第15話

 王城から数分で駆けつけた教会の入口に来ると、トゥーイは扉の番をしていた男二人に手刀を放ち昏倒させた。

 ニッポリアが責任を持つと言った言葉に甘えて、さっさと扉の中に入る。

 留衣がどこにいるかわからないので、極力他の人間に見つからないように廊下を進んでいると、右側にあった扉が開いた。

 内心面倒だと思って手刀を放とうとして、ぴたりと出てきた人物の首元ギリギリで止めた。

「トゥーイ様……」

 固まって立ち尽くしたのはベロニカだった。

「ちょうどいい、ルイはどこです」

「どうしてここに」

「質問しているのは私ですよ」

「あの子を助けに来たの?」

 ありえないと書いてある顔で、呆然と問いかけてくるベロニカにトゥーイはあからさまに眉をひそめた。

「なんで、どうして、あの老婆といい女といい、私が呼び出したのに邪魔ばかりする!」

「呼び出した?なるほど、あなたが元凶ですか」

 トゥーイがすいと手を引いた。

 けれどベロニカは髪を振り乱して声を荒げるばかりだ。

「あなたにはあたくしがいるのに!あたくしだけが理解できるのに」

「勝手に決めつけないでいただけますか、反吐が出ます。ルイを使って何をするつもりです。答えなさい」

 刃物のような鋭利な声に、ベロニカは唇を噛みしめた。

 まるで絶対に喋らないと言うように。

 けれどそんなベロニカに付き合う義理はなく、トゥーイはおもむろにベロニカの細首を右手で掴んだ。

「あ、う」

 呻くベロニカに触れたところから、手袋越しに魔力がトゥーイへと流れていく。

 自分の魔力が奪われていることにベロニカは、真っ青になった。

 胸で揺れている赤い石をぎゅっと両手で握りしめる。

「何で、魔力を奪えないはずじゃ」

「残念ですね、無意識に奪うことは出来なくなりますが、やろうと思えばいくらでも奪えますよ」

 ごくりとベロニカの喉が動く。

 どんどん力を吸われる感覚に、ベロニカははくはくと喘いだ。

 その様子を見て、トゥーイが彼女の目を覗き込む。

「死にたくはないでしょう?」

 鳶色の瞳には躊躇はなかった。

 観念したようにこくこくとベロニカは頷くと。

「大魔法を使える魔道具が発見されたのを、あたくしが十年かけて魔力を注いだのよ。それを使って二人をそれぞれ呼び出したわ」

「なるほど、確かにフミとルイのあいだの期間は十年以上空いていますね。それで?何が目的です」

「その魔動具に大量の魔力を注いで騎士団を一掃するためよ」

 かなりの量の魔力を奪われたことで、最後の方は悲鳴じみていた。

「それを効率よく行うために魔力の高い者を呼び出したと。くだらない」

 ベロニカの首を掴んでいたトゥーイが手を離すと、その場に彼女はくず折れた。

 自分の首を押さえて、真っ青な顔で震えている。

「最後の質問です。ルイはどこに?」

「……最上階の部屋よ。魔道具に魔力を注がせるとお父様が」

 それだけ聞くと、トゥーイはベロニカに興味を失ってその場を後にした。

 彼女だけが、その場に残され見えなくなるまでトゥーイの姿を見ていた。

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