04

「殿下」

ルーチェを背後にかばったまま、ロゼはユークを見上げた。

「殿下は、本当にルーチェをお妃にしたいと望んでいるのですか?」

「ああ」

「子爵令嬢のルーチェが妃になるには問題や不安が多いと思いますが……殿下はルーチェを守って幸せにする覚悟はあるのですか?」

ロゼの言葉にユークは目を見開いた。

「覚悟だと……?」

「それがない人に、大切な友人は渡せません」

天青石色の瞳が真っ直ぐにユークを見つめた。


「――くくっ」

しばらくの沈黙を破ったのはオリエンスの笑い声だった。

「……どうして笑うんですか」

「いや……ごめんね、ロゼがそこまで言うとは思わなかったから」

笑いを堪えると、オリエンスは視線をユークへ向けた。

「覚悟か……確かに殿下にはまだない、というか考えていなかったかもしれませんね」

オリエンスの言葉にユークは眉をひそめたが、図星だったのか反論する事はなかった。


「ではまず覚悟を決めて下さい」

そう言ってロゼはルーチェを振り返った。

「ルーチェもよ」

「え……」

「ルーチェには幸せになってほしいの。ひかりとしての人生を終わらせてまでこの世界に転生した事を後悔してほしくないから……」

「ロゼ……ありがとう」

ルーチェはロゼをぎゅっと抱きしめた。


「殿下」

抱擁し合うロゼとルーチェを渋い顔で見つめるユークに、オリエンスは声を掛けた。

「きちんとルーチェに伝えないと。ロゼに取られたままですよ」

「――」

しばらくの沈黙の後、ふ、とユークは息を吐いた。


「ルーチェ」

ルーチェはユークを見た。

「……確かに、私は自分ばかりで他人のためにという事はこれまで考えていなかった」

ルーチェを見つめてユークは言った。

「だがこれからは君を幸せにするために出来る事を考えるし、しなければならない事はする。君に認められるよう変えていく。……だからどうか、私の妃になってほしい」


「どうして……私なのですか」

ルーチェは視線を落とした。

「私はあまり……お妃に相応しいとは思えませんが」

それは家柄だけではない。

これまでユークにやらかしてきた事は、処罰されてもおかしくないのだ。

「――確かに口は悪くなるし、暴力も振るうが」

ふっ、とユークは笑みをもらすと、ルーチェの目の前へ立った。

「だが私の隣にいるのは君がいいと思ったのだ。君がいればきっと楽しいだろうと」

手を伸ばすと、ユークはルーチェを――今度は優しく抱き寄せた。

「頼む……私を受け入れてくれ」


「……本当に、変わりますか」

「ああ、約束する」

「……今すぐ受け入れるとは言えませんが……」

「それでもいい」

ユークは腕に力を込めた。

「ならばまた改めて聞くから、私が変わるか見ていてくれるか」

「……それでしたら……分かりました」

いつまでもただ拒否し続けていてはキリがない。

相手が妥協するならば、こちらも相手の提案を受け入れないと。

ルーチェは小さく頷いた。


「そうか。良かった」

ユークは破顔するとルーチェの顔を覗き込み――その唇に自分の唇を重ねた。


「……っ!」

ルーチェは思わず飛びのこうとしたが、ユークの腕がそれを阻んだ。

「変わってないじゃないですか……!」

「それとこれはまた別だ」

「はあ?! 何が……」

抗議しようとしたルーチェの唇をユークの指がなぞった。

「こんなに柔らかくて心地の良いもの、我慢できるはずがない」

「……っ……」

見る間に真っ赤になったルーチェにもう一度ユークは口付けた。


(……そういえばゲームの殿下はキス魔だったわ……)

親友のキスシーンに同じように顔を赤くしながらロゼは思った。

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