第9話 ケモミミ危機一髪
「うわぁ!?」
溝口の悲鳴とともにこちらも声をあげた。
せりだしていたケモミミは引っ込み、ドタドタと音がすると、しばらく無音状態が続いた。
おそるおそるはしごを登り、目をのぞかせると、端の方で固まっている人の姿があった。
「……」
「……」
お互い見つめ合うこと数十秒。
溝口は驚きと怒りが入り交じったような変な表情でこちらをにらみつけていた。
余りにも鋭い視線だったので、こっちも目線を動かそうにも動かせなかった。これが蛇ににらまれたカエルの気持ちだろうか。
「溝口……」
なにかを言わないといけないと思って、ただ他になにを言うべきかわからなくて、やっと口に出たのは名前だった。
「長内……お前……」
溝口は話し始めると途中で止まった。なにかを考えているようだ、なにを言われるのだろうか、この言い方の流れ的に、次の言葉は「触ったな」じゃないか?
――あたしの耳に触ったな?
つまり、溝口がケモミミを持つなにかであることが、ここでバレてしまう。
それは、このケモミミをひそかに愛でている時間が終わってしまうと言うこと。
本当にそれでいいのか…
「……あー、ウサギがなにかがいると思ったが、溝口だけなのか? 逃げちゃったのか?」
否! 否だ!!
溝口のケモミミがバレたら、溝口は学校を去ってしまうかもしれない。それだけは避けたい。
自分がやったことが原因であるなら、隠し通さなければ。
「ウサ……ギ……?」
「ああ、ウサギ」
「……あー、そういえばいたぜ。お前が耳を触ったから驚いて逃げちまったみてーだな」
「そうか。ふわふわで気持ちよくて、もっと触ってみたかったのに残念だ」
「動物の耳を触るのとかやめろや」
「ああ、すまん。気をつける」
「……はぁー、せっかく気持ちよくねてたのに目が覚めちまった、戻るわ、降りてくれよ」
俺ががはしごを降りると、溝口が続いてはしごを下りた。
そのまま屋上の入り口へと向かっていく。どうやらこの場は収まりそうで良かった。これで溝口がいなくなることもない。
今後、触ることについては十分注意しなくては……
「なあ、お前、ウサギが好きなのか?」
「あ、ああ。結構好きだぞ」
毎日凝視して、こうして触りたい欲が爆発してしまうぐらいには。
「……そっか」
そう言って、溝口は屋上から去っていった。
ミミがケモの同級生 zakky @kakuzaki
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