第16話 ハンバーガー

取調室

ムッとした表情で、ハンバーガーをほおばっているリタ。

検察官が、あきれた表情でそっと近づく。

「君が食べたいと言っていたアルティメットガイズのアレキサンダーバーガーだ。どうだ。少しは気分が良くなったかね」

「ありがとう。ここのはね、牛肉の風味が他と全然違うのよ。最高ね。でも、これとそれとは別ですから。」

一人の検察官が、おだやかに話し出す。

「だから、君、今回の事件でだね、君の行動がだね、その……」

リタが、途中で遮るようにモグモグしたまましゃべりだす。

「周りにいたのが腰抜けばかりでみんな逃げ出したから、やっつける人間が誰もいないから、私が戦ったまでです。それ以上、言うことはありません。ゴクン」

もう一人の検察官がなだめるように話しかける。

「ふう、……。そうじゃなくてだねえ、うん、うん、君の言っていることが間違っているということではなくてだね。ううん、もう少し落ち着いてだね…」

最初の検察官が言い聞かせるように続けた。

「君の正義感が強いのはよく分かったよ。だけれども、社会的責任というのがあってだね。つまり、あのとき…ドリルボットを勝手にだね…」

リタはハンバーガーを片手に持ったまま机を叩いた。

「多くの人が爆発の危機にさらされていたら、それを、何をおいても、第一番に守るのが社会的責任じゃないんですか。あの時、みんなあの場所から逃げ出していたんですよ。警察も特殊部隊も。向かっていったのはアンドロイドだけ。それで、責任がとれるんですか。市民の安全が守れるんですか。」

検察官2人、顔を見合わせて、首を振る。

リタは、ハンバーガーを一気に味わうと、少し落ち着いた声で言った。

「すいません、ハンバーガーをもう一つおかわり!」


情報局司令室

警察署長、軍の司令官、市長などのお偉方や、アレックス博士などのいつものメンバーが集まり、深刻な顔をして情報局長の話を聞いている。

情報局長が口火を切る。

「……というわけで、今回のテロ事件の首謀者は国際的なテロ組織ソドム、そしてその裏で暗躍しているのは巨大企業ツァイスの裏の組織だと推測して、間違いはありません」

警察署長が慎重に発言する。

「しかし、犯行声明が出ていない状況で決め付けるのは早すぎるのでは」

市長がきっぱりと反論した。

「そんな悠長なことを言っていては、この緊急事態に市民を守ることはできません。すぐに手を打つべきです」

軍の司令官もうなずきながら発言した。

「テロはいかなる場合も許してはいけない。我々はどんな局面にあったとしても、毅然として対処しなければならない」

警察署長も負けてはいない。

「だが、局長のおっしゃる通りに、こちらから動けばやつらをいたずらに刺激することにもなりかねん」

情報局長がみんなを見回した。

「最大限の配慮を持って、慎重に行動せねばならないのも事実です。でもこれ以上好き勝手にさせておいていいわけはありません。どうでしょうか。そこでぜひ、これに目を通してほしい。」

情報局長が、黒い表紙のファイルを提出する。

「今こそ実行の時です。私はG計画を提案します」

局長はきっぱりと言い放った。あたりに緊張が走った。

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