25
(相手が心を感じ取れるっていうなら、マジで相手を好きになるしかない! 感情の波に自分から入り込むんだ! 一瞬でも気を抜いた瞬間にドキドキして身体が消えちまうから恐ろしくリスキーだが、コイツを倒すには、これしかない!)
と、心を感じ取れる相手を倒すために、レオは本気でイザベルを好きになる決意をした。
「グレースお姉ちゃんも、ジェニファーお姉ちゃんも、ローズお姉ちゃんも、みんな素敵だけど、でもボク、イザベルお姉ちゃんが一番好き」
そう言うと、抱き付いたまま潤んだ瞳の絶世の美少年が上目遣いでイザベルを見つめて来る。
それを見てイザベルは再度レオの心を感じ取った。
(こ、これは絶対に嘘です。だってあなたはロリコンなのですから、ローズよりも私の方が好きなどということは……!? ……まさか!? ……これも本当だというの!? この心は……本気で私のことを一番好きだと感じている!!)
と、またもやイザベルは心の中で驚いた。
「森の中とか、ボクのことをずっと見守っていてくれてありがとう! 嬉しかった!」
というレオの発言に、
(さ、さすがにこれは嘘でしょう。そんなことを嬉しく感じる者など……!?)
と思うイザベルだったが、レオの心を感じ取ると、
(なんで!? この子、本当に嬉しく思ってる! どうしてそんなことを嬉しく感じられるの!?)
と、再度驚愕した。
実はイザベルは、遠くに離れた人の動向も全て分かってしまうことから、お姉さん国の市民たちどころか兵士仲間たちからも敬遠されていた。
「さすがにあたしたちがどこで何してるのかが全部分かっちゃうのは、ちょっとねぇ」
「だよね。いくら四天王最強だからって、勘弁して欲しいわよね」
いつも、陰口を叩かれていた。
(仲間たちでさえ、みんな嫌がっていたのに……!)
思わず、イザベルはレオに質問してしまう。
「さっき好きって言ってくれたけど、わ、私のどこが好きなの?」
「全部だよ。イザベルお姉ちゃんの全部が好き」
(私の全て……!? そんなバカなことあるもんですか! こんな、人の心を読んでしまう私のことを全て受け入れてくれる人なんているはずがない……!)
イザベルは、近くにいる者の心を感じ取ることも出来てしまうことから、
「イザベル様って、相手の心が分かっちゃうんでしょ?」
「さすがに気持ち悪いわよね」
と、いつも周りの誰かが悪口を言っていた。それにも関わらず、今目の前にいる敵国の少年は――
(そ、そんな!? この子、本当に私の全てが好きだって思ってる! みんな、気味悪がっていたのに! 何で!? どうして!?)
「イザベルお姉ちゃん、大好き」
頬を上気させ潤んだ瞳で上目遣いで見つめてくる絶世の美少年。
魔法の力で“嘘偽り無い心”に触れることが出来るが故に、レオの心に触れて、本気で自分の全てが好きだと思ってくれていると分かったイザベルは、生まれて初めて自分の全てを受け入れて貰えて、肯定された気がした。
気付いた時には、イザベルは涙を流していた。
そして――
「わ、私も……好きです……」
上気した顔で切なげにそう言うと、イザベルは「キュン」としてしまい、身体が輝き、消え始めた。
しかし、その直後、レオの身体も輝き、消え始めた。
レオは本当にイザベルの全てを好きだと思ってしまったため、大好きな相手に抱き付いて告白することでドキドキしてしまったのだ。
(やっちまったな。相打ちか。でも、これ以外に倒す方法は無かった。それくらい手強い相手だった)
そう思いつつ、自分の身体も消えていっているというのに、イザベルを救おうと背中の傷を彼女に見せるレオ。
森の中でレオが倒した女たちを助ける際に背中の傷を見せていたことは自分の魔法で知っていたイザベルだったが、遠くを見る際にはそれほど映像は鮮明には見えないため、初めてレオの背中の傷を鮮明に見て、これほど酷い傷だとは思っておらず、驚いて身体の消滅が途中で止まった。
しかし、当たり前だが、レオの身体の消滅は止まらない。足から徐々に消えていくレオ。
「な……何で!? あなたは消えてしまうのですよ!? 相打ちで良いじゃないですか! なのに、何故私を助けたのですか!?」
「………………」
レオはその質問には答えず、しばし沈黙した後に、
「……お姉ちゃんはとっても素敵な人だよ。だから消えて欲しくないと思ってさ。それだけ」
そう言って、レオは笑顔を見せた。
レオがイザベルに対して、このまま消えるなんて「勿体無い」と思ったのは本当だった。隠密部隊が言っていたイザベルが抱えていた“ストレス”、そしてレオが「あなたの全てが好きだ」と伝えた後、彼女がレオの心に触れて見せた涙。
(そこから察するに、イザベルはお姉さん国の者たちから、あまり良い扱いを受けていなかったのではないか? 例えば、陰口を叩かれていたとか。そして今まで一度も、「あなたの全てが好きだ」と言ってもらえたことがないのではないだろうか? 敵ながら、こんなに綺麗な女で、凄い魔法を使えるし、冷静沈着で分析能力も高いやつなんだから。俺はスゲーって思うけどな)
そんなレオの心を感じ取ったのか、また顔を紅潮させているイザベルに対して――
「お姉ちゃん! ストップ! せっかく消滅が途中で止まったんだからさ、ちゃんと感情コントロールしてよね!」
そう言って、イザベルに釘を刺すレオ。そして彼は――
(俺は消えちまうのか。参った……でも、しょうがねぇな……後は……そうだな、ちっと頼りないが、うちの国のやつらに任せよう。あいつらが奇跡を起こしてくれることを祈って消えるとするか)
そう思いつつ、ゴロンと地面に横になって、空を見上げた。大通りのど真ん中なので、建物があまり邪魔にならずに空を見ることが出来た。
(綺麗な空だ。こんな空を見ながら消えるのも悪くない……か)
覚悟を決めたレオ。
するとその時――
「!」
何かが爆発する凄まじい音が連続して町中に響いた。それと同時に、空には色鮮やかな大輪がいくつも咲いた。
「こ、これは……うちの国の花火!? どうしてこんな所で!?」
そう、それはショタ国の職人にしか作れない花火だった。
全部で十個の大きな花火が連続して打ちあがり、色取り取りの大輪を空に咲かせていった。
「…………はっ!」
驚きの余り、ボーっと花火に見とれていたレオだが、気付くと身体の消滅は止まっていた。
その直後――
どこからともなく現れたフードを被った女が、途中まで消滅したことによって上半身のみになったレオの身体を聖剣ごと拾って両手に抱えて、全速力でその場から離脱して細い道へと逃げていった。
それを見ていたイザベルは、
「あの子は……!」
と呟いた。
いきなりのことに面食らっていたレオだったが、曲がり角を曲がったところでその女に話し掛けた。
「ちょ、ちょっと待って! 誰!?」
しかしその問いに対して答えず、女は――
「ああ~やっちゃった~! もう、絶対終わった~! イザベル様は私の場所をずっと把握してただろうし~! 心読めちゃうし~! 私は裏切り者だ~! 国賊だ~! 売国奴だ~! 犯罪者だ~! 捕まって、尋問されるんだ~! きっとご飯も食べさせて貰えなくて死んじゃうんだ~! うえ~ん! うえ~ん!」
と言いつつ泣きながら走り続けた。
「その声は……!」
聞き覚えのある声にレオが驚くと、風で女のフードが捲れ上がり、中から銀髪ベリーショートの髪が現れる。
そう。女は、以前レオが森の中で魔狼から助けてやった、近衛隊長のリンジーだった。
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