第413話 街の端で。


 二十分後。


 クレッセンの街の端。


 薄暗い地下への階段をニールとミロットとが降りていく。


 特に看板も何もない扉を開けると、ランプの光のみで薄暗いバーにたどり着いた。


 店内にはまばらにいる客が静かに酒を楽しんでいるようであった


 初老の店員がミロットを目にすると、ぺこりと頭を下げる。


「ミロット様、ご無沙汰しています」


「あぁ。マスター。奥の個室を借りてもいいか?」


 マスターはチラリとニールへ視線を向けると、小さく頷いて。


「どうぞ。ご自由にお使いください。ご注文はどうなさいますか?」


「いつも酒をボトルでくれ。干し肉……それから、果実水とステーキ、パン、スープを」


 ここでニールが前にでて。


「酒のボトルは二本追加。果実水とステーキ、スープは三つずつ追加で」


 ミロットは苦笑して。


「お前、そんなに食うのか? ここのは量が多いぞ?」


「まぁ。大丈夫でしょう」


「じゃあ。それで頼む」


 マスターはミロットに視線を向けると頷き答えた。


 納得したように


「かしこまりました。お持ちします」


「頼んだ」


 ミロットは一度頷くと店の奥へと歩いていった。


 ニールもキョロキョロと視線を巡らせながら、ミロットに続く。


 慣れた様子で、扉を開けると六平方メートルほどの部屋だった。


 細かい装飾の施された丸テーブルと椅子とが置かれていた。壁には翼を生やした女性と青い鳥が描かれた絵が張られている。


 ミロットが椅子に座った。


 ニールは鞄を下ろして対面する椅子に座った。


「よっこいしょういちと」


 ニールとミロットとが雑談していると丸テーブルいっぱいに料理が運ばれてきた。


 ミロットが再び苦笑した。


「本当に食えるのか?」


「まぁ。食べられるでしょう」


 ニールがランプへと視線を向けた後で、鞄を小さく叩いた。


 鞄の蓋が開くと、小人達がゾロゾロと飛び出してくる。


 小人達を目にしたミロットは椅子からガタッと立ち上がった。


「っ!? これは……」


「俺の仲間です。人間とどのように関わらせるか思案している最中ですので、まだ多くに知られたくないのですが。まぁ、ミロットさんになら知られてもいいかと思い紹介します……小人族です」


「小人族だと……それは童話の話ではないのか!?」


「そうですね。地下大迷宮内に居ました」


「それで、死地を乗り越えた仲間か。なるほど……お前が聞いていたよりも早く戻ってきたのは彼等の協力があったからか」


 ニールは椅子の背に体を預けて。


「確かに……。あまり考えていなかったですが。こいつ等が居なかったらまだ大迷宮を彷徨っていたか。死んでいたか」


 ジンは小さく笑って、ニールの肩に飛び乗った。


「クク、お前が死んでいた? いやいや、ないだろ」


「そうか?」


「ニールならしぶとく生きていただろうよ」


「まぁ、生きてはいたかもな」


 ニールとジンが話していた。


 ミロットは興味深げに、周りに出てきた小人達に視線を向けていた。


 ただ、もう酒に酔った状態のジンが出てきたところでそちらに向く。


「っ!」


「んーいい匂いすんなぁー。ん? なんや? 誰やお前」


「いや……なんでもない。酒ならそこにあるぞ」


「おーそうかい」


 ジンが酒瓶に視線を向けると、丸テーブルに飛び乗って歩いていった。


 ミロットは目を細めて、ジンの後ろ姿を見送っていた。


「んー」


 ニールはフォークを手に取って口を開く。


「ジンのヤツが気になりますか?」


「強いな」


「んーこいつ……アンバー王国の最強の戦士ですので」


 ジンは「最強だなんて、恥ずかしいやん。かかか」とか言っていた。


 ニールはステーキを食べながら、苦笑する。


「苦戦していたオラクルを使いこなせるようになってからは、更に強くなったかな?」


「……そうか」


 鞄から出てくる小人が途切れると、シルビアを始めとする七体のメイド姿を着た【リドール】が現れた。


 ミロットは疲れたように、椅子の背に体を預けた。


「シルビア……」


「あぁ。シルビアのことを知っているんですか。彼女は地下大迷宮でなんか貰いました。他は帝国の国庫に居たんで盗……貰いました」


「はぁー……驚いて疲れた」


「まぁまぁ。ちょっと騒がしいですが、食事を始めましょうか」


 ニールとミロットとは食事を始めた。


 ニールはフォークでステーキを切り分けて、一口食べていく。


「それで? 話って何を聞きたいんですか?」


「お前は、世界を渡ってきた者なんだな?」

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