久しぶりの登校…2

あまりにも大きい声で菖蒲さんが叫ぶから皆の視線が俺たちに集中する。


「ご、ごめん。 なんでもないから!」


菖蒲さんはそういうとスっと椅子に座った。

そのままぐるんっとこっちを向くと俺に向かって口を開いた。


「(放 課 後 教 室 で 待 っ て ろ)」


口パクなのに圧が凄い。

あまりの圧に俺は静かに頷いた。

放課後になるまでいつもより早く感じた。

俺が学校に来たのが広まったのか部活の先輩や顧問がかわるがわる来てくれた。

誰もが温かい言葉をくれて俺は本当にこの学校に入ってよかったと改めて思った。

そう、思ったんだ。


「ねえ天汰帰りはお迎え?」

「んーん。 歩き」

「え、大丈夫なの?」

「へーき。 へーき」

「一緒に帰る? 荷物持つよ?」

「んー。 あーっと」

「あ、あのごめん。 私が渡会くんと帰る約束をしてて、その…」

「え。 菖蒲さんと天汰って仲良かったっけ? 私保育園から一緒だけど聞いたことないなあ」

「あー。 えっとね。 えっと!」

「それが隣の席になってからいろいろしてくれてたらしーしお礼にお菓子奢るっていったんだよ」

「いろいろって?」

「プリントとか掃除のときに机移動させてくれたりとか、ほんといろいろ」

「そっか」

「だから今日だけ一緒に帰ろって俺から誘ったんだ」

「天汰から!?」

「おう」

「…ふーん。 分かった。 じゃあ私は先に帰るね。 天汰お母さんによろしくね」

「おう。 あ、あとで陽菜にもお礼のお菓子もってくから!」

「自分で選びたいから、明日私と一緒に帰ったときにでも奢ってよ」

「了解!」

「ふふ、じゃあまた明日ね! 菖蒲さん、天汰のことよろしくね!」

「う、うん!」


そういうとパタパタと陽菜は帰っていった。

よし! 俺らも帰るかと隣を見るとガタガタと震えながら小声で何か早口で言っている菖蒲さんが目に入る。


「終わった。 つんだ。 一軍の中央さんに絶対目をつけられた。 ただでさえ友達少ないのに一軍に目をつけられたら私の学校生活終わったも同然。 だから渡会なんかの隣の席は嫌だったんだよ。 サッカー日本代表なんちゃらで顔もまあイケメンな方。 性格は明るくまさにザ・人気者。 そんな奴の隣の席なんて絶対目立つと思ったし席もとられると思ってました! 案の定休憩時間毎回誰か来てたよね? 私がトイレいっている間に勝手に座ってさ私帰ってきたんだけど!って何回も思いましたよ。 でも言えるわけなくない? 向こうはサッカー部の陽キャでしかも先輩。 方やコッチは三軍一年女子の陰キャ。 あーあー、これだから格差社会は嫌いなんだよ。 もっと私に優しくあれよ。 中央さん、推しと声似てたから本当嫌われたくなかったのに。 できれば仲良くなりたかったよ。 だって顔も癒し系でめっちゃかわいいし? それに声は透明感あってさ。 え、声優さんっすか?って感じだしさ。 歌だってうまいし? スタイルも抜群でなんで芸能人じゃないの? そういうことやってないの? むしろ声優さんになって欲しいな。 なってくれたら軽率に推すんだけどなあって思ってたのに嫌われた。 絶対嫌われた。 終わった。 はい。 人生終了。 ありがとうございました。 私、菖蒲美月あやめみつきの来世にこうご期待ください」


「えっと…終わった?」

「あ」

「詠唱みたいでなんか凄かった、な?」

「…っ!!!」

「えっとー…。 菖蒲さんも活舌よかったし声優さん?になれるんじゃね?」

「っなれねーよばーか!!!!」

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