父よ、さようなら

母ではなく父の手を取った時

それが分岐点であるし

幸せにでる、不幸にできる

言い訳ができる、虚無となりて

好きな感情に置き換えられる

便利なものであるし

両親の一生ものの歓喜と悲劇だ

私が悪い、とは思わない

振り回された、とは思うけど

片親がおかしいと言われたこと多数

同情されること多数

そんなに不幸せに見えるのかと

憤りさえ沸いた、あの日々

越えて今があるならば

自分のことで不幸はあったけど

父に対して文句はない

懸命に働いて、理解しようとして

たまの外食に喜んで

休日に行くキャンプで写真を撮る

父親だった

今なら再婚すればいいと思ったけれど

本人がしないなら、そうなのだろうと

思い直して笑う

父よ、さようなら

棺の蓋が閉められて、ゆっくりと火葬場へ

燃やされて骨になり、小さくなり

少し重い程度の瓶に詰められた

父よ、さようなら

墓場に預けられた遺骨よ

何度も別れを言いに来るから

大切に、大切に建っていてくれないか

父さん、また来るよ

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る