームを追加で並べだす。


「おまっ、それどうしたんだよ」


 俺たちは酒を片手にボードゲームをやる事が多いが、彼女が取り出したのは見たことがない物ばかりだ。ボードゲームというのは意外と値が張る物なので、この量を買うとなると数万円はかかる。


「お爺様から借りてきたんだ。お爺様の数少ない趣味がボードゲームの蒐集でね。古今東西、珍しい物がいっぱいさ。ここの宿は追加料金でチェックアウトの時間が伸ばせるから今日はこれで遊びつくそう」

「えぇー?」


 夜更かしして遊ぼうという西代の提案に、猫屋が難色を示す。


「明日は旅行最終日なんだよー? せっかくだしー、今日は早めに切り上げて観光を満喫した方がよくなーい?」

「あのね、猫屋。地元だから言わせてもらうけど香川なんてうどん食べたらそれで終わりだよ?」

「いや、そんなことないでしょー? 小豆島とか栗林公園とかー、私行ってみたい所結構あるんだけどー」

「悪いんだけど、そこら辺は僕はかなり行き飽きてしまっててね。あ、パチンコ屋なら僕の行きつけの所に連れて行ってあげるよ?」

「……それはちょっと興味あるけどー、流石に旅行中にパチンコ行くほど私はパチンカスじゃないっていうかー……私は普通に旅行を満喫したい、みたいなー?」


 昼からここを出るとなると移動時間と飛行機の時間を考えるに、明日は昼食を取ってお土産を買えば旅行はお終いなるだろう。猫屋はそれが少し物足りないのだ。


 だけど俺はこの時、俺は猫屋とはまったく違う事を考えていた。


『君と同じさ。地元で嫌な事があった』


 昔、西代が俺を慰めるために話してくれた暗い過去を思い出す。旅行前にも思ったが、地元にあまり良い思い出がない彼女は地元で遊ぶことを避けているのかもしれない。


 猫屋には悪いが、ここは西代を優先しよう。


「俺は乗ったぜ」

「我は乗った」


 思いがけず、俺と安瀬の声が重なる。


 驚いて安瀬と互いの顔を見合わせた。彼女も俺が西代の提案に乗った事を意外そうにしていた。


 ……まぁ、偶々だろう。彼女が西代の過去を知っているはずがないのだから。


「ふふっ、これで3対1だね。じゃあ2人とも例のあれ、よろしく」

「「御意」」


 俺と安瀬は旅行鞄からスピリタスを1本ずつ取り出す。


「はぁー、結局こうなるのかー……まっ、それはそれで悪くはないけどさー」


 猫屋は出された物に呆れながらも、俺たちと同様に未開封のスピリタスをテーブルに置く。


「……今更なんだけどさ、なんで君たちは普通にそんな劇物持ち歩いてるの? 親切心から言ってあげるけどそれって異常だからね?」

「はぁ!? 焚きつけたお前がそれ言うか!?」

「というかお主も持って来ているであろうが!! 鞄に詰めてる所を我はしっかり見たでござるからな!!」

「あーあ、これで今日最初の犠牲者が決まっちゃったねー!! 素直に観光しておいた方が良かったって後悔しても遅いよー?」

「なんだい、多勢に無勢って訳? いいね、かかってきなよチンピラども……!!」


 こうして俺たちの夜はいつも通りに更けていく。俺たちはどこに居ようが変わらないという事だな。


 なお、一番最初に潰れたのは西代だった。……当たり前だよな?


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「うっぷ、おぇー……きもちわるぃぃー…………」

「陽が、陽が眩しすぎるのじゃ……日光に負けそうなのじゃ……」

「に、にししろ。頼む、コンビニに寄ってくれ……水、水が欲しい……」

「僕は今日ほど早めに潰れておいて良かったと思う日はないよ。いや本当に」


 翌日の四国旅行最終日。車の中では3人の屍がうめき声をあげていた。


 昨夜、大魔神西代桃を早々に討伐した俺たちはそのまま調子に乗って潰しあいを続け、スピリタスを4本空けるまで乱痴気騒ぎをやめなかった。


 1日でスピリタスを4本を空にしたのは新記録。で、その代償が今の状態。


 頭の中で大鐘が鳴り続け、景色は鈍色に褪せてみえる…………オ゛エ゛エ゛エ゛、し゛ぬ゛ぅぅ。


「ほら3人とも、もう着いたよ」


 西代に言われて車内から外を見ると、いつの間にか車がコインパーキングに止まっていた。乗車してすぐに気絶していたせいで気が付かなかったが、もう目的地についてしまっていたようだ。


「うどん食べて、少しでもその二日酔いをなんとかしなよ」

「い、いや、俺ちょっと無理かも。食欲なんて全く湧かない」

「わ、私もー……今、胃がひっくり返ってるからー……」

「拙者、ざるうどんくらいなら、なんとか…………うっぷ。いや、それも無理かも……」


************************************************************


「いやー、超おいしかったね讃岐うどん!! 麺がちゅるちゅるだったねー!!」

「やはり本場は別格でござったな!! それに何よりも安かったでありんす!!」

「だな!! 俺なんて3玉も食っちまったよ!! もうお腹パンパンだわ!!」

「君たちって絶対に人間じゃないよね」


 うどんパワーですっかり体調が良くなった俺たちを見て、西代が軽く引く。


「いやいや、お前だって同じようなもんだろ? 二日酔いなんて味噌汁飲めば治るっていつも言ってるじゃねぇか」

「僕は二日酔いの時にそんなに胃袋に物を詰め込めないよ。人間だから」

「もー、ダメだよ西代ちゃん。好き嫌いしちゃ大きくなれないよー?」

「猫屋、実はここにもう一本スピリタスがあるんだけど飲みたい?」

「す、すいません。それだけは許してください……」

「西代、お主容赦ないの……」


 軽いじゃれあいを傍目で見ながら、食後の煙草が吸いたくなった俺は昨日余ったオレンジ風味の煙草を取り出した。


──シュボッ


「すぅ、はぁ……で、こっからどうするんだっけ?」


 質問と共に100円ライターを西代に放り投げる。


「おっと、どうもね」


──シュボッ


 火種を受け取った西代はポケットからそのまま煙草を1本だけ器用に引き抜き、火を灯す。


「ふぅ……ここの商店街を巡った後、その導線で駅のショッピングモールでお土産を漁って終わりかな」


 使い終わったライターは当然、そのまま次の喫煙者である猫屋に放り投げられる。


──シュボッ


「すぅ、ぷはぁー……お土産かー。ねぇ安瀬ちゃん、香川で有名な日本酒ってなーに?」


 ライターは右から左へ。


──シュボッ


「ふぅ……金陵きんりょうぐらいしか我は知らんの。金毘羅宮こんぴらさんの御神酒として昔から有名でありんす。他は陣内に聞くがよい」


 巡り巡って、ライターは一周して俺の元へ戻ってくる。


「そうだな……面白そうなのを上げるなら和三盆を使ったラムだな。香川は和三盆が名産らしいし」

「おー、流石は安瀬ちゃんと陣内。こういう時はやっぱり頼もしいねー」

「我は日本酒専門であるがな。それも陣内には遠く及ばん」

「まぁそれは流石にね」

「ガハハハ、そう褒めるな褒めるな」


 最近、酒の知識で褒められることが多い気がする。なんともいい気分だ。つい鼻が高くなってしまう。二日酔いも治ったし、中々にいい気分だ。


「「「いやまぁあんまり褒めてはない」」」

「……さいですか」


************************************************************


 高知も愛媛もそうだったが、四国というのは意外にも栄えているようだった。


「本当に駅ビルって香川にもあるんだな。しかも中々に立派なやつが」

「地方は県庁所在地であっても未だに田園が広がってるとでも思ってた? 都会生まれの悪い所が出てるよ陣内君」

「いや、流石にそこまで言ってねぇよ…………てか埼玉って都会なのか?」


 俺と西代は2人で駅ビルの雑貨屋を冷やかしながらどうでもいい雑談に興じていた。安瀬と猫屋とは現在別行動中だ。


 猫屋は『私こういう所に来るとー、とりあえず化粧品売り場に行っておかないと落ち着かないんだよねー』と言って先ほど別れた。


 珍しい事に、安瀬もそれに付き合っている。『敵情視察……いや、これは技術奪取に当たるのかの? 冷戦の時代、情報戦や技術力で後れを取る事がいかに危険かは既に歴史が証明して──』などと訳の分からない講釈が始まったので適当に流しておいた。


 俺たちの中で化粧をするのは猫屋と安瀬だけ。男の俺はまぁ当然として、西代の化粧に対するモチベーションは無いに等しい。必然、興味のない俺たちは他に関心を引く事柄を求めてビル内を彷徨っている。


 とはいえ、地元の人も利用するショッピングモールは他の物と代わり映えはしない。


「……なんか無性にうどん食べたくなってきた。帰る前にもう1回寄れないかな」

「え? さっき食べたばかりだろう? しかも三玉も」

「今度は酒ありでだ。それならあと一杯くらいならいける」


 それに香川のうどん屋には何故かおでんも常備しているらしい。つまみのおでんと、締めのうどん。日本酒かビールがやりたくなるラインナップだ。


「残念だけど、チェーン店以外のうどん屋は3時以降には店じまいしてるよ」

「え、なんで?」

「その時間にはうどんの在庫が無くなってるから」

「……お、恐ろしいな、うどん県民」

「ふふっ、小食の僕でもうどんなら2玉は食べられるよ」


 彼女はどこか自慢げにほほ笑みながら、地元の文化を俺に語る。


 地元に誇れる名産品があるというのは少しだけ羨ましい。埼玉って東京のベッドタウンってイメージが強すぎるからな……。


 県民性の違いをしみじみと感じていると、不意にスマホが短く震えた。何かしらのメッセージが着信したのを感じ取り、俺は反射的にスマホを取り出す。


 メッセージの発信者は大場光だった。


 その名前を見た瞬間、俺はスマホの電源を落とす。


「悪い西代、ちょっとトイレ」

「ん? あぁ分かった。僕はこの辺で待ってるよ」


 大場からのメッセージを西代のすぐ傍で見るのは憚られた。


 俺はすぐさまその場から離れ、トイレに向かうふりをしながらスマホを取り出す。周囲に誰もいない事を確認してから俺はメッセージを見た。


『パイセン、折り入ってお願いしたい事あるんですけど』


 久しぶりとなる大場からの連絡は普段の様子とはかけ離れた丁寧な物だった。


 その短文を見てドクン、と嫌な汗が背を伝い流れ落ちる。


(も、もしかして返事の催促……とか?)


 あの衝撃的な告白から3日が経過したが大場からの連絡はこれが初めての事。そんな中で畏まって切り出される内容なんてのは、俺が今思い描いた物以外想像が付かなかった。


(え、でも、告白をラインで断るのって男としてどうなんだ?? 最低じゃね??)


 告白された経験の少なさから一瞬でパニックに陥る。


 この旅行中あれこれ考えたが結局相手を傷つけずに振る方法なんてのは思いつかなかった。俺は何も返事を返せないまま、次のメッセージを放心しながら待つしかなかった。


 既読を付けて10秒もしないうちに次のメッセージは届く。


『香川に居るならお土産に瓦せんべいを買ってきてほしいっす!! 私あれ結構好きなんで!!』

「ふがっ」


 強烈な肩透かしを食らい、思わずスマホを落としそうになる。


「んだよお土産の催促かよ……!! 紛らわしいんだよあの馬鹿!!」


 ちゃっかりしてるっていうか、なんか俺と違って余裕そうだなアイツ!! 俺に告白した事忘れてんじゃねぇだろうな!! 真面目に考えてる俺が馬鹿らしくなるからそういうの止めてくれねぇかな!!


 しかも要求している物がせんべいって。大場の奴、中二病キャラの癖してまた渋い物を頼んだな…………おまけに言えば、瓦せんべいなんて聞いた事がない銘柄だ。


 大場って実はせんべいが好物だったりするんだろうか。


(よくよく考えたら、俺って大場の好きな食べ物すら知らないような……)


 ますます惚れられた理由が分からなくなった俺は、現実逃避も兼ねて瓦せんべいとやらをスマホで検索する。


「えぇっと瓦せんべい、瓦せんべい…………なに? 瓦のように固いせんべい?? それって食えるのか?」


 俺は変に身構えたせいで中々落ち着くことができず、憂さ晴らしするように独りでぶつぶつと小言を漏らす。


「あの」


 すると、背後から誰かに声をかけられた。


東城とうじょう……いえ、西代にししろももと知り合いなんですか? 貴方」

「え?」


 急に西代の名を出されて驚き、声の方へと振り返る。


 そこに居たのは、真夏だと言うのに首元に革製の白いチョーカーを巻いた若い女だった。


 年の頃は俺とほぼ同じに見える。首に巻いている首輪みたいに重厚なチョーカー以外に、これといって特徴はない。だけど、それがやけに俺の目を引き付けていた。


「えっと、あの……どちらさまでしょうか?」

「あぁ急にごめんなさい。私、西代桃の元クラスメイトなんです。高校の時の」


 元、クラスメイト。


 その言葉を聞いて体に緊張が走る。


「アイツがこんな所で男を連れて買い物なんてしてるから、驚いちゃってつい。地元じゃちょっとした有名人ですから。で」

「────────は?」


 この一瞬で得られた情報量の多さに思考がフリーズする。


「あぁ、やっぱり、貴方は知らないんですね。だから、あんなのと一緒に居られるんだ」

「………………」


 嫌な。


 嫌な、予感が止まらなかった。

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