第21話 おいでませ!アルディオスの森へ!!天国と地獄編2
負傷者救助の役目を担うマルゴレッタ一行は、古龍姿のナイトカインに乗り、上空で飛行しながら広大なアルディオスの森を見渡していた。
ジャレッドはマルゴレッタが感じた森の違和感について語る。
「……森のダンジョン化でちか?」
「そうだ。オリヴィエが、元魔王だって事は知ってるな?」
「あば〜。確か凄い不良さんだったんでちよね?悪さばかりしていたって、ママ言ってたでちよ〜。うふふ。ママにも多感なお年頃があったんでちね」
マルゴレッタの考えるレベルの悪さではないがな、と心の中で思うジャレッド。
「ま、まぁ、そうだな……。で、その魔王であるオリヴィエには、支配した地をダンジョンにしちまうっていう特別な力がある。アイツがこの森をダンジョン化する事によって異界から『
「『魔ノ者』……。何だか、とっても怖い響きなんでちよ……」
「おう!奴等はおっかねぇぞ〜。なにせこの世界には存在しねぇ異形の化け物達だからな。一つ目巨人、腐乱した魔法使い、無形の生命体、牛頭の人擬き、他にもわんさかいるぜ。気をつけろよ?奴等はお前みたいな幼女が大好物だからな。取っ捕まったら速攻で喰われちまうぞ」
「あばばばばばばばばばっ!!?」
ぷるぷる震える幼女の姿に、意地悪くニヤリとほくそ笑むジャレッド。
「ガハハハッ! 冗談だ。奴等は人を喰ったりはしねぇ。が、本当に気を付けなきゃならんのは、アレの行動理念には敵に対しての殺意しかねぇって事だ。ただ、眼に映る者を全て殺し、又は殺される。それ以外は何もねぇ空っぽの存在が魔ノ者だ」
「あばぁ……。凄く切なくて可哀想な命でちね」
先ほどまで魔ノ者に対して震えていたマルゴレッタの突飛な言葉に、目が点となるジャレッド。
性分とはいえ危うい思考を持つ幼女に、ジャレッドはしゃがみこんで目線を合わせた。
「いいか?マルゴレッタ。お前の底無しの優しさをアレに向けた所で、奴等は何も感じやしない。慈悲を与えたとしても、喜々としてお前を殺しにかかるぞ。俺の言っている意味が分かるな?」
「う〜〜。分かったでち!」
ほんの僅か、考える素振りを見せるマルゴレッタは、分かりましたよと言わんばかりにビシッと片腕を伸ばした。
そんな姿に、ジャレッドは深く項垂れる。
この幼女、分かってねぇな……と。
「マルゴレッタ様、ジャレッド殿。負傷していると思われる兵士を数人発見しましたぞ!どうやら、その魔ノ者とやらに追われている様子」
「ど、どこでちか!?」
ナイトカインの体から身を乗り出し、森を見下ろすマルゴレッタは、必死になって逃走する数人の人影を捉える。
「ナイトちゃん!この間、わたちを助けてくれたあの風魔法を付与して欲しいでち!!」
「は、はぁ。それは構いませんが。どうするつもりですかな?」
「こうするでちよ! とうっ! でち!」
そう言うや否や、マルゴレッタはナイトカインの背から勢い良く飛び出し、落下していく。
再びやらかしたマルゴレッタの投身に、漢達が絶叫を上げる。
「うおおおおおぉぉぉぉぉっ!アイツ、また落ちたぞ!?ナイトカイン!何してやがる!?は、早く拾いにいけっ!」
「マ、マルゴレッタ様ぁぁぁぁぁ!?無茶が過ぎますぞ!クッ、優しき風よ、彼の者を包めっ!」
盛大な風切り音を鳴らしながら、目標目掛けて垂直落下するマルゴレッタ。
しかし、ナイトカインの放った風魔法によって、柔らかな風が全身に纏わり付き落下速度が次第に落ちていく。
突如、目の前から軽やかに舞い降りた幼い幼女の姿に、魔ノ者から逃走を続けていた男達が愕然とした面持ちで立ち止まった。
幼女は天使な微笑みを男達に向ける。
「おぢさん達。わたちが来たからには、もう安心でちよ!お助けするでち!!」
腕を組み自信満々な表情で登場した幼女の脚元は、産まれたての子鹿のようにぷるぷると震えていた。
マルゴレッタは思う。
カッコつけた登場なんかするんじゃ無かったなと――
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