第895話 戦場の帰路(2)

 時は同じくして場所は変わり、神楽坂邸。

 携帯電話が鳴り、電話に出る桂木優斗。


「俺だ」

「神谷です」

「おお、神谷か」

「何ですか。そのリアクションは」

「――いや、ずいぶんと神谷の声を聴いていなかったと思ってな。それで、親孝行は出来たのか?」

「はい。桂木警視監のおかげで。それよりも、私が居ない間に、えらいことになっているのですが……」

「まぁ、色々とな」

「色々どころか、海上保安庁、大阪府警、SAT、大阪市立大学、大阪弁護士会、大阪威信会の大阪知事である代表 吉田茂氏から督促状が届いていますが……」

「そ、そうか……」


 神楽坂邸で、都との会合を待っているというのに、随分と重い話が……。


「つまり補填ということか?」


 冒険者ギルドでは、自分の身を守るのは自分自身だったが……。


「海上保安庁、大阪市立大学の面々、SATの遺体は全て回収済みです。それに対する補償が必要になってきます。今はメディアに情報が洩れることは防げていますが、何とかしないと大問題になります」

「あー、なるほど」


 そうなると、伊邪那美の出番か。


「分かった。今回の死者に関しては出来る限り、こちらで対応する。今回の怪奇現象で死んだ全員の亡骸は確保できているのか?」

「全員ではありません。大阪府警から参加していた岩本幸一警視正の遺体は確保できませんでした」

「ふむ……」


 流石に、俺も体をつくるための遺伝子情報がないと再現はできないぞ?

 まぁ、まったく別の肉体でもいいのなら作って魂を無理矢理ぶちこんで何とかする荒業もできなくないが……。

 その辺は、伊邪那美と応相談ってところだな。


「分かった。それで、SATと海上保安庁と大阪市立大学の方は問題ないな」

「問題ありまくりですが、大きな点では保証金で何とか出来るかと」

「なるほど。――で、何で大阪弁護士会と大阪威信会だったか? その知事とやらがクレームを上げてきてるんだ? あいつらに俺は迷惑かけた覚えはないんだが? ――いや、弁護士会がクレームを上げてきたのなら、何か接点でもあるのか?」

「どうも、一般人が作戦行動中に島に居たとか」

「ほう」

「一般人か……」


 俺が島の結界を破壊した時に波動結界で確認した限りでは、それらしき生命反応は確認できなかったが……。

 まぁ、ヤハウェが召喚した眷属に殺されたと仮定すれば説明はつくか。


「――で、巻き込まれた連中は、どんなやつらなんだ?」

「それが……、大阪弁護士会の話から調べるとヤクザのフロント企業に名前がありまして――」

「はー」


 つまり俺が依頼をかけた後、島へ無断で立ち入った結果、巻き込まれて全滅したと。


「それって怪しさ満点だな」

「はい。ただ、大阪弁護士会からのクレームに関しては、金銭的要求を呑まない場合には、マスコミに情報をリークすると」

「情報をリークするも何も神堕ち島周辺の海域は立ち入り禁止だっただろう? なら、大した情報は持ってないんじゃないのか?」

「私も、そう思っています。ただ――」

「こちらが知らないだけで、何かしらの情報を握っている可能性があるという事か。そんで、その大阪弁護士会は、ヤクザの顧問弁護士が所属していると」

「はい。如何いたしましょうか?」

「詳しくは分からないからな。一度、島へ行って俺が直接調査をする。それまでは島を立ち入り禁止にしておいてくれ」

「それが大阪威信会から、島の権利は大阪府にあるからと入島すると一方的な言伝がありまして――」

「許可は出してないよな?」

「もちろんです。ただ、大阪威信会の裏にはチャイーズマフィアや大陸系マフィアが居ますので、そこが強行入島してくる可能性があります」

「まったく、厄介だな」

「はい。そこで、桂木警視監には――」

「最後まで言わなくていい。すぐに島へ向かうから」

「よろしくお願いします」


 電話を切る。


「神谷殿からですか?」


 隣で会話を聞いていた白亜が俺に話しかけてくる。


「ああ。どうやら、大阪知事や大阪弁護士会、マフィアが島の何かを巡って動いているらしい」

「利権ですか」

「さあな」


 あの島に何があるのか俺には分からないが、そこらへんは竜道寺や純也に聞けば分かるだろう。

 丁度、純也の四肢修復もするから都合がいい。

 あとで瀬戸内海へ行くとしよう。


「桂木様」


 白亜と話をしていると、お手伝いさんが戻ってくると恐る恐ると言った様子で俺の名前を呼んでくる。


「どうでしたか?」

「それが都お嬢様は目を覚ましてはいたのですが……、いまはお会いしたくないと」

「そ、そうですか……」


 


 

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