せっかく転生したのに爆発に巻き込まれてレアモンスターにされてしまった件

ひより那

1章

第1話 レアモンスター蜘蛛レオン

 今、僕はこの地にせいを受けた。地球人であった頃の記憶がハッキリと残っている……最期のあの時の忌まわしい記憶……友だちに見捨てられて死んだあの恨み……クラスメイトみんなの顔は忘れない。


 せっかく異世界転生を果たしたっていうのに……アレが転生のキッカケだとするならあいつらもこの世界に転生しているはず……いつか見返s━━


━━ドッカーン!


 なんだこの鼓膜を突き破るほどの爆発音は、あぁ。生まれた時から眼にしていた風景 (生後5分)が無残にも瓦解して……い……く……。



 ◆ ◆ ◆



「ん……んん……。ここはどこだ」

「良かった良かった。なんとかうまくいったのぉ」


 白髭をたくわえた老人90が見下ろしていた。なんか頭に『90』とかいう数字が出ているけど。

 この場所は……洞窟……かな? 氷柱石つららいしから垂れた雫が水面に落ちて綺麗な音色を耳に運んでくる。

 

「そういえば……異世界転生したと思ったらいきなり爆発に巻き込まれたんだった……」

「お主は転生者だったのか。最近、多いのぉ。でもお前さんのように転生して直ぐに死んでしまう者は珍しいかもしれんな」


 イヤイヤイヤ、異世界転生を果たしたっていうのにいきなり両親に捨てられた上に爆発に巻き込まれて死んだだぁ? おかしい、おかしいぞ! 


「あれ、なんで死んだのに生きてるんだ? まさか天国?」

「死んだ原因がなぁ、ちょっと言いにくいのじゃがワシの魔法が暴発したのじゃ……仕方ないから手頃な魔物に命を移したってわけじゃ。すまんな」


 ギャー、なんか動けるし違和感だらけだと思ったら魔物って……正面から見れば蜘蛛っぽい、しかも爬虫類の尻尾が生えてるんですけどー。……デモナンカカワイイ


「お主は運がいい。その辺で見つけたのがレアモンスター蜘蛛レオンとはなぁ。滅多に人前に姿を表さない経験値の美味しい魔物じゃぞ」


 それって慰めなのか、慰めになっていると思っているのか? こっのくそじじぃ。って……あまりにも混乱しすぎてご老人をじじぃとか呼んじゃったじゃないか。


「で、僕はこれからどうしたらいいんだ……魔物の生き方なんて知らないぞ」

「まぁ、がんばってくれ。困ったことがあったらいつでもワシを頼ってもらってよいぞ」


 行ってしまった。消えるようにいなくなる現実を目の当たりにして異世界感満載! 思わず「おぉ」と声が漏れた。あっ、いない!


「消えたら連絡出来ないじゃないかー。せめてメッセージアプリDoconeのIDくらい教えておいてくれよー」


 という嘆き、洞窟内で反響したキューキューという音、なんじゃそれーと思うことしか出来なかった。


『キューキュー』


血縁長ケツエンノオサにより、『同化』及び『血縁操作』が発動されました》


 どこからともなく聞こえる鳴き声と不思議なメッセージ頭に語り掛けてくる声、なんだこれ……体が引っ張られる……抗えない……体を操られる―!


「怖いけどしょうがない……でもなんだか不思議と安心感があるんだよなぁ」


 それにしても不思議なところだなぁ、魔物っぽいものはたくさんいるけど素通りできる、こっちの姿を気にする様子もない。


「あぁ、同じ洞窟内の魔物ってことで仲間みたいなもんか……にしても、あの頭の上にある20と25とかの数字は何だ……僕を殺した爺さんの上にもあったけど━━」


『グギェェェェェ』


「ヒィィィッ!」、耳を貫くような断末魔……流石に怖い……ソロリ、ソロリ顔を向ける。


 赤く光る鋭い目、巨大な体……テレビで見たグリズリーより獰猛そうででかい。手から伸びる長く鋭い爪には、熊に体を巻きつけたまま絶命している巨大な蛇がいた。


 35の頭部には35という数値、蛇には何もない……もしかして、死んでいると数字は出なくなるのか? 熊には気づかれてないようだしこのままやり過ごそう。


 体が勝手に動くこと数時間、平和なんてどこにもなく所々で命の奪い合いをしていた。

 あまりにも当たり前のようにエサを求めるたたかう魔物たちを見ているといつのまにか心が麻痺して何も感じなくなってくる。


「まぁ、僕のことは誰も見向きなんてしないから助かるわぁ」



 そして辿り着いたのは……小さな横穴を抜けた先にある大きな部屋、僕と同じ容姿の魔物が所狭しと集まっていた。

 それぞれの頭上には1~20の数字が乗っており、二回りほど大きな蜘蛛レオンが2匹、つがいとなっている。


「数字は……45と52。もしかして! 強さか? ここに来るまでに見た魔物、強そうなほど数字が高かった! じゃあ僕の頭上にも数字があるのか!」


 一生懸命に顔を歪めて見ようとするがどうやっても見ることが出来ない。自分の目で鼻の穴を覗くくらい無茶な行為である。


「それなら!」


 うぉー何も出てないー! 部屋の隅にある水場、顔を覗かせてみるが数字なんて無かった。どうやら、自分が意識した相手しか見えないらしい。


「うーん……そうだ」


 僕を含めてこのワラワラ、ワラワラじゃれ合っているのは子供だろう。よし!


 頭上に5と書かれている蜘蛛レオン、ヤー! 


 ゴロン━━大外刈でダウン。全く歯が立つ気がしない。


 頭上に3と書かれている蜘蛛レオン、ヤー! 


 ゴロン━━ビンタ一発……あまりの痛さに戦意喪失。


《レベルが1上がりレベル2となりました。スキル『糸』を習得しました》


 糸? 糸って糸だよな? 洋画で見た蜘蛛男のように糸が出るとか? 確かあれは手をグーに握るんだよなぁ……って、何も出ないじゃないか! それなら、蜘蛛レオンという位だからお尻? というかこの体のお尻ってどこだー。


 あー! 尻尾の先だ……サナダムシのような白いものが尻尾から伸びている蜘蛛レオンがいるぞ。ちっこいし子供ってことかな。


 それなら! ……「ふっふー、糸ー!」尻尾から伸ばした糸を、大外刈された蜘蛛レオンに巻きつけた。


「よし!」。動きを封じた。これならレベル2でもやっていけるんじゃね?


『キューキュー』


 つがいの蜘蛛レオンが急に叫びだした鳴いた。部屋の中に響き渡るほどに巨大な音……うぅぅ、耳が。ってあっ。


 一瞬で視界が遮られた。暗くて良くわからないが、ネバネバした足元、隙間から漏れてくる光。捕われた! もしかして、仲間に糸を出すのはルール違反なのか?


血縁長ケツエンノオサにより、スキル『同化』が消失しました》


 え……何それ消失? この場所に来て生物としての本能を得た。蜘蛛レオンが生まれつき持つ固有スキル『同化』。周囲の景色に自分を溶け込ませることで身を守る。これのおかげでこの場所に来るまで魔物に襲われずに来れたのだ。


 って、「ウワー」。糸に包まれ繭のように閉じ込められたままふっ飛ばされた……すごい勢いで宙を飛んでいる。


「イテッ」、壁にぶつかって落下した先、コロコロコロコロ下へ下へと転がっている……目が回るー一体、どうなってるんだー。


 落ちた先は巨大な広場、一体どれほど落ちたのか想像もつかない。着地と同時に巻き付いていた糸が霧散した。


 な、なんだここ……見渡す限り蜘蛛レオンの死体、死体、死体。ここって絶対何かをやらかした蜘蛛レオン捨て場なんだ……アニメで良くある『一族の掟を破った者』ということなのだろう。


 にしても、腹が減ったぞ。なんたって僕はただの魔物じゃない。ちゃんとした人間の知能を持ってるんだ。本能だけで動く蜘蛛のように闇雲に動き回ったりしないぞ。


「と、いうことでまずは食料だな……」

 

 ざっと見た限り、蜘蛛レオンの死体しかない、襲われる心配もなさそうだし食料確保が第1だな。


 テコテコテコテコ……テコテコテコテコ……。


「な……何もなーーーーい!」


 あるのは更に下に繋がる通路だけ…… (ウナリゴエガキコエル、ボクノレベルハ2ナンデス)


 食料なんて何もない。ここに来るまでに見た魔物、下に行くほど頭上の数字が高かった。どうしよう、どうしよう、どうしよう。


 周りにある大量の蜘蛛レオンの死骸……やっぱこれを食べるしかないよなぁ……そういえば異世界転生してから色々あったせいで何も食べていない。お腹が空いているせいか思考はぼやけるしイライラするし……。


 この蜘蛛レオンたちを食べる! 決意するしか無かった。


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