<夏の日の扉>にて語られるは、博士の過去。それに端を発した自己救済のための発明品。
<秋の夕暮れと超機動合神サーガンディオン>にて語られるは、前章にて登場した発明品の根幹たる技術とその使い途。
最後の<冬の星に願いのようなものを>には、前章にて語られた技術の平和的運用がなされた例が描かれている。
卓越した技術力を備えた世界や未来を描きつつも、博士や博士周辺の登場人物たちは人間味を失うことなく躍動している。
時には攻めたネタも混ぜ込みながらテンポよく進む会話も心地好い。
影響力甚大な立派な医学博士もまた一人の人間であり、出発点はただ一人に向けた発明であったと思うと、なんだかとても愛おしく感じられる。
どれだけ技術が発達しても人間は人間らしく生きられるのかもしれない、そんな希望を抱かせてくれるSF×恋愛×ヒューマンドラマ。
ざまあ、婚約破棄、追放、チート、無自覚、無双など、頭空っぽにして読む作品が上位に入りがちではある昨今、
SF、ヒューマンドラマといったものに食指が伸びない人にも是非とも読んでいただきたい。
内容は向咲日葵(こうさき はるき)という人物のお話。
文章、構成、どこをとっても不安がない。
登場人物にしてもセリフだけの脇役などではなく、きちんと一人の人間がそこにいるという、ひとつの現実世界に生きている人としているのがわかります。
あくまでも個人的感想ですが、文章の端々から作者様の中に積み重ねてきた素地が垣間見えて良いものをたくさん見て読んで経験にしてきたんだろうなと。
わずか3話の話の中で一つの世界が構築され、安心しすぎて逆に不安になるというおかしな錯覚を覚えますが、良作です。
こんな作品こそもっとランキング上位に上がれ!という思いを込めて。