十一の月と七日目
ナナ教会神父 カァル・モートロ
今日は安息日だった。いつものように、境界の伝達水晶を皆の家のものと繋げる。
私の方の水晶は、皆の姿を写さないが、声はしっかりと届けてくれる。「神父様、おはようございます」「今日もよろしくお願いします」……そんな声に返答し、祈りの時間が来る。
私が神への言葉を詠唱し、皆は目を閉じ、祈りを捧げる。この国が生まれた時から、絶えず行われてきた、七日に一度の風習である。
だが、ここ数年、ミサに参加する人数が減ってきているのが気にかかる。この国の人々は、神に祈りを捧げることで、悪魔を退け続けたというのに。
と同時に、悪魔と同じ力である魔力によって、われわれの生活が成り立っているのは事実ではある。私も魔法は全く使えないが、料理や洗濯などを、魔道具に頼っている。
しかし、もしも、完全に神への祈りが失われてしまった時、この国は一体どうなってしまうのか……私は、ただ、その瞬間が恐ろしい。
――安息日だが、考えすぎてしまったのかもしれない。体と同じように、心を休めるためにこの日が制定されたということを、失念していたようだ。
神への祈りを途切れさせないために出来ることは、私にもまだあるはずだ。それを模索するためにも、今日はゆっくり休もうと思う。
おわり
***
メモ
カァル神父の日記は、生活の中のちょっと嬉しかったことや、近所の人とののんびりした交流とかが中心だから、今日のは全く毛色が違くて、驚いてしまった。
日記に愚痴を書く人は多いけれど、カァル神父のは切実で、胸が痛くなってしまう。私だけが、これを読んでもいいのだろうかという戸惑いが強い。
でも、悪魔だからと言って、一辺倒に退けるべきだという意見には、賛同しかねる。悪くない悪魔……変な言葉だけど、そうとしか言いようのない悪魔も、中にはいるのだから。
そう言えば、その悪魔さんも、そろそろ訪問してくる時期だ。彼は必ず日記を書くから、すぐに分かる。
――まだ、リーは見つからない。
同時に、トーチくんの日記も、三日前から止まっているのが気になる。日記が書けなくなるほど、気になっているみたい。私も力になりたいけれど、もどかしい思いばかりしている。
ノシェ
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