③一難終わって

気がつくと、家にいて、身体がボロボロだった。

来ていたライムメッセによると、僕はどうやら新田さんに放り投げられた神崎さんを助けようと、自らも飛び出し、庇う形で守ったそうな。

幸運なことに、怪我は軽い打撲程度で救急車で運ばれたものの、すぐ解放されたらしい。まぁ、こと打たれ強さに関しては、今までの人生の経験からかなり自信はあるからね……全く中身は覚えてないんだけど。


そうやって僕は安静第一ということで、あの後先生に呼ばれて事情聴取を受けることになった神崎さん達とは違い、一足先に家に帰してもらっていた。

ただ、そこでやりきった感が出てたのだろう。リビングについた僕はうっかり寝てしまったらしい。


そうして夜。僕は神崎さんとライムのやり取りをしていた。

本当は神崎さんから目が覚めた直後くらいに、電話がかかってきてたんだけど、今日は疲れたからとライムにしてもらっていた。

嘘は言ってないけど、一番の理由はまたオーバーヒート時の発言とのすれ違いで、神崎さんに嫌われるのが怖かったからで……


いや、この人には一度僕のこの不思議体質についてしっかり話そう。

そうしたいと僕が心からそう思ったから。

いつもみたく、ただただ離れるのは、彼女に対してだけは何か無性に違うとそう僕の心が叫んでいるような気がして……。


それを受けて神崎さんが「無理」と拒んだその時は、うん潔く、離れることにしよう……。


『でさ、ノゾミのやつ、たぶん転校になるんだって。まー私立のパイプを辿っての転校らしいけど、ようは学校としても警察沙汰の大騒ぎにしたくないからこれで手を打ちましょうってやつだよね。いや、ノゾミがどうなるとかあたしはもうどうでもいいんだけどさ、なーんか大人の事情混じってると途端にモヤモヤする』

『あはは。まぁそこはしかたないことじゃないですか。とにかくこれで一段落でほんとよかったです』

『まぁね。……けどさ、山代、あたし思うんだけどさ、ノゾミからしたらたぶんこれが一番の願いだったんじゃないかなって』

『へ? それって負けて島流し……別の高校に転校するのが目的だったとでも』

『うん。例えば……こんなことあんま考えたくないけどさ、山代とあたしが出会ってなくてあたしがノゾミの罠にまんまとはまっていたとしても、多少なり事件が大事になったところで、早々に黒幕として出頭して終わらせていた気がするんだよね。たぶんノゾミの本来の目的は、今の生活――別れたって例の親公認の仲だった幼馴染みの元カレの傍から離れることだった。ってそんな気がするから』

『たしかに、それは、あるかもですね』


 おかしくなったの要因が新田さんが幼馴染みの彼氏という方と別れたというところから始まってるところからしても、神崎さんの憶測はあながち間違ってない気がした。それに、以前根屋さんが新田さんに彼氏の話を振ったとき、一つも動揺せずさらっといる体を振る舞った様子からしても、新田さん自身は別れを認めてなかった線が濃厚だ。


『ってなわけで、結局最終的にはノゾミの大勝利で終わったんじゃないかって思うと、ちょーっとむしゃくしゃするけど、ま、それあげだしたらキリなさそうだし、この話題はこの辺で終わりにしときますか』

『はい、そうですね』



『山代、もう何度目になるかわかんないけど、本当に今日は――いや、裏アカを相談してからずっと本当にさんきゅ。あたし、山代と出会えてよかったって本当にそう思ってる』

『いえいえ、そんな言葉もったない』


 だってそれは僕の方も十二分に感じていることだから。

 こっちこそ、神崎さんと出会っていままで、色々経験させてもらって楽しかったので、このくらいの手助け、きっとお釣りがきますって。


『ほんと、あんたが犯人はノゾミだって言った時、頑なに信じようとしなくてマジゴメン。今思い返せば相談しといて意見を否定とかフツーにありえないよね……』

『そこまで思い詰めないでください。神崎さんには、神崎さんなりにあの場で引けない道理があったんでしょう』

『うっ、それはまぁ、あるにはあったんだけど……』


 そういえば、神崎さんが木村さんを犯人だと思い込んだ理由って結局なんだったんだろう。知りたいけどこの感じ……聞かない方がいいよね。


『まぁそれも含めて、山代には返さなきゃいけない借りが富士山ばりにあるつーか。ってなわけで、お約束のご褒美ターイム! まずは裏アカ犯を突き止めてくれた分のお礼として、この神崎麗子が山代育真のためだけに何でも一つ言うこと聞くから、ばばーんと言ってみて!!」


 ぐっと親指を立てた猫のスタンプ。

 もーまた、この人は、無意識に自分を安売りするような発言を……


『いえいえ。そんなの、僕は全然大丈夫ですよ。お気になさらず』

『いや、それだとあたしの気がすまないから。ささ、何でも好きなこと言ってよ』


 この様子じゃもう、神崎さんの性格からして絶対に引いてくれそうにないよね。

 なんかいい案が……あ、閃いた。


『それじゃあ、えっちな自撮り送ってもらえませんか』


 よし。これならドン引きされてなぁなぁに終わらせられるだろう。

 神崎さんに自分の緩い発言を改めてもらういい機会にもなると思うし。

 あのプライドの高い神崎さんが、男に命令されてえっちな格好になるとか絶対に許さないだろうから。

 おまけに意外と神崎さんって、こういう本来ギャルがしてきそうな悪ノリに弱い感じがするんですよね。

 そう苦笑していたら――スマホのダイアログに、神崎さんからライムに画像が送信されましたと届いて――


『こ、こんなんでいい?』


 一糸まとわぬ姿になった神崎さんが、手で胸を隠し、恥じらうよう頬を染めた写真が送られてきたのだった。


 う、嘘でしょぉおおおおおおお。

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