第5話 デスゲイズ 列車の暴走を止める

 もうすぐ機関室という頃――俺様は女王ジュナンが提示したキラキラの金貨の褒美が惜しくなってきた。


「あー、アズマ悪いが先に機関室に行って、問題を解決しておいてくれ」


「どうしたんですか? デスゲイズさん。急用が出来たんですか?」


「大事なことを解決しておくのが英雄ヒーローというものだ」


 俺様はキラキラの金貨に対して禁断症状が起きていたので、女王ジュナンの生命力を辿たどり転移魔法で瞬間移動をした!


「あ〜……デスゲイズさん行っちゃった。仕方ない。技術班と合流して列車を止めるかな…」


■□■□■□■□■□


「ちょっとデスゲイズ! 何で戻って来たのよ!?」


 俺様がジュナンの側に転移してきたのでマリンが猛烈に怒りをぶつけてきた。


「列車の暴走を止めに行ったのではなかったのですか?」


「そう急ぐなエア。マリンよ…もうじきアズマの技術班が来るだろうからそっちは大丈夫だ……それよりも…」


「何をブツブツ言ってるのよ! 全く聞こえないわよ!」


「ジュナンを解放するのだ! マリンよ」


「……。……。何を言い出すかと思えばアンタ! 金貨が惜しくなったんでしょ! この女は暴れたら困るから、このまま縛っておくわ!」


 俺様は列車にちょいとした振動の魔法を唱え、大きな横揺れを起こした。

 ――結果、乗客の悲鳴と共にジュナンは、マリンたちの手元から離れ、俺様の掌中に転がり込んできた。


「ささっ! 女王陛下。今すぐ助けますぞ!」


 俺様は猿ぐつわと魔法のロープをほどき、ジュナンの反応をうかがった。


「何を今更! キサマだけは許さんからな! デスゲイズ!」


 ジュナンの言葉を聞き、俺様は目頭があつくなりながら叫んだ。


「何だと!? よくも俺様をだましたな!!」


 俺様はアズマの気配を探り転移魔法で瞬間移動した。


「まったく勝手なんだからアイツは……」


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「うわっ! ビックリした! デスゲイズさん。急に戻らないでくださいよ!」


 俺様はもう何もかもがダルくなり、アズマに提案した。


「俺様が魔法で緊急停止させるから後は何とかしてくれ」


「何を言ってるんですか! 乗客が死んでしまいますよ!」


 俺様は機関室を見回して、技術班が列車のシステムを制御し、魔物はルーシャとグレイザークが多分倒したんだろう死体を足で蹴飛ばしながら、魔法を唱えるべく指を鳴らそうとしたが、アムリタが止めに入った。


「魔法を唱えたらダメだよデスゲイズ!」


「あー。かったりー! 乗客は自分たちの運でなんとかしたらいいだろうが! それもまた個人の修行なわけだ!」


「わけがわかんないよ! デスゲイズ! 少し落ち着きなよ!」


「デスゲイズさん! 準備完了です! 今からブレーキをかけます。何かにつかまってください!」


 アズマの点呼に合わせて俺様たちは周囲のつかまれそうな場所で態勢を整え、列車内に緊急ブレーキをかけるアナウンスが轟く中―――ブレーキがかけられた。


 凄まじい振動が列車を包んだが、俺様とアムリタが放つ柔和の魔法によって、振動は柔らかいバリアに守られ、次第に列車は減速して行った――その瞬間、外から何かが機関室に飛び込んで来た!


「ガーッハッハッハッ! デスゲイズ! 列車は女王もろとも粉々にしてやるぞ!」


「何かと思えばまたキサマか? ヴィグネイラー!」


 俺様たちは技術班にブレーキを任せ、ヴィグネイラーに向かい合い戦闘を開始した!


「ガーッハッハッハッ! くらえ! 地獄の針!」


 ヴィグネイラーの尻尾から無数の黒い針が放たれた! 


 ヴィグネイラーが持つ魔力無効化の力で俺様たちは魔法が使えず被弾しながら致命傷を避け全滅を回避した!


 しかし針が技術班にも突き刺さり、技術班が動けなくなってしまった。


「アズマ! ブレーキを俺様と一緒にかけるぜ! 手伝ってくれ!」


「承知しました! そちらのレバーを任せます!」


 俺様はヴィグネイラーをルーシャたちに任せ、ブレーキを再度かけ始めた!


「ガーッハッハッハッ! ルーシャごとき、本腰を入れたワシには敵ではないわ!!」


 ルーシャは矛斧グランネイルを準備し、抜き放ち二度三度ヴィグネイラーの肉体を目掛け打ち込んだ。


 ヴィグネイラーは手足の鋭い爪でルーシャの体目掛け5回に渡り引き裂こうとしたが、ルーシャはグランネイルで弾き、彼女の四度目の一閃がヴィグネイラーの尻尾を捉え、切り落とした!


「ぬうっ、こしゃくな女め! 今回は引いてやるが次こそはこうはいかんぞ!」


 ヴィグネイラーは捨て台詞を残して機関室から飛び出し、消えて行った。

 

 ヴィグネイラーが去ったあと、魔力が周囲にみなぎりアムリタが柔和の魔法を唱え、ルーシャとグレイザークは技術班に突き刺さった針を抜き、怪我を癒していった。




 列車はギラ帝国を過ぎた草原のただ中で停止し、乗客は小さな怪我があったものの死亡者はなく、奇跡的に助かったことを神に祈った。


 この列車旅行はそもそもグルメツアーであったのだが、ジュナン女王の亡命企画であったらしく、列車内の放送で乗客たちに、ジュナンにびさせた。


 俺様は更にジュナンに迫り、助けてやったのだから金貨をそれとなく要求し、手持ちの50デーレーをせしめた。


 しかしなんという事であろうか!

 俺様の仲間らしき者どもが50デーレーを分けろというのだ!


 俺様は転移魔法を唱え、その場から姿をくらました。


 50デーレー金貨はすべて俺様の物だ。



 

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大ま王デスゲイズ 小波ここな @Yuusuke76

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