鶴も人も幸せにはなれない

お約束ください

私が部屋にこもって機織りをしている時、

どうぞ、覗かないでください


よくある話だ

鶴の恩返し、とそういう類いの

好意を人間として伝えられず

獣としてしか返すことができない

悲恋系物語

成功した例は知らない

いつの時代も悲しい恋話が好きだから

しくしく、泣くか

男に憤るか

果たされない想いにロマンを感じるのだろう


あまり、好きではない

無理にでも恩を返したい妖怪も

我慢できずに覗いてしまう愚かな男も

気持ちは何となく分かるけれど

噛み合わない気持ちは時として泥のようについてまわる


学校で、この先のことを想像してみましょう、という

授業があった。

別れたのに続きがあるのか?

みなみな、戻ってきただの、親兄弟が復讐しにきたなど

男が妻を追いかけて行っただの、と

自由に話していた。その中でロマンがあるものをみんなで決める

結果は忘れた。

一応、ハッピーな話になったと思う。

だって、ごんの先を考えましょうと同じでしょう?

もう失って終わったものに何を見出すの?

女も男も後悔して、会わなきゃ良かったとか考えてる?

行間を読めって言う?

妄想でしょ。でも妄想がいいと言う人もいる。

私が、そう。

私は「罠を仕掛けたところに行き、手紙を置いてくる」

願った。

どうか、手紙を読んでくれますように

まだ好きでいてくれますように

会いたい、と思ってくれますように。


独りよがりすぎた。

なさけない妄想だった。

現実は、嫌いになったら、もう近づかない。

これだ。

酷い妄想だった。ロマンだった。

そこに愛はありますか。

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