第3話 暴徒化するプレイヤー達

 さて、彼等の身体で魔法の効果を試してみましょうか?


 彼等では私の結界を抜ける攻撃は不可能、そして私の攻撃は結界を抜けて彼等に届きます。


「ミーニャさんがいるので、残酷な描写は控えてあげますよ。

 紫の霧よ感覚を奪え、【パラライズミスト】さあ、大人しくしなさい」


 とりあえず、頭に浮かんだ詠唱の文句をそのままに中級の範囲魔法である【パラライズミスト】を使ってみましたが、身体を麻痺させるこの魔法は狩りでも大変重宝しますね。


 詠唱をするとゲーム時のエフェクトよりリアルな感じで指先から紫の霧が立ち登り、ルーク君達を包む。


 ゲーム時の仕様ですが、魔法は最低限魔法名を、充分に威力を出すのなら詠唱が必要です、無詠唱というスキルがあれば、その限りではありませんが。


 スキルの場合はスキル名を言って、かつスキルの初動作をする必要がありますが、これも基本的な話で全てがそうではありません。

 この辺りは追々検証していきましょう。


「グアッ、俺達は魔法防御の護符を持ってるんだぞ?」


「ヒィ、だからやめようって言ったのに」


「NPCなんか所詮データじゃないか!」


 魔法防御で防げるのは相手とのレベル差が近い場合だけなんですがね、当然ですが彼らではトッププレイヤーの私の魔法を防御なんてできません。

 それに所詮は高校生ですね、まだ状況が理解出来ていないようです。


「おそらくですが、この世界で君達が殺した人達はプレイヤー、NPC問わず実際に死に、二度と生き返りませんよ。

 五感があり、周囲に普通に触れる時点で君達は何となくこの世界も現実だと

 君達は人殺しであり、おそらく裁判を受け、処刑されるでしょうね。

 もちろん君達も殺されれば死にます、ねぇ、


 私が伝えると、彼等は真っ青になりやっと現状を把握しはじめたようです。


 泣き出す者、吐く者、謝罪する者、人の家の前では勘弁して欲しいですね。


 彼等の平均レベルは100程度、よくこれで町方に勝てたものです。


 私は自宅に戻り、ストレージから台車を出すと、麻痺して動けない彼等を台車に積み始めた。


 下の方の子が悲鳴をあげていますが、無視ですね。


「さて、運び手をお願いしましょう。土の精よ、我が意に応え姿を表せ 【アースゴーレム召喚】

 出て来なさい、そしてその台車を引いてついて来なさい」


 私の声に反応し、土が盛り上がり、2.5メートル程の土の巨人が現れました、召喚術も問題ないようです。


「ではミーニャさん、彼等を連れて行きがてら、王都の現状を把握しましょう」


「ハイッ!一生ついていきますッ!」


 一生は重いですね、私の本当の種族や職業を知れば彼女から離れていくんでしょうか?


 さて、今のうちに知り合いにメッセージをしておきましょう、おや?NPCにも送れる様ですね。

『ジャポネの冒険者ギルドに集合です』、とこれで良し。

 現実なのにステータスやコマンド画面があるのは面白い感覚です、それが強く思うだけで操作できるのも良い。

 それに、元の世界よりも体の感覚が鋭いのはステータスに引っ張られている、という事でしょうか?

 なんにせよ検証が足りませんね・・・


「他にも暴徒どもが居れば捕まえていきましょう、まずは警備の詰所ですね」


《俺の方が適任じゃないか?》


 Aですか?


《貴方では手加減出来ないでしょう?》


たまに失敗するくらいだぜ、でもそれで人殺しは嫌だな、じゃあ任せるわ、詰所に行ったら、次に殿にも会いに行こう!》


《ハイハイ、ですが殿への面会は無理じゃないですかね?》


 住宅地はプレイヤー用の区画なんですが、やはりゲーム時の制限はなくなっており、プレイヤー達が荒らした跡が目立つ、焼けてしまっている家もありますね。


「結界魔法を張っておいて正解でしたね、ミーニャさんの家は大丈夫でしょうか?」


「アタシの家は何もないんで大丈夫っす、これからはショウさん達と一生一緒ですから!」


 何気の一言が重い、どうせ知り合いのプレイヤーも何人かは合流するでしょうし、広い屋敷が良いですね。


 既に何人かからメッセージの返信が来ていますね、後で見ましょう。


 みやこは酷い有様で、商店は軒並み荒らされており、NPCの死体が転がっていました。


 侍や戦士達が事態の収拾に走り回っている様子が伺えます。


 詰所には岡っ引きと呼ばれる警備の下っ端が3人だけいました。


「お前らはプレイヤーか?ここに何の用だ!?」


 岡っ引き3人が構えています。

 NPCではなくやはり原住民と考えた方が良さそうですね、表情、焦り、どう見ても人間そのものですから。


「ああ、狼藉者を捕まえて来ましたよ、町方殺しの下手人と言えば良いですかね?」


「あのプレイヤー共か?うおっゴーレム!荷台の奴だな!」


「間違いない、クロキ様を殺した奴だ」


「お縄にかけろ!」


 装備を剥がされ、次々と縄に掛けられていくルーク君達を見ながら、岡っ引きに声をかけてみました。


「お忙しいところすみません、貴方達は我々プレイヤーを昔からご存知でしたか?」


「ああ、カタコトで喋り、カラクリ仕掛けみたいに動いてた奴等だ。

 無害で今迄は治安維持とかも手伝ってくれていたのに。。。

 イキナリ今日の朝から見た目は変わるわ、襲ってくるわで散々だぜ、お前ら何なんだ?」


 ふむ、ここはゲームと別世界ではなく、元々はお互いに存在していたものの我々がこちらの世界に適合させられた、という感じでしょうか?しかし断定するにはまだ情報が足りませんね。


「我々プレイヤーは元は別世界の住人なのですが、どうやらこちらに飛ばされた様ですね。

 殿に状況報告をしたいのですが、白銀のショウが御目通り願いたいと伝えて頂けますか?」


「あんたが白銀なのか?前は全身にモヤが掛かってたから判らなかったが男前だな。

 ああ、ただ、今はプレイヤーへの印象が最悪だ。

 いくらこの国の安全に貢献したあんたでも、殿に会うのは難しいだろう」


 ゲーム時代にジャポネの魔物襲撃イベントで上位にランクインしていたのを覚えていてくれたようですね。


「そうでしょうね、では言伝ことづてをお願いできませんか、私はこれから冒険者ギルドに向かいます。

 あそこも大変でしょうから、暫くは私と仲間達がジャポネの治安維持に協力する事にしますよ」


 岡っ引き達は私の言葉に安心した様です、一応は私もトッププレイヤーの一角ですからね。


「助かる。殿には必ずお伝えするから、町民達を助けてやってくれ!俺達じゃレベル100以上のプレイヤーには歯がたたねぇ!」


「レベルの概念は元々この世界にあるようですね、少し教えて頂いて宜しいでしょうか?」


 確認したところ、

 一般人は大体レベル10程度、

 一般兵士で50、

 隊長レベルで150、

 冒険者として一流と呼ばれるのは200ぐらいらしく、このレベル以上は原住民の中には殆ど居ないという事らしいです。


 彼等から見てレベルの高い我々異世界人はさぞかし脅威に感じている事でしょう。


 私は笑顔で岡っ引きの皆さんに手を振り、ゴーレムに空の台車を引かせながら冒険者ギルドに向かう事にしました。

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