第33話

「ローサ! ここでお土産を買いましょう?」


 商店は所狭しと商品が並んでおり、品揃えが豊富で驚いたわ。そして見たことのない商品に心をときめかせてしっかりと選んだ。


 マード薬師長とヤーズ薬師とロイ薬師にはブランデーとコロンを。ナザル薬師、ターナ薬師、レコルト薬師、マテオ薬師には地エールを買ったの。


 カイン殿下に相談したら『ここはエールが美味い』と言っていたけれど、小さな入れ物では味が落ちてしまうらしく、樽ごと購入する羽目になってしまった。


 殿下が帰国時に積んでくれると約束したから問題ないわよね。


 普段から忙しくしているせいか薬師同士で飲む事が無いのでみんなが飲めるかは知らないの。きっとみんなは飲めるはず。


 私とローサは自分用にお菓子や髪飾りを買った。もちろん父にもブランデーと葉巻を買ったわ。


 帰国したらローサに届けて貰う予定にしている。当初の目的は達成されたわ!




 私達は王宮まで戻りカイン殿下に改めてお礼を伝える。


「カイン殿下、今日はありがとうございました。とても楽しかったです。お土産も買うことが出来たし、貴重な体験も出来て一生の思い出が出来ました」


「それは良かった。私もトレニアと過ごせてとても楽しかった。もっと二人で会いたい。他の令嬢と君はこんなに違うとは思ってもみなかった。もっと君を知りたい。このままこの国に残って欲しいくらいだ」


 私はカイン殿下の言葉にじわりと温かい気持ちが浮かび上がってきた。少しでもそう思ってくれるだけでも嬉しい。


「ふふっ。ありがとうございます。殿下からそのような言葉を頂いて本当に嬉しいです。その言葉を胸に今以上に国に帰って仕事に取り組めそうです」


「私の思いは全く伝わっていないような気がするな。残りの四日はどうするのだ?」

「明日はゆっくり休暇をいただいて最終日は荷物を纏めて馬車に乗せる予定です。間の二日はまだ未定です」

「そうか。ではまた中庭でお茶が出来そうだな。従者に時間が決まったら連絡させる。トレニアとお茶を一緒にしたい」

「分かりました。カイン殿下、お待ちしておりますね」


 私は部屋の前でカイン殿下に礼をするとカイン殿下は上機嫌で去って行った。


 私は翌日、宣言通りゆっくり、ぐーたらゴロゴロとベッドで過ごした後、王宮の庭園も見学させてもらったわ。


 カイロニア国の庭園も季節の花が咲き乱れ、圧巻の一言に尽きた。風に乗って花の香りが私を笑顔にさせ、とても素晴らしくてまた来たいと思えるほどだった。




 その次の日の朝は予定通りカイン殿下がお昼を一緒にしたいと知らせが来たので騎士団まで出向くことになった。



 騎士団棟へ向かうと、お昼には少し早かったようで騎士達が訓練場で訓練をしている。その横には見学スペースがあり、ご令嬢達の黄色い声援がそこかしこから聞こえてくる。


 どこの国でも騎士は令嬢から人気があるのね。


 私がそんなことを考えながら令嬢たちの脇を通り、騎士団棟へ入ろうとしていると、訓練をしていた騎士の一人が手を挙げてこちらへ走ってきた。


 ……カイン殿下だわ。


 令嬢達はその姿を見て黄色い声が凄いことになっている。


「私を見つけてくれたのね」「私に手を振ったのよ」と小競り合いが起きそうになっていてあっという間にカイン殿下はご令嬢達に取り囲まれた。


 私と食事予定だった気がするのだけど、これは、難しそう。


 私は立ち止まっている従者に食事は無理そうではないかと話をしてみた。


 従者の方もカイン殿下の姿を見て苦笑いしながら「そうですね。とりあえず、ここではご令嬢達に囲まれてしまうので団長室へ案内します」と団長室へと案内されてソファに座った。


 従者が「うちの殿下がすみませんね」と言いながらお茶を淹れてくれる。仕方がないわよね。「モテる男は辛いですわね」と笑顔で返しておいたわ。


 しばらくするとカイン殿下はやれやれと言いながら部屋に入ってきた。


「トレニア、すまない。遅くなってしまった。魅力あるご令嬢達がなかなか離してくれなくて困ってしまった」

「カイン殿下はモテモテですね。羨ましい限りです」

「トレニアだけが私のことを想ってくれる。それだけで充分なんだがな」


 カイン殿下は戯けて私に手を差し出す。


「トレニア嬢、お手をどうぞ」

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