第8話 学年委員決め
まだ、健二がどこかに出かけるという情報は入っていない
当然その日まではいつも通りの日常がやってくる…はずだった。夏美と登校する時、同じ制服を着た同じクラスの女子が話しているのを聞いてしまった
『学級委員の熊谷さん、失踪したらしいよ』
熊谷さんというのはクラスの学級委員をやっている人だ。性格はとても気が強く、学級委員を選ぶときも自ら立候補していた。行事の時もよくクラスを引っ張っている、姉御的存在だ。
僕がクラスでテストが始まる前であまり注目を浴びる前、つまりインキャだった時も気を遣ってくれたのか、積極的に話しかけてくれた。
そんな身近な人がいきなり失踪となるとショックは大きい。
『そうなんだ…あの熊谷さんが…』
もう1人の女子が相槌を打つ
それを聞いた夏美が反応する
『熊谷さんって加代陸のクラスの人じゃない?』
『うんそうだよ。』
『失踪したって…聞いてた?何かあったのかな…』
『うん聞いた。家庭内で問題とかあったりしてね』
『うわぁーそういうの怖いなぁ。』
『夏美は家族仲いいの?』
『まぁ他の家庭に比べたらそうなのかな。よくパパとゲームとかするし』
『そりゃたいそう仲がよろしいようで』
『でも加代陸と一緒にいる時の方が楽しいよ』
顔を赤らめながら夏美が言った。
『ん?急に声が小さくなって聞こえなかった。なんて言ったの?』
『ううんなんでもない』
夏美はニコリと笑って誤魔化した
『皆さんどこかで聞いたかもしれないけど、学級委員の熊谷さんが行方不明になりました』
担任の口から改めて聞かされる。ざわざわと声がする。
クラスのようきゃグループの1人が言った
『うちのクラスの唯一のマドンナが!!』
そのセリフのせいで女子から睨まれるていることにも気づかず次々にクラスの女子の外見をディスっていた
山下翔吾
モテ指数24
モテ指数を確認すると昨日まで50近くあった彼のモテ指数は一気に下落している
『そこで、今日のホームルームではみんなには決めてもらいたいことがある。代わりの学級委員を決めてくれ』
失踪したことを知ってからまだ数十分しかたっていないぞ。もう少し感傷に浸らせて欲しいものだ。
それより今、まずいことを言ったぞ。学級委員を決めろだって…?クラス中が水を打ったような静けさをまとった。ようきゃグループもだ。
なぜなら今ここで声を上げるて注目を浴びることは学級委員を任される確率が上昇することを全員が察しているからだ。
『それじゃあここからは学級委員の僕が仕切るよ』
彼の名は熊本京
学級委員は2人で行うため、熊谷さんが失踪してももう1人いる。いつも、熊谷さんのせいで影が薄くなっているが今回は仕切ってくれるようだ。
『さて、立候補する人は手をあげてくれるかな?』
全員微動だに動こうとしなかった。ここで動くと『あれ?お前今手を挙げた?』と吊し上げを食らってしまう。そうなってしまえばおわりだ。『い、いや学級委員なんてゴメンだし』なんて言ってしまえば熊本君を涙目にさせてしまうだろう。彼は以前学校にブラジャーをつけていることをクラス中に言いふらされて号泣していた。そう、彼はメンタルが弱いのだ。
『えっと、じゃ、じゃあ誰もいないのだったらくじ引きをして決めようかな』
すでに涙目である
『いや5、6人に別れてジャンケンした方がいいんじゃないかな。クジ作るのにも時間はかかるし』
ここで初めて声を上げたのは東進だった。彼は知っているのだ。どんな人間にも完全にランダムにジャンケンを出す人間なんていないと。そのパターンを読み取ることができると、東進は絶対的自信があるのである。それは全てを記憶する僕にも同じことが言える
『まって!それなら私がやる。』
ここにきて立候補をしたのは山岸桃だった。
彼女はジャンケンより全員にリスクが与えられた中、その全員のリスクから救うことでモテ指数を上げようとしているのである。
理由なんてどうでもいいクラスの全員が安堵感に包まれる。1人を除いては。
熊本君は顔を青ざめていた。こんなビッチなパートナーは嫌なのだろう。仕事を全て押し付けられるに違いない。そこで小さな声で言った
『い、いや、一度ジャンケンに決まったんだし。ジャンケンにしようか。』
いつも熊谷さんのせいで薄くなっていた熊本君の影はビッチ氏によってさらに薄くしれてしまっていた。
そんな熊本君を救ったのは
ようきゃグループの中のイケメンの1人、井口俊太郎だった。彼は入学してから順調にも手指数を上げていて、72だったモテ指数は110にまで増加していた。彼の口から出た言葉はとても衝撃だった。
『1番真面目だし加代陸でよくね?』
最悪だ…これだからイケメンは…
クラス中の全ての男子が嫉妬という感情から同調した。そう、1番この中でモテているのは僕だ。
『そりゃあいい!加代陸に任せようぜ!』
やめろモブA!
『加代陸なら絶対成功させてくれる!』
何をだよ!
『かだいりくにきまりだぁー!』
名前すら間違えてるかんなお前
『それで、どうなんだい?加代陸君?』
『ん、別に…わかった…』
気の弱い僕は何も否定できなかった。
『よーし頼んだぞぉー加代陸!』
これにより大きな嫌味の拍手が生まれた。まじで殺したい。 東進の方を見た
『よかったな!』
と言っていた。良いわけないだろ!
すると、ここで女子の1人がが声を上げた
『加代陸君がやるなら私も一緒にやる!』
それに同調し、クラスの女子みんなが言い始めた
『私だってやるわよ!』
『熊本は早く引っ込みなさい!!』
なるほど…僕はモテすぎてしまったようだ。
熊本君は涙目である。
そうして1人のリーダーシップのある女子が言った
『それならもうじゃんけんで決めましょう!』
ちなみに東進の方を見ると
『な?だからよかったって言っただろ?』
と言っていた。流石に頭が良すぎるな
『誰か加代陸君と一緒にやるかジャンケンよ!』
あ、僕はもう確定なんすか、、
熊本君はもう泣いてしまっている。女子のみんなはお構いなしだ。
そうして何度かの激闘のあと、学級委員が決まった。僕とこのクールな女の子だ。
名前は米倉静香というらしい。顔は中の上程度だが、彼女の持つ大きな胸が彼女の人気の秘訣のようだ。
『米倉さん、よろしくね』
『よろしく』
ニコリともせずに彼女はそう返した
このクラスに僕のことが好きな人しかいないっていうのはどうやら自惚れだったようだ
よりによってこの子とか…なんならもっと僕を好きな子と一緒になりたかったな…
***
『加代陸、情報が入ったぞ』
『ないす!聞かせてくれ』
『一週間後、健二は由香っていう女の子と遊びに行くらしい』
健二が盗聴したようで、そう言った。
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