第6話

「じゃあ今日はここで」

「待って!連絡先交換しよ?『ZINE』やってるよね?」


 僕らは連絡先を交換することとなった。岡田の運命の人が加藤の友達だと言うので加藤は岡田とも連絡先を交換する。


「待って!そのスマホカバー!」


 僕が加藤と連絡先を交換していると、不意に加藤は声を上げた。


「グスタフ・クリムトの絵だよ」


 僕のスマホカバーはグスタフ・クリムトの絵画『メーダ・プリマヴェージ』だ。今年の夏に開催されたグスタフ・クリムト没後100周年記念式典で買ったものだった。グスタフ・クリムトは黄金を使うことで知られているが、僕はこの絵のピンクと白のコントラストが好きだった。グスタフ・クリムトの描く白はとても奥深い。『ヘレーネ・クリムトの肖像』の白い服などがいい例だ。


「グスタフ・クリムト?なんか聞いたことがある気がする!」

「うーんとね。昔のオーストリアの画家だよ」

「へー。この絵可愛いね。どこで売ってるの?」

「もう売ってないかな。でも、ネットで似た奴買えるんじゃないかな?」

「ふーん。後で調べよ!グスタフなんだっけ?」

「グスタフ・クリムト」

「ありがとう。絶対買うわ!」


 連絡先を交換し終えると僕らは駅へと向かった。


「じゃあまたね。愛してるよ、アデル!」

「うん。またね」

「ゆみちゃんまたな」


 僕と岡田は加藤と別れて神奈川方面の電車に乗る。


「ゆみちゃん可愛かったな」

「ああ。確かに可愛かった」

「それに胸もかなりありそうだぞ?スタイルもいいし服のセンスもいい」

「うん。これからどうしたらいいんだろう」

「もしかして愛ちゃんと別れるのか?」

「うーん。分からない」

「言うと思ったよ。まぁ、なるようになるさ」


 僕らは電車に揺られて僕らの住む街へと運ばれていった。その日の夜。愛から電話があった。

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