第24話



カラン……カラン……


「やっと来た……中々来なくて退屈だったよ」


 冷たい風を感じながら私は侵入者を告げる鳴子の音を聞き目を開けた。廃村で1番高い廃教会の屋根の上から見下ろすと廃村内に人影を確認した。わざわざモンスターの数を減らしたり、いくつか罠を解除しておいたのに遅い……山に慣れてないのか?


「獲物は1人で来たか……他に誰か連れてきてたら面倒だったしラッキー」


 殺しちゃいけない奴だったらクライに迷惑かけるしね……まぁ、あれと一緒に来るなら殺してもいい問題児だろうけども。私はそう思いながらフードを被り仮面を装着した。そしてガチャ!とボルトを装填する。


(メタルスパイダーの糸に変えたから少し引くのが重くなったね……そろそろコンパウンドクロスボウでも作ろうかな)


 あれガンテツに原理とか教えれば作ってくれそうだし……スプリングとか滑車の加工が面倒なんだよね。その分引きやすくて威力が高いから作る価値はある。


「先にコンポジットの方を作るべきなんだろうけど……生憎あっちの方が知識が無いんだよね。と、そんなことは今はどうでもいい。さっさと処刑始めよう」


 私は頭の中のスイッチを切り替え夜の闇に紛れターゲットの男の近くまで向かった。男の装備は革の防具がメインで腕には金属製のガントレット……革防具ならボルトは刺さるね。そして男は何故かは分からないけれど少し気が勃っているようだった。まだ何もしてないんですけど……


「こんなとこに本当に居るのかよ……違ってたらぶっ殺してやる」


 ……こいつ本当に裏ギルドの構成員?入ってきて1分も経過してないのに見つからないって理由で怒ってるとか短気過ぎるんだけど。ゲームの時に荒事系大好きな奴がいたけどもう少しまともだったよ。


(こういうのが和を乱すんだろうね……


 しかもこいつ八つ当たりなのか廃墟を壊してるし。さっさとやるか……じゃないと私がブチ切れる。


「【プレイグ】【カース】」


 私は男の背後からクロスボウを撃ち込む。苛立っている男の背中にボルトがブス!と突き刺さる。


「痛ってぇぇ!!」


 不意打ちを食らって男は大きな悲鳴をあげる。そして背中に刺さっていたボルトを掴んで抜くとへし折って地面に投げ捨てた。おい、それ再利用できなくなったんですけど。何してくれてんの?


「【コンフュージョン】【カース】」


 私は静かに怒りながら再びボルトを撃ち込む。今回の相手は金属の防具着てないから【アシッド】の出番は無しかな……いや、あれだけ破壊するか。


「【アシッド】」


 私はボルトで男の腰に付けられた鞄の金具を撃ち抜いた。金具が壊れ鞄が地面に落ちガシャン!と瓶が割れる音がする。薬割れやすい瓶にでも入れてたのかな?


「なっ!」


 男は鞄を拾おうとしゃがみ手を伸ばしたが、拾おうとした手にガントレットの隙間を抜けた私のボルトが突き刺さる。更には私の投げた激臭の薬が男の鞄へ降り注ぎアイテムをダメにした。これで薬の治療はできないね。


「くそ!何処だ!!ぶっ殺してやる!!」


 男は手からボルトを引き抜き飛んできた方へ走っていくがすぐに背後から撃たれて走り回っている。途中で撃たれる方を予測して構えていたけれど、私はそれを読んでそのまま背中にボルトを撃ち込んだ。脳筋の打つ手は簡単に読める……だってどいつも同じことをするんだもん。


「ガァァァァ!!!」


 完全におちょくられている男は獣のような怒号をあげ始めた。遂に理性が吹っ飛んだか……ここからはどこまで精神をズタボロにできるかだね。


「【ブラインド】【ヒュプノス】」


 私はどんどん付与を増やし男を苦しめていく。前後不覚の状態で視界が悪くなり眠気でただでさえ回っていない頭は回らず最初の【プレイグ】で発症した病がどんどん蝕んでいく。更に【カース】によって傷の回復も鈍い。


「正々堂々戦いやがれ!!臆病者が!!」


 男は怒り狂いながら私を探し続ける。臆病者と煽っているけれど私には全く効いていない。何故ならば……


(暗殺者が臆病者なのは当たり前なんだよなぁ……)


 暗殺者で正面戦闘するのは仕方ない時ぐらい。そうじゃないならバレないように不意打ちするのが当たり前……私はそう流しつつボルトを撃ち続ける。私は最早男に付与をしたボルトを撃ち続ける機械のようになっていた。


ピィィィン……ザシュ!!


 男が暴れまくっていると私が仕掛けたワイヤートラップに引っかかる。細いワイヤーが男の腕に食い込み薄らと出血を起こさせる。更には尖った杭を埋めた落とし穴に嵌ったりと、盲目と混乱で視野が狭まった男は苦しんでいく。


「ゴホ!ゴホ!」


 最初に受けた【プレイグ】も進行し咳を始める。熱も出てきたのか動きがフラフラし始め倦怠感からか力が出なくなっていた。背中のボルトを抜く気力もないのか段々とハリネズミのようになっていく。毒を塗ってないから中々死ねない……気力はもう削れ切ったかな?


「くそ……この俺が……こんな……」


ドサ……


 多くの状態異常を引き起こしている男は遂に力尽き地面に倒れる。ゼェ……ゼェ……と掠れるような息の音が聞こえ、起き上がろうとする男の手は砂を掴むだけとなっている。


(もう壊れたか……)


 もう少し無様に踊ってて欲しかったんだけどね……私はそう思いながらボルトを1発撃ち込んだ。今回のボルトには毒を塗ってある……すぐに死ねない程度の毒を。即死なんてさせないよ……それじゃあつまらないからね。


「後は放置しておこう……」


 私は男が毒になったのを確認すると何もせずただただ見た。麻痺の効果もあるため男は声を出せず1時間程毒で苦しんで死んでいった。これが私流の処刑……ゲームの時で本当にイライラしてないとやらないけど、やられたらプレイヤーは心が折れてゲームを離れていくやつもいた私刑。大体がゲーム内で問題起こしてるヤバい奴らだったからお咎めは無かったけどね。


「最後の顔はもう早く死にたいとしか思ってなさそうだったね」


 私はクスクス笑いながら呟いた。苦しめて殺す……クライの注文通りにはできたね。殺した後は首を切り血を抜いてから箱に入れてクライに渡せば完了。他の部分は燃やして処分……その前に戦利品漁ろう。


「金は……こいつ全然持ってない。こいつに壊されたボルト分は回収できたって感じだね」


 鞄の方は私がダメにしちゃった。一応投げた薬は臭いがヤバいだけで毒性は無いんだけど……使いたくは無いね。胴体防具に関しても背中側が穴だらけ……使える部分が全然無い。


「おっ、こいつのガントレット魔鉄製のようだね……防具には使えないけど短剣の材料くらいにはなるかな?」


 それかコンパウンドクロスボウの部品にするか。これは地味に使えそうだから回収しよう。あとは全部焼却でいいや。私は男の首を落とし胴体部分は焼却場で油をかけて燃やした。首はしばらく放置すると血が出なくなったので貰っていた木箱に入れておく。木箱には塩が入っていて一緒にもらってた袋の中に入ってる塩を入れれば首を腐りにくくすることができるみたい……この辺はゲームでは無かった作業だね。


(そもそもゲームじゃ首を回収することなんてなかったからね)


 暗殺対象は放置。プレイヤーは殺せばモンスターと同じように消えたからね……私は首を入れた木箱を塩で満たし蓋をしながらそう思った。


「明日は装備の進捗確認……クライのところはそのあと向かおうっと」


 新装備楽しみだなぁ……私はウキウキしながら男の死体が燃え尽きるのを見届けた。



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