第39話 アーメルダの祭典、ノイエ
──『ノエル』
人気ユニット『ゼヒニオヨバズ』は、前回の優勝チームとしてゲスト参加することになっていた。
街中は人・モノ・金が飛び交っている。アーメルダ自由商業国にある街々から多くの人が訪れ、多くの観光客で溢れかえっていた。
「んー美味しいです」
「自由っていいですね」
見たこともない食べ物に舌鼓を打ち、シュリナは喜びユーコは自由となった身を喜んでいた。
「実はベニマ兄様の話しを聞いて、お祭りで美味しいものを食べたかったんですよー」
と、シュリナは笑っていた。やはり女の子、ふたりとも甘いものには目が無いようで食べまくっていた。……シュリナは僕が洋服を作っている間にポーションを作って売りまくり、この日のために随分と稼いでいたようである。
『『それではノエルのメーンイベント、ナターリスに参加の方は広場にお集まり下さい 』』
会場中に声を響かせるこの仕組みは、拡声スキルを活用したマジックアイテムらしい。まぁ日本で言う拡声スピーカーとイコールなのだが、中空の何もないところから声が拡散してくるので違和感が凄い。 (ナレノ モンダイダガ)
受付会場は広場に面した巨大な公堂、町並みに溶け込んだ素晴らしく雰囲気の建物で、その中に予選を通り抜けた人たちが続々と集まって人たち……
ナターリスには、戦士部門や大道部門、魔法部門があったが、前回、『ゼヒニオヨバズ』が圧倒的な大差で優勝したことでアイドルという言葉が周知されたせいで、今回からアイドル部門が新設されていた。
アイドルとは言ってもこの街での有名人ということで、他の国にまでその名は届いていない。日本みたいにどこにでも映像を届ける技術が確立されてないせいである。
ただ、間違いないのが、商業がとんでもなく発展したこの大都市で人気が出れば、とてつもないお金が動いているだろう。
「有名ではありましたけど籠の鳥でした。与えられた贅沢だけは許されましたが、自由なお金はもらえず……外に男を作ったり武器を購入して反旗を翻されるのが怖かったのかもしれません」
「あー、なるほどね。ここはそんな世界だもんね」
『『ナターリスが開催されます。これから前回優勝者のゼヒニオヨバズがゲストとして出演します。鑑賞される参加者の皆様は、公堂の2階バルコニーをご利用ください』』
「順番までまだまだ時間があるし行ってみようか」
バルコニーはステージがばっちり見える。広場にはありえないほどの人・人・人状態だったが参加者の中で鑑賞に来ていたのは、ほんの数組だった。
「前回経験したから分かりますが、人のことなんて気にする余裕なんてありませんでした。自分のことで精一杯、手のひらの『人』を何人も飲み込みましたよ」
司会者の進行によってゼヒニオヨバズが紹介された。
ゼヒニオヨバズのリーダーであるミサキは、挨拶の中でメンバーだったユーコは卒業し新たな門出を果たした。新天地で頑張ってほしいと綴った。
ユーコの目から光るものが落ちた。
「私たちも頑張りましょう。初めてです、歌いたいと思ったのは……みんなの前で歌うのはずっと嫌だったのに」
ゼヒニオヨバズの歌声は素晴らしかった。経験を積んだからだろうか、堂々とした佇まい自信をもった歌声、奏者によって紡がれる音符に乗って曲の膨らみが何重にも感じる。
「キレー、素晴らしい歌ですね。聞いたこと無い曲調ですが良さは分かります」
これって日本で聞いたことあるぞ……歌詞はこっちに合わせて変えてあるけど。そう、この曲は僕が好きだったアニメのオープニング、有名歌手が主題歌を担当したと話題になったのだ。
はぁ、頭に流れる映像とともにこの曲を聞けるってなんか嬉しいな。まさかまさかだよ……。
『へぇ、レムにはこんな記憶もあったんですね。それを見ているレミの顔ったらだらしなくて可愛いですね』
………… (ミナイデ)
「このグループは人族がひとりもいないですね」
シュリナのビックリ発言、ユーコも驚嘆の表情を浮かべている。
「分かるんですか! ……って、分かるんでしたよね。そうなんです、秘密なんですが、人化して人の姿のほうが多くの人に受けられやすいって。って、みんなってことは、ユキナやナユタも?」
「ユキナやナユタって人も転生者なの?」
「分かりません、ミサキは東さん、ユキナは
「え!……」っと、危ない。ユキナって花音さんだったのか、学校では
一条はユウジという名で活動し、シンジ、ケイゴ、マモル。と共に勇者として活躍。その名に心当たりのある何人かが集まり、ユウジはノブナガ、シンジはマーライと改名して今の形になっていったと教えてくれた。
「あれ!? あそこにいるのってケイゴじゃないですか。レム様、鬼族のケイゴです」
「知ってるの?」
「もちろんです、
不思議な縁である。何組かのパフォーマンスを見た後に僕たちは衣装に着替えシュリナに化粧をしてもらい、ナターリスの会場に立った。
「さー、次の参加者は……なんと、とんでもない情報が入ってきました。ゼヒニオヨバズを卒業したユーコが作ったグループだそうです」──ざわめく観衆、飛び交う声援──「それでは登場して下さい、イコマキツノです!」
この日のために作った衣装、女の子としての魅力を引き立てる化粧、人々が目にしたものより数段高いものを纏った3人組の登場に会場は静まり返った。
ユーコの歌は素晴らしい、今までイヤイヤ歌っていた心が開放されたせいか声は伸び人々に勘当を与える。演奏がないので迫力には欠けたが、かえってその心が聴衆に届いたようだ。
歌が終わっても観衆は言葉を発しない。今ある余韻を壊すのが惜しいとばかりに……ユーコはさっきまでの堂々とした振る舞いはどこへやら、顔を真赤にして僕の後ろに隠れてしまった。 (ボクノ ホウガ チイサイケド)
「僕たちは1度きりのグループです、みんなの前でひとつだけ訴えたいことがあってこの場に立ちました……アイドルだって心を持ってるんです。追い詰めたり、過剰な心労をかけることのないようにお願いします。みなさんありがとうございました」
頭を大きく下げた。その雰囲気にシュリナとユーコも「「お願いします」」と頭を下げた。
「いこう……」──僕たちはステージを後にした。
いやぁ、この後が大変だった。服や化粧の売買や制作方法、アイドル活動への勧誘などがバカみたいにきたのだ。ここまでになるとは全くの予想外!
「こんな状態じゃあ街を出歩けないよ」
と、いうことで賞を獲った場合は辞退することを伝え、宿屋に置いてあった荷物を回収してすぐさまダルメルカ王国へ発つことにした。
これは後に知った話しだが、ゼヒニオヨバズ は当面の休止が発表さたそうだ。それと、ノエルという祭りに参加したイコマキツノは後世に語り継がれる伝説となった。
「いやぁ、あそこまで大騒ぎになるとは思わなかったよ。それにしてもユーコもシュリナも歌がうますぎ」
「ふふふ、実は前世でも歌が好きだったんです。恋愛小説と歌だけが私の趣味でした」
「こうみえても私は鬼族の巫女ですからね、歌う機会も多かったですし人が多ければ多いほど頑張っちゃうんです」
良かった……無理して僕のパートを入れなくて……そう思わずにはいられなかった。
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