第5-2話 スーパー近くにある公園で

「収穫なしか…」


 和技は高校生として過ごしながら、何か『空を飛ぶ特別な人』の情報はないか色々と探ってみたが、得られることもなく帰宅し、自室のベッドに寝っ転がる。


「そもそも空を飛んでいたライブ配信やそのリツイート、それに関する話題も、がっつり消されているから、こっちの世界から探しようがないよな…学校や電車内の会話に耳を傾けても、全くだし」


 和技は掛け時計に視線を向ける。夕食を終え、寝る前までの ひとときを指していた。


「一度、帯論さんと合流して…」


 独り言を閉ざしたのは、近づいてくる足音に気づいたから。


 ノックをしてから、ドア前で和技の名を呼ぶ女性がした。妹ではない家族、母親である。


七流ななるがいつまでたっても帰ってこないから、見てきてくれない?」

「あれ、まだ帰ってないの?」


 夕食時の記憶に妹の姿はなく、中学生の門限を過ぎていた。


「電話したら、公園で友達と話してるって言ったけれども、いくらなんでもね」

「わかった」

「ついでに明日のパン、買ってきてくれない」

「わかった」


 和技は素直に返答し、ベッドから起き上がる。

 『面倒くさい』と反抗的になれないのは、設定上の関係で世話をしてもらっている女性という考えがあるのかもしれない…そう思う和技の顔は少し悲しげな表情をしていた。




 公園近くにあるスーパーで先に買い物をするべきか、それとも七流を回収するべきか、考えながら向う和技にスマートウォッチがメッセージ着信を告げる。


「今すぐ、公園に集合?…誰から?」


 和技はスマートウォッチを操作しようとしたか、送信した本人が声をかけてきた。


「あ、お兄ちゃん、もう来たんだ。早いね」


 公園から回収予定の妹が出てきた。


「七流。母さんが心配してるから、帰るよ」

「えー、今からなのに無理だよ」

「今からって?」

「すごいんだよ『特別な人達』が公園に来るんだって」

「は…え?」


 七流の後を追った和技は、異変に気づいた。

 日が暮れて、子供たちが帰った公園はいつもなら誰もいないかベンチに座る大人が一人二人見かける、静かな空間となっているはずなのに…

 沢山の人達がいた。

 ブランコやジャングルジムのある中規模の園内には、学生やスーツ姿のサラリーマン達が一人ないしグループでベンチや遊具付近に立ち雑談している。


「これは…」

「お、棚島もきたのか?」


 声に視線を向けると見覚えのあるクラスメートが連れといた。

 妹は兄に仲の良い人がいる事に少し驚いてから、自分の連れがいる方に離れて行く。


綿山車わただし…お姉さんまで」

未縫依みぬいだ。弟がいつも世話になっている」

「それは俺が言いたいんだけど…みぬ姉」

「ここに来る情報を聞いて、ライブ配信するために来た。お前もそうか?」


 弟の苦情を無視して進める姉はマイペース…というより自分ペースな人らしい。

 『特別狩り』の姉はスマホを手にしていたが、録画していないのか、画面は地面を向いている。


「俺はたまたま、妹の回収と隣のスーパーに用があってきたんだけども…『特別な人達』がくるって本当なのか?」

「らしい。みぬ姉がそのSNSを見て大騒ぎしてたから、興味でついてきたけれども…結構、人が集まってるな」

「………」


 声に出すことなく修復士の先輩に報告してから、和技は思案する。

 『特別な人達』は行動もそうだが、名乗り出るなど、まずありえない。

 『まさか、俺の事がバレて、誰かが仕組んだわけじゃ、ないだろうな…』と、不安にったが、それは解消してくれた。


「おまたせ~」


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