第5話
「…少しだけ」
「ははは。そうだろうなあ。あいつは人の子とは違う、吾等側の生き物だからの」
口元を隠しながら楽しそうに言う保也。凛々花は先ほど言われた言葉を反芻した。
「…私、才能あるんですか?」
「晴明はそう言ってたな」
「あの、実は…」
凛々花はここに来るまでの経緯を話した。母親が勝手に陰陽寮への所属を決めてしまったこと、本当はデザイナーになりたかったこと。
話終わった瞬間、保也は大笑いし始めた。
「なるほどなるほど! 道理で龍脈のことも晴明のことも知らないわけだ!」
「そんな笑わなくても…」
凛々花が拗ねたように唇を尖らせると、保也は笑いを堪えながら「ごめんなあ」と謝る。
「まあそれでも、経緯はどうであれもう天文得業生として登録されてるから。得業生やりながらデザイナー目指すのもありだと思うぞ」
「でもまあ」と言葉は続く。
「本音で言えば、汝の職を解くことはできんのよ。さっき、晴明に認められただろう? それで合格、しちゃってるんだよね」
「どれがテストだったんですか⁉︎」
「テストっていうか面接よ。汝は晴明に認められた、しかも能力も優秀と評価された。悪いが辞めさせることはできない。こっちも貴重な人材をみすみす逃すことはできないからな」
眉を下げながら説明する保也。凛々花は夢が遠くなったのを感じて、唇を噛んだ。
「そう悲しい顔をするでない。幸運なことに、陰陽寮職員は副業が許可されているから、そっちで目指すこともできるぞ」
「…はい」
半ば嵌められるような形で採用が決定してしまったことに、納得はいかない。しかし、それを保也や晴明に当たるのは違うとわかっていた。だから、口先だけでも納得の形を表した。
「…まあ嘆いても状況は好転せんよ。吾の服も作れるのかえ?」
「…サイズと形の要望さえあれば」
「ふふ、ならばお願いしようか。とびっきり可憐で、晴明も振り返るほど可愛らしいものを頼むぞ」
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