Day 10『水中花』
映った私が咲うなら
帰り道。汗と香水の漂う満員電車。疲れた身体を縮こまらせて、ゆっくり深い息を吐く。
ふと顔をあげると、ちょうど夕日が沈むところで、夜空と街の間に広がる絵の具みたいな朱い色。
何だか妙に嬉しくなって鼻の頭がくすぐったい。頬が緩みかけたとき、映った自分と目があった。夜を背にガラスに映った私の目。見ていた朱とはほど遠く、少し乾いて冷たくて、シャー芯みたいな黒い色。
今日一日にあったことなんて、残ってないような色に見えて、私は思わず笑ってしまう。他人から見える私はこうなのかと、日中のことを思い出す。
トンネルの音が私の声をかき消した。ガラスの私が濃く映ったけど、もう見ていることはできなかった。
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