◆◆ 1-4 西の陛下 ◆◆

 賑やかな楽曲の調べが鳴り響いてくる。

 西の離宮に足を踏み入れて、すぐのことだった。


【 ホノカナ 】

「あの、ショウさん、これって――」


【 タイシン 】

「そう、お察しの通りだ。〈西の陛下〉のおなぐさみだよ」


【 ホノカナ 】

「へええ……うわさどおり、音楽がお好きなんですね!」


 しかしそれは、宮中に相応しい優美な音楽……ではなく、


【 ホノカナ 】

「なんだか騒々しいというか、ちょっと荒れているみたいな……?」


【 タイシン 】

「言いにくいことをはっきり言うものだ」


 率直きわまりない彼女の感想に、タイシンは苦笑する。


【 タイシン 】

「だがまあ、その思いは胸の中にしまっておいたほうがよかろうよ」


【 ホノカナ 】

「あっ、そ、そうですねっ……ごくんっ」


 あわてて、失言を呑み込むような仕草をしている。

 実際には、一度口にした言葉は戻らないのだが。


【 ホノカナ 】

「そ、それで……あのう、本当なんですか? 陛下が、その、すぐに女官を手にかけてしまうっていうのは……」


 さすがに小声で、おそるおそる囁くように尋ねる。


【 タイシン 】

「さぁ、私は現場を見たことがないからなんとも言えないが……ちょくちょく女官の補充が行われているのは事実だ」


【 ホノカナ 】

「~~~~っ! そ、それって……あわわ……」


 今さらながら、ホノカナは青ざめている。


【 タイシン 】

「もう帰りたくなったか? それなら、それでもいいがね」


【 ホノカナ 】

「……っ、い、いえっ……そうはいきません!」


 腹を決めたように顔を上げる。


【 ホノカナ 】

(だって、わたしには……この道しかないんだから……!)

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