ベースは所謂乙女ゲー世界。
作中には姿は登場しないが侯爵家嫡男。
たいして苦労しなさそうなキャラなのなんで成り上がりが必要なんだろうと思ったでしょう。
仮に王になってもそこまで成り上がり感はないとも。
しかし読むとそんな感想は消えてなくなります。
なにもド底辺からのし上がるだけが成り上がりでないこともわかります。
侯爵家嫡男であっても環境のせいで立場は不安定。
侯爵家で他の貴族より裕福であってもその分支出も多く左団扇ではない。
本人にはチートはなく、身体能力は平凡。
あるのは原作ゲームの未プレイヤーとしての「攻略」知識のみ。
だけど原作キャラなんて関わる人たちの中でも一握り。
貴族社会では派閥争いは当たり前です。だから権謀術数渦巻く貴族社会で立場や年齢、時折降って湧いてくる出来事をできる限り利用して、信用と実績を積み重ねていきます。
たまにとんでもない失敗をやらかしてしまうが、反省し、そのやらかしすらも利用する。
そんな彼の原動力は一目惚れした王太子の婚約者を奪うこと。
だけどゲームとは違ってなにをするにも柵や怨恨が発生するし、なにかを起こしたあと禍根を残さないためには大義名分が必要です。
話の中心は謀略と根回しが中心で読んでると頭がよくなった気にさせてくれる本当にいい作品です。
いろんな登場人物が出てきますが、登場人物ひとりひとりがちゃんと生きていると感じさせられ、作者の都合で動かされてる感じはしません。
ちゃんとそれぞれのキャラにバックボーンがあり、その人物ならその状況でそう言うという説得力があります。
にも関わらず、所謂「ヘイトキャラ」というのが非常に少ないです。
主人公と敵対するキャラは複数でてきますが、それはお互いの目的がぶつかった結果であり、決して読者のヘイトを集めてスカッとさせるためだけのキャラではない点です。
もちろん人によっては不快に感じるキャラは出てくるでしょう。そしてそのキャラが制裁を受けることもあるでしょう。ですがそのまま使い捨てるのではなく、主人公の謀略に有効活用して返り咲く者もいます。
web小説が好きな方であれば一度手にとってはどうでしょうか。決して損はさせません。
そして原作の修正力ような力の恐ろしさも味わってください。
かなりおすすめです。
多くの人に読んで欲しいので、いい所と離脱ポイントも含めてレビューします。
●要素
成り上がり・勘違い(?)・戦記物・謀略・発明・腹黒(不快感が少ないレベル)・恋愛・伏線回収・貴族社会
戦記物や封権制物の中では圧倒的に読みやすく、難しい言葉を極力簡単にしてあるが…きちんと厚みのある小説。
細かく大小のsugeeがあり、目標→計画→実行→達成が小気味よく続き時間が溶けます。
●時系列あらすじ
①転生主人公がややゆるめの中世ファンタジー世界観で硬派な権力闘争(ゆるめ世界観と硬派は矛盾していません)
ゆるめ3:硬派7
②急にあらすじ通りの乙女ゲーパワーが増してあらすじの展開が始まる。
ゆるめ7:硬派3
他の章と大きくギャップがあり、その温度差で恐らくここが最大の離脱ポイントです。ご都合というか不思議パワーが主に主人公以外に働きますが、ここ以外はかなりバランスがいいのでもし合わないと思っても耐える価値大ありです。理不尽と感じる展開もちゃんとプラスになって後々回収されるので、2周目に読むとむしろ面白かった。
③完全に新章といえる、開花した戦記物。
一種のエンディング後の世界ともいえるが、むしろここからが本番。
①と②があることで最大限に厚みを増した面白い物語が始まります。
ゆるめ3:硬派7
人によって違うかもしれませんが、③を最大限に楽しむために①②があると私は感じました。
久々の激推し小説に出会えました。
どのキャラよりも作者が一番頭が良く緻密で腹黒だと思います。