第12話

 液体が底を尽いたようだ。


 液体の下から、変色した地面が現れた。


 建物からこぼれている液体は、マンホールへと流れていった。


 少しホッとした。


 …が


「ウ…ウ…アアア…!」


 また、あのうめき声だ。


 液体が無くなったところで、まだ終わりにはならない。


 ここには、化け物が何体もいるし、私も現実の世界に帰らないといけない。


「ア…ア…」


 普段だったらもう無いはずの体力を振り絞る。


 もう少し…もう少しだけ走れば、撒けるはず…!


 そう思って、必死に走る。


 気が付けば、十体ぐらいの化け物がフラフラと追ってくる。


 よし、この調子なら撒けそうだ…と思っていたら…


「…アア…!」


「えっ!?」


 急いで、足を止めた。


 脇道から化け物が飛び出してきた。


 目の前で刃物の腕を振り上げる。


 私は、無理矢理に体を横に向け、手前の脇道に入った。


 触れたらぼろぼろと崩れそうな建物が並んでいる。


 さっきの液体の影響もあってか、建物の数が最初より少ない。


 …そうだ!


 私は、後ろを振り向いた。


 ぞろぞろと追ってくる化け物たち。


 私は立ち止まって、近くにあった建物を思いっきり蹴り飛ばした。


 ぼろぼろの建物は、音を立てて、化け物たちの目の前に崩れ落ちた。


 化け物がうめき声をあげて、もがいている間に、私は逃げた。


 …が


「な、なんで!?」


 逃げた先に化け物が待ち構えていた。


 …どうしよう、もう脇道とか小道は無い。


 化け物が寄ってくる。


 化け物が腕を振り上げた。


 一か八か…私は、化け物の腕の下をくぐった。


 かなり勇気が必要だった。


 恐怖で足元がフラつき、化け物にぶつかった。


 化け物は、よろよろと倒れた。


「…うっ…」


 ぶつかったところがヒリヒリする。


 転びそうになりながら、遠くに向かって走った。


 出来るだけ、遠くに。


 化け物の来ないようなところに。

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