【詩】マイノリティの“死”“生”感
沢樹一海
生き残りの世界
この世界は
生き残りだけで回っている
元気で幸せな奴しかいない
端からはそう見えるけど
生き残りだけが
動いているのだから
当然だ
心が死んでる奴もいる
そいつもまだ生きている
心が死んだまま
そいつは世界を俯瞰する
「幸せそうだな」
呪いの言葉を口にする
不幸ではないことが妬ましく
呪いの言葉を口にする
「せめて生き残りだと自覚しろ」
当事者の慟哭など
全て日常に掻き消される
誰が死んでも
何人死んでも
世界はそんなことどうでもいい。
生き残りたちもどうでもいい。
どこまでもヒトゴトで
なかったことと同じで
「病は特別」、
「死ぬのも特別」
全然特別じゃないと誰も気づかず
自分には縁がないのだと勘違い
のうのうと毎日を生きている
だから
そいつはナイフを握る
健全が羨ましすぎて
全てを壊して
ざまあみろと言いたくて
あいつが死んだこの世界が
何も変わらないのが悲しくて
人ひとりに
何も価値がないのが悲しくて
あの人も生きている
あの人も生きている
生き残りの世界で
不幸の裏で
幸せを生きる
生き残れなかったものが
睨み付けていることも知らずに
生き残りの世界で
生き残りだという自覚もないまま
誰も死なない世界で生きている
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