(三)-4

 彼の手が急に強く握られた。捕まれている私の肩に痛みが走る。

「マジか? おい、ちょっと待てよ。相手は誰だよ」

 宗ちゃんが急に大声を出す。同時に私の体を揺さぶってきた。

 私は何も答えることができなかった。そもそも答えられなかった。だってまだシたことないし。それに単に遅れているだけかもしれないし。

「うそだろ。俺の他にもつきあってたヤツがいるのかよ」

 宗ちゃんは私の両肩から手を離して立ち上がり、背中から自分のベッドに倒れ込んだ。そしてすぐに起き上がりベッドから出ると、部屋をウロウロ左右に行ったり来たりした。

 私は黙ったまま首を小さく左右に振った。

「他にも男がいるのか? どうなんだよ!」

 彼は大声で怒鳴った。

 その大きな声に、私の体はびくってなった。びっくりした。普段そんなに怒ったことないのに。

 私は黙ってもう一度首を小さく振った。他に男はいないのは本当だったから。でも彼は、私の方を見ていないのか、「クソっ!」と言い残し、自分の部屋を出て行ってしまった。

 私は彼の部屋に一人残されてしまった。


(続く)

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