第16話

 (※ゲイブ視点)


 私はまた、軍資金を手に入れることができた。

 これで、奴とまた勝負できる。


 ギャンブルはもうしないという約束?

 そんなものは、初めから守るつもりなどない。

 あの俳優気取りの若造に勝たないと、私の気は収まらない。

 そのためならば、何度でも勝負するつもりだった。


 資金面は問題ない。

 もし負けたら、また彼に借りればいいだけだ。

 病院の秘密をばらすと脅せば、彼は私に従うしかない。

 

「あれ? すごいですね、すぐに借金を返せるなんて、お金持ちなんですか?」


 俳優気取りの若造が、気安く話しかけてきた。


「もしかして、商才があるんですか? まあその分、ギャンブルの才能はないみたいですが」


「好きに言っていろ。この勝負が終わるころには、そんな生意気な口もきけなくなっているぞ」 

 

 私は彼を睨みつけた。


「それは楽しみですねぇ……」


 奴は相変わらず、にやにやと笑いながら、なめた態度をとっている。


 今日こそ、どちらが優れているか、わからせてやる!


     *


 (※ジョエル視点)


 もう、限界だ。


 このままでは、奴に破滅させられてしまう。

 私の金だって、当然、無限にあるわけではない。

 そして、奴は限度というものを知らない。

 私は、毎回大金を貸している。


 このままでは、資産が底をついてしまう。

 それだけは、避けなければならない。

 しかし、奴は私の弱みを握っている。

 難病を何度も治している絡繰りを、世間に公表するという脅しに、私は屈するしかない。


 しかし、それも我慢の限界を迎えていた。

 私がいつまでも、貴様の脅しに屈すると思うなよ……。

 奴の言うことを聞いて、資産が底をついたのでは元も子もない。

 これ以上、奴の言うことを聞くつもりはない。


 しかし、奴の言うことを聞かなかったら、奴はまた、私を脅してくるだろう。

 そうなったら、こちらにも考えがある。

 このままでは資産が底をついてしまうので、黙って言うことを聞くつもりはない。


 、奴からの頼みは断るつもりだった。


 もし次に奴が、私に金を貸してくれと頼んで来たら、その時は……。

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