第5話 マービン家の晩餐

廃墟のようになった最初の爆発現場。ここは小さな児童公園だったが今は見る影もない。

めちゃめちゃになった滑り台やブランコを乗せたトラックが去って行く。一人の少女がそっと座り込んで、踏みにじられた廃墟の小さな花を両のてのひらでやさしく包む、するとなんということだろう。光りながら茎がピンと伸び、花が生き生きと広がる。甦ったのだ。気が付くと、あたりにはもう誰もいない。静かな夕闇が町を包む。


マービン家の食卓(リタの友人レベッカの家)

料理上手の妻テレサの料理をむさぼるように食べるマービン。傍らのレベッカはうつむいてあまり食欲がない様子。

マービンが優しく尋ねる。

「どうしたレベッカ。今日も母さんの料理はホテルのコースよりうまいぞ。食べないのか」

「リタのところ、あの爆発のあと、病院に連れて行ったんだけれど、結局、お父様もお母様も助からなかったんだって。弟のキースもまだ意識不明だそうよ」

母親のテレサも悲しげに振り返る。

「昨日もそこの通りでご挨拶したばかりだったのに。なんでもリタの誕生日で、久しぶりに家族が揃うって、お母様よろこんでいたのよ。なぜ、こんなことに」

「そうか、幼なじみのリタの家族が……。物騒な世の中だとは思っていたが、まさかリタの家が爆発に…。あのバイオボムとかなんとかいうやつだろう。それはつらかったろう、ごめんなパパが悪かった。許してくれレベッカ……」

「いいのよパパ、でも私、悲しくて……」

「心の優しい娘だからなあ。ああ、泣くがいい、こんなつらいことはそんなにあるもんじゃない。パパは、ちょっと仕事を思い出したから、行ってくるから」

「あなた…。今頃どうしたの…」

そっと食卓を離れるマービン、だが部屋を離れると家の隣にあるマービン電気の研究所へ駆け込む。

「おい、リーガン、リーガンはまだいるか」

暗い研究所の奥から、サンドイッチをほおばりながら若い技術者が出てくる。

「おじさん、いや、社長なんですか。今奥様が届けてくれた夜食を食べてるんですが、このローストビーフ、絶品ですねえ」

「おい、今回の何とか言う爆弾を発見できる防犯装置を、すぐ作ってくれ」

「え、今回の爆弾って、あらゆるセンサーに反応しないというバイオウェポンでしょ。それは無理なんじゃないかなあ」

「何を言ってるんだ。おまえ、昔、日本人向けにマツタケ探知機を作ったじゃないか。同じキノコの仲間だろう」

「形がキノコに似ているだけで、動物の細胞を使ったものだから、キノコの仲間じゃないんです。だが、ちょっと待てよ、そうか、キノコのように増殖したものなら、あるいは……」

「一流大学を卒業できたのは誰のおかげかのう」

「おじさんには感謝しています。うん、そうですね、それならせめてキノコのような増殖細胞を手に入れてもらえば、何とかできるかも」

「甘い、自分でとってくるんだ。そして、すぐに製品化しろ、一週間でも早く作れば町中に売れて、しかも利益独占だ。他がやる前にやる。それが私のやり方だ」

「そんな無理なこと言わないでくださいよ」

「君がいやならいいんだが、いやね、レベッカの親友が被害にあってね。この防犯装置を作ったら、レベッカがきっと喜ぶだろうな」

「レベッカお嬢様が!」

「今娘は親友のことで悲しみの海に沈んでいるよ。君が慰めてくれるといいんだが」

「やります、きっとレベッカさんのために装置を開発します。そういえば、特殊処理班の研究所に知り合いがいたよな…」

がむしゃらに仕事を始めるリーガン。

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