(四)-2(了)

 いつもは近所のスーパーへパートに出ているはずの時間にもかかわらず、母親がリビングから顔を出してこちらを見ていたのだ。そういえば今日は母のパートがお休みだった。すっかり忘れていた。

「あら、あんたまだ制服着替えてないの」

 なんでこういうときに、母は声をかけてくるのか。

「ママには関係ないんだから」

 私はそう言って階段を駆け上がった。

 部屋に入りドアを閉めると、ドアの鍵も閉めた。

 そしてデスクの上にスティックを置いた。中身が空になった検査キットの箱が目に付いた。すぐに足下のゴミ箱に捨てた。でも母に見られる訳にはいかないと思い、すぐに拾い上げて鞄の中に突っ込んだ。明日登校中にどこかで捨てよう。

 そうして一息つき、ふと検査キットのスティックを見た。その窓には、一本の線が浮かび上がってきていた。

「うそ、でしょ……」

 私はそれを見てそうつぶやかずにはいられなかった。


(了)

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キスから始まる世界 筑紫榛名_次回1/18文学フリマ京都 @HarunaTsukushi

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