第14話 レバレッジ

「ところでよ、株ってレバはどれくらいかけられるんだ?」

「レバレッジは、最大で約3倍ですね」

「3倍かよ。ショボいな……」

「たしかに仮想通貨やFXの業者に比べたら物足りないかもしれません。でも銘柄は多いですし、熊尾井さんにはある程度の資金があるじゃないですか」

 それもそうか。30万しかなかった時はムチャしなきゃどうしようもなかったが、今は2000万あるからな。


「そうだな。じゃあさっそく証券会社の口座を作らねえとな。おすすめの証券会社とかあるか?」

「そうですね。アサガオ証券あたりがいいと思いますよ」

「アサガオ証券?」

 初めて聞く名前だ。コブラ証券とかダイジャ証券ならCMで見たことあるんだが。


「はい。一般的な知名度は低い証券会社です。でも手数料は安くて規制もゆるいですし、スマホやパソコン向けのツールも高機能なんです。プロ向けの証券会社といったところでしょうか」

 プロ向けか、いい響きだな。たしかにオレはこれからガンガン稼ぐ男だ。有名な証券会社に口座作って、長期で資産運用なんて眠たいこと言ってらんねえ。


「オシ! じゃあさっそくアサガオ証券の口座を作らねえとな。ねえちゃん、今日はいろいろありがとよ。お代はいくらだ?」

 そういやここは歌舞斗町。この女も何者かわからねえ。ぼったくりの可能性もあるよな……。まあ大丈夫だろ。ここは路上だし、チンピラが絡んできたら適当にぶん殴って逃げりゃいい。


「1200円になります。もしかして、ぼったくられると思いました?」

 1200円? やっす! っていうか心を読まれてるじゃねえか!

「まあ、ここは歌舞斗町だからな。っていうか本当に1200円でいいのか?」

 占い料金の相場はわからねえが、ちょっと安すぎるだろ。これじゃあ逆ぼったくりになっちまう。

「はい。1200円でけっこうです」


「いろいろありがとよ。これでまた稼げそうだぜ」

「こちらこそありがとうございました。それと、よろしかったらこれを……」

 差しだされたのは真っ黒な紙っぺらだった。名前とメールアドレスが書いてある。名刺か……。


「ええっと、くろ月曜げつよう?」

黒月曜くろつきようと申します」

「黒月曜か。オッケーわかった。今日はありがとよ。またなんかあったら占ってもらいに来るわ。そんじゃな曜ちゃん!」


 ホテルについたら、すぐにアサガオ証券の口座開設の手続きだ。一日でも早く空売りしてえからな。

 それにしても黒月曜か……。本名じゃねえだろうが、なんだか不気味な名前だな。まあ、カワイイから問題なしだ!

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