ロリコンドラゴンとドラゴン殺し幼女の『ドラゴン結婚相談所』

お餅ミトコンドリア@悪役ムーブ下手が転生

プロローグ

「……ん……」

 柔らかな日差しが降り注ぐ中、一人の幼女が目覚めた。

 八歳くらいだろうか。黒い下地に胴体や肩などを覆う赤色のレザーアーマーに身を包んだ、赤髪サイドテールの美幼女だ。

 徐に立ち上がり、その活発そうな紅い瞳で、周囲を見渡してみると――

「……どこだここ!?」

 ――そこは、広大な荒野のど真ん中だった。

 辺りには、自分以外には、誰もいないようだ。

「……ん……?」

 ――否、一人……もとい、一匹だけいた。

 子犬サイズの翼の生えた黒い蜥蜴――のように見える生物が、プカプカと目の前に浮かんでいる。

「どうやら、気が付いたようじゃのう」

 その生物は、口を動かして、人間の言葉を喋った。

 口腔内には、小さいながらも鋭い牙が並んでいる。

「お主、自分が何者で、何故ここにおるのか、分かるかのう?」

 古めかしい言葉遣いをする黒蜥蜴の問いに、美幼女は、

「そんなの、分かるに決まってるだろ! あたしは、リアだ! 何でここにいるかって言うと……それは……」

 と、勢い良く答えようとしたが――

「……えっと……あれ……?」

 ――自分の名前以外は、何も思い出せ無かった。

「やはり、お主もそうか……」

 と、黒蜥蜴は溜息をつく。

 その反応に、リアは、

「あたしもって事は、あんたもそうなのか?」

 と、質問した。

 すると、黒蜥蜴は、

「そうじゃ。儂は、こんな見た目じゃが、ドラゴンじゃ。じゃが、それ以外には、何も思い出せんのじゃ」

 と、頷いた。

「へぇ~、あんたがドラゴンねぇ。その大きさで?」

 と、訝しげに見るリア。

 どうやら、名前以外は思い出せなくとも、「ドラゴンとは、巨躯を持つモンスターである」というような、一般常識などは覚えているようだった。

 リアの言葉に、チビドラゴンは、

「そうじゃ。何故このように小さくなっておるのかは、儂にも分からん。記憶が無いからのう」

 と答えた後、

「ああ! そうじゃ! 一つだけ、覚えておる事があるのじゃ! とても大事な事じゃ!」

 と、カッと目を見開いて、言った。

 リアが、

「何だ? 記憶を思い出すためのヒントか?」

 と、身を乗り出して訊ねると、チビドラゴンは――

「儂は、人間の幼女が大好きである、という事じゃ!」

 ――と、胸を張って答えた。

 それを聞いたリアは――

「ふんっ」

「ぶべはっ!?」

 ――チビドラゴンを殴って吹っ飛ばした。

 そして――

「このロリコンドラゴンが!」

 ――と叫ぶと、地面に転がっているチビドラゴン――ロリコンドラゴンを、冷酷な目で見下ろした。

 ロリコンドラゴンは、

「ああ! 幼女による理不尽な暴力! この全身を貫くような快感! 何故か、懐かしい感じがするのじゃ!」

 と言って、見悶えた。

 リアは、

「このドM変態ロリコンドラゴンが!」

 と、ロリコンドラゴンを蔑みながらも、

「……って、何かあたしも、懐かしい感じがする……これって、もしかして……」

 と、俯いて思考した。

 そんなリアに対して、ロリコンドラゴンは、

「恐らく、儂らは元々知り合いだったのじゃろうな」

 と、微笑んで言った。

 すると、リアも、

「そうか……あたし達、知り合いだったんだな……」

 と、笑みを浮かべると――

「腹減ったし、殺して食うか」

 ――と言いながら、ロリコンドラゴンに対して、鋭い殴打を立て続けに放った。

「ぎゃああああ!」

 先程と違い、明らかに致命傷を与えようとする、殺意を込めた攻撃によって、ボロボロになっていくロリコンドラゴン。

「か、快感じゃが……このままでは、本当に死んでしまうのじゃ……じゃが、幼女に殺されて昇天するなら、それも悪くはないかもしれんのう……」

 と、地面に転がるロリコンドラゴンは、息も絶え絶えの状態で呟く。

 リアは、目にも止まらぬスピードで振るっていた剛腕をピタリと止めると、

「やっぱやめた。小さくて、食べる所少ないし」

 と言った。

 ロリコンドラゴンは、

「……何とか助かったのじゃ……」

 と呟きながら上体を起こした後、

「それにしてもお主、元々知り合いだと分かった直後に儂を殺して食おうとするとは……頭のネジがかなり外れておるようじゃな……」

 と、まるで死に掛けの蚊のように、フラフラと空中に浮かんだ。

 その言葉に、リアが、

「あんたにだけは言われたくない! ドM変態ロリコンドラゴンのあんたにだけは!」

 と言った。

 すると、ロリコンドラゴンは、

「まぁ、確かに儂も大概なのは認めるのじゃ。しかしのう……恐らくじゃが、性癖と言うのであれば、お主も、幼女趣味である気がするぞ?」

 と、小さいながらも鋭い爪でリアを指差した。

 予想外の指摘に、リアは、

「はぁ!? あんた何言ってんだ?」

 と、呆れた表情を浮かべる。

 ロリコンドラゴンは、

「ふむ」

 と、俯いて一瞬思考した後、

「試しに、思い浮かべてみるのじゃ。人間の成人男性、成人女性、そして、少年、少女、更に、男児、幼女。その中で、自分が最も性的に興奮するのは、どれなのか、と」

 と、提案した。

 リアは、自分の身体を見て、触って確認しながら、

「何変な事聞いてんだ!? この感じだと、あたし自身が幼女と言える年齢だろ!? 幼女が同じ幼女に対してそんな風に思う訳ないだろうが!」

 と、言った。

 が、ロリコンドラゴンは、

「物は試しじゃ。ほれ、一度で良いから、考えてみるのじゃ」

 と、しつこく促す。

 リアは、

「ああもう、分かった分かった! やれば良いんだろ!?」

 と言うと、目を閉じた。

 そして、

「えっと……大人の男……違うな。別に何とも思わないし。じゃあ、次。大人の女……これも違うな。次……」

 と、一つずつ、頭の中に思い浮かべて、自分がどう感じるかを試して行った。

 すると、

「……少女……これも違うな。次。男児……何とも思わないな」

 と呟いた後、

「やっぱり、どれもこれも、全然何とも思わないじゃないか! まだ幼女の年齢のあたしには、そう言うのは早いんだよ!」

 と、勝ち誇ったかのように言った。

 そして、

「最後のも、絶対何とも思わないはずだ」

 と言うと、リアは、

「幼女」

 と、口にした。

 その直後――

「!?」

 ――適当な幼女を想像しようとしたリアの脳裏に、青髪セミロングヘアの美幼女が、鮮明に思い浮かんだ。それはまるで、想像したと言うよりも、既知の――親しい人物を思い出した、と言った方が良いような、はっきりとした映像だった。

 どこかの村だろうか。映像の中の青髪美幼女は、はにかみながら――

『リアちゃん』

 ――と、鈴を転がすような、透明感のある美しい声で、リアの名を呼んだ。

 と同時に、リアは心の底から、堪らなく愛おしい気持ちが溢れて来るのを感じる。

 今直ぐにでも、彼女を抱き締めたい――どころか、抱きたい衝動に駆られる。

 リアが、

(今のは一体……!? あの子は……誰なんだ……!?)

 と心の中で思考していると、ロリコンドラゴンが、

「どうじゃったかのう?」

 と、聞いて来た。

 「はっ!」と、我に返ったリアは――

(そうだ、あの子が誰かは分からないけど、幼女に対して興奮したって事は、あたしは……!)

「……今のって、つまり……あたしが……ロリコンって事か……!?」

 と、わなわなと肩を震わせながら呟くと、

「あんた! あたしにロリコン病を伝染うつしたな! 何てことするんだ!」

 と、ロリコンドラゴンを指差して糾弾した。

 ロリコンドラゴンは、

「いや、ロリコンは病気ではないと思うんじゃが……」

 と、遠慮がちに突っ込むが、リアは、

「うるさい! 絶対にあんたのせいだ! 殺してやる!」

 と、再度、殺意を込めた両の拳を握り締めて、連打を放った。

 連撃を浴びながらロリコンドラゴンは、

「ああ! 今度こそ、死んでしまうのじゃああああああああああ!」

 と、快感に身を捩りながら、悶え、叫んだ。



 ※ ※ ※ ※ ※ ※


(※お読みいただきありがとうございました! お餅ミトコンドリアです。


新しく以下の作品を書き始めました。


【もしも世界一悪役ムーブが下手な男が悪役貴族に転生したら】

https://kakuyomu.jp/works/822139838006385105


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