明けないはずの夜を越す物語。理不尽に抗い、運命を乗り越えて明日を掴め
- ★★★ Excellent!!!
だいたいサブタイトルとあらすじに描かれている通りのお話なので、個人的なアピールポイント的なものを書いていこうと思います。
・転生者の主人公が原作を愛好しており、非常に尊重している
本作の架空の原作、『精霊大戦ダンジョンマギア』シリーズ。これがまたすごい。本編の描写を見てたびたび絶句するほどのすごい難易度とボリュームを誇ります。正直なところ、ここまでの鬼畜難易度とストーリーの大作RPGを愛好してやりこんでいるところ主人公をオタクとして尊敬いたします。そんな彼が自分達の幸せを掴むために原作の流れを変えて良いのか?とひどく葛藤するところはかなり貴重な描写ではないかと思います。そんな彼が原作主人公たちをないがしろにするような日は決して訪れることはないでしょう。というか作者様が絶対にそれを許さないようです。
・憑依元の人格が消滅しておらず、ある時点で大きな活躍を見せる
あらすじの通り、チュートリアルで原作主人公に突っかかってきてしょうもない死に方をした原作清水凶一郎。転生ものというのは元人格は転生者に上書きされて消滅するというのが定番ですが……なんとこの元人格の少年、消滅しておりません。本作品では転生者と元の凶一郎の人格がとある目的のもと利害が一致して共存しています。救われるボスキャラというのは彼自身も含まれているということです。ここら辺は書籍版や漫画版でより掘り下げられています。
普段は大人しくしている彼ですが、彼もまた独自の思惑を抱えています。そしてある時他人事として捉えられないような人物を相手にした時、転生者人格を差し置いて表に出てきて暴走を始めます。その結果……とにかくすごいので読んで!!読んで!!みんな降東編読んで!!
・恋愛描写が丁寧かつ濃密
本作品のメインヒロイン、蒼乃遥。この作品を語る上では彼女の魅力もまた欠かすことができないでしょう。凶一郎とくっつくまでの過程も丁寧ですが、それからの関係も丁寧にじっくり描かれています。
物語が進むほどに凶一郎の人間力や(どこかの女神様の思惑)により恋のライバルが増えていくのですが、(耐えきれずに一度暴走しかけたことはあれど)彼女は己の嫉妬心に折り合いをつける努力を怠らず、恋敵のことも理解しようと歩み寄っていく姿勢を見せるところに感動いたしました。
また、凶一郎は本編中、あらゆる人々への説得や交渉事に真摯に向き合い胃や頭と心を痛めることになります。彼の弱音や話を聞いて心を癒す役割を担っているのはまさしく彼女でしょう。まさにメインヒロイン。これはもう清水遥を名乗っても良いのではないでしょうか?
・男性キャラの人間性や関係性も濃密に掘り下げられている
この作品は女性キャラももちろん魅力的ですが、男性キャラもまた非常に魅力的です。腹黒タヌキと称される大手クランリーダーの美丈夫ジェームズ・シラードから始まり、愛する人を取り戻すために永き放浪を続ける孤高の黒騎士。父性最強糸目関西弁呪術師の澄江堂我鬼。そして、会津・ジャシィーヴィル。登場人物総じてそれぞれの事情や人間性が深く描かれ、独自の思惑が交差し魅力的な物語が描かれています。すごい。ほんとにすごい。ギャルゲーってこんな感じなんですか!?
会津・ジャシィーヴィルという男に脳みそを焦げ焦げに焼かれてしまいこんな文章を書いてしまいました。1人で狂ってるのは孤独なので語れる仲間を増やしたいです。どうか皆様読んでください。
設定の緻密さ、原作知識をもってしても一筋縄でいかない問題の数々、術式の名前と話タイトルの美しさ、戦闘描写の凄さなど他にもいろいろありますが、分量が大変なことになるのでこれくらいでまとめさせていただきます。最高におすすめの小説なのでみんな読んでください!!