勇者達と流れ星

鳴里

勇者達と流れ星

 作・鳴里


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 ※アドリブ等はストーリーを捻じ曲げない、雰囲気を壊さない程度であればOKです。

 ◆◇◆◇◆◇


  ♂ 18歳 主人公 ユウトとアイは幼馴染 幼いころに両親を亡くし祖母に育てられたが、その祖母も年で動けなくなり、伝手で食堂でお世話になっている。 不器用だが人一倍努力してきた努力家。曲がったことが大嫌い。赤のメッシュが入った黒髪で黒と紫のオッドアイ 頬に傷がある


  ♂ 18歳 レツヤとアイの幼馴染 才色兼備 文武両道 高身長でメガネ 白衣が似合う 学校を卒業し、里帰りしていた。 銀と青の髪でキリっとしているイケメン顔、プライドが高く自分はなんでもできると思っている。 ※長文あり


  ♀ 18歳 食堂〜愛と勇気〜の看板娘 レツヤとユウトの幼馴染 金髪蒼眼の美少女 食堂に住み込みで働いており、一人で店を回す実力派ウエイトレス 自覚はないがレツヤに恋しており、自分の事を可愛いと思い込んでいる為、レツヤに再三ちょっかいをかけては軽くあしらわれている。


  不問 15歳 女装している男の子 黒髪金目で少し丸みを帯びた顔をしている。食堂〜愛と勇気〜を経営しているオーナーの息子で実は美少年 レツヤ達より年下だがしっかりしており、いつも二人の面倒を見ている。 何故か女装しており、頑張って中性的な感じを出しているつもりになっている。※Nと兼ね役


  ♀ 闇の組織 絶望の二人組として恐れられている。ドSお姉様、じっくり弄ぶのが大好き


  不問 闇の組織 絶望の二人組として恐れられている。 無邪気な少女(少年) 僕っ子


 N 55 不問 ナレーション ユウキと兼ね役。




 〜配役表〜

 レツヤ♂:

 ユウト♂:

 アイ♀:

 ディス♀:

 ユウキ、N 不問 :

 ペア 不問 :


 ※呪文詠唱は、英語で書いてありますがカタカナ読みで!


 ◆◇◆◇◆◇


 本編はここからです。


 N:とある山奥の広場、2人の青年が距離を取り向かい合って睨み合っていた...

 

ユウト「さぁ、かかってきな!一捻りにしてあげるよ、あの頃みたいに...ね!」

 

レツヤ「ふん、余裕そうだな」

 

ユウト「まぁ、僕は剣と魔法の名門校を首席で卒業したのだから、当然だろ?」

 

レツヤ「いってろ、そういってられるのも今のうちだぞ!俺だって厳しい修行を耐え抜いてきたんだ!」

 

ユウト「へぇ、なら...遠慮なく..........」

 

N:ユウトは深呼吸をして呼吸を整え、掛け声とともに木刀を構える、その構えを見たレツヤは思わず息をのんだ。その隙の無い構えに真剣なまなざし、覇気のある掛け声に圧倒されるかのように・・・しかし、これで怯んでいてはカッコがつかないと思い覚悟を決め武器を構える。その目もまた相手の覇気をものともしないような真剣なまなざしだった。対立した二人の間に緊迫した空気が流れる。それを打ち破るようにユウトが掛け声をあげ踏み込んだ

 

ユウト「行くぞ!!」

 

レツヤ「...来い!」

 

N:地面を蹴り上げレツヤへと突進する、それに負けじとレツヤも木刀を握りなおし受けの構えをとる。疾走し加速した剣は勢いを増し凄まじい剣撃としてレツヤを襲う、ユウトの攻撃は一撃一撃が速く、鋭く、そして重く、レツヤは受け止めるのが精いっぱいだった。

 

ユウト「はっ!」

 

レツヤ「っくぅ」

 

ユウト「どうした!修行の成果を見せてくれるんじゃなかったのか?」

 

レツヤ「っち!なら、お望み通り見せてやるよ!」

 

N:レツヤは何とか体勢を立て直すと、ユウトへ悟られないよう木刀へ闘気を込める。

 

レツヤ「闘気力注入オーラチャージこれでなんとか・・・」

 

ユウト「ふふ、まだまだだね。何か小細工をしているようだが、僕にそんなものは通用しないよ!っふ、はぁ!」

 

レツヤ「っく、だがやられっぱなしじゃ終わらないぜ!ここだ!おらっ!」

 

ユウト「っと、あっぶな__」

 

レツヤ「まだまだぁ!!」(レツヤが被せるように攻撃を繰り出す)


ユウト「なっ!まずい…!!!」


レツヤ「これで一発逆転だ…!いくぞ、オマエの“魂ごとぶっ叩く!爆裂闘気斬(ばくれつとうきざん)・烈昇撃(れっしょうげき)」


N:レツヤは渾身の気迫とともに、一気に攻撃を畳みかけた。予想外の猛攻にユウトはわずかにバランスを崩し、足元がぐらつく。

だが次の瞬間――ユウトは冷静に踏み込みを修正し、わずかな隙を逃さず体勢を立て直す。そして詠唱すら必要としない熟練の動作で、木刀に闘気オーラを一気に集中させると、そのまま迫るレツヤの木刀を鋭く弾き返した。

 

ユウト「っはぁ!」

 

レツヤ「なにっ!?」

 

N:一瞬の出来事だった。弾かれた木刀は宙を舞い地面へ突き刺さる。勝負がついたことを察するとユウトはゆっくり近づき、呆気に取られているレツヤの首元に、木刀の先を当てた。

 

ユウト「勝負あり...だね!」

 

レツヤ「息切れ)くっそ、また負けたよ...」

 

ユウト「ふぅ、危ないところだった... まぁ、いい線いってるんじゃないの?」

 


N:ユウトは汗をぬぐい木刀を置く、そしてレツヤをみて軽く微笑み手を差し伸べた。

 

ユウト「強くなったな!」

 

レツヤ「っち、褒められても嬉しくねぇよ...」

 

N:レツヤは、顔を背けながら手を取り立ち上がる。そんな2人の元に、可愛らしい服に身を包んだ美少女がそのきれいな髪を靡かせながら駆け寄って来る。長い髪は太陽のように輝く金色で、瞳は澄んだ蒼をしている。

 

アイ「あー、レツヤ!やっと見つけた!もぉ、探したんだからね!」

 

レツヤ「え、いや!その...」

 

ユウト「これはこれは、お久しぶりです」

 

アイ「まぁ、ユウトじゃない!久しぶりね!元気してた?」

 

ユウト「はい、おかげさまで!」

 

アイ「よかったぁ...!ねぇ!せっかくだし夕飯うちの店で食べてきなよ!」

 

ユウト「それはいい考えですね!」

 

レツヤ「っちょ、勝手に決めんなよ!」

 

ユウト「まぁまぁ、レツヤもたまには付き合えよ!」

 

レツヤ「俺は...もう少しここにいる」

 

アイ「えぇ!何いってるの、レツヤもくるの!」

 

レツヤ「だから、勝手に決めんなって...」

 

アイ「来て、くれるよね?来てくれないの...?ぐすん」

 

ユウト「あーあ、女の子泣かせた〜」

 

レツヤ「わかったわかった、行くから!泣くなって...」

 

アイ「ほんと?本当に来てくれる...?」

 

レツヤ「行く行く、行くよ...」

 

アイ「M)レツヤってやっぱりちょろいなぁ...かわいいっ、ふふ」

 

レツヤ「アイ?どうしたんだ?ボーッとして...」

 

アイ「ああああ、ごめんごめん!さぁご飯食べに行こ〜!私もうお腹ペッコペコだよぉ」


 ※遠くから呼びかけるように

 

ユウト「お〜い!2人とも〜行かないのか〜い?先行っちゃうよ〜!」

 

アイ「あー!待ってよぉ〜!」

 

レツヤ「っちょ、ったく...」

 

N:マイペースな2人に、思わずため息が出てしまうレツヤ、やれやれと言わんばかりに一息つくと、2人を追いかけるようにレツヤも走り出した。


 ◆◇◆◇◆◇


(町の食堂〜愛と勇気〜)


N:ここはこの街で一番のにぎわいを見せる食堂~愛と勇気~。街の誰もが一度は立ち寄る、憩いと満腹の名所だ。

息を切らせながら、レツヤとアイが店の入り口に転がり込むように飛び込んでくる。


レツヤ「(息切れ)...はぁ、やっと着いた...」

アイ「(息切れ)もぉ、足が棒だよぉ〜...」


ユウキ「いらっしゃい!...って、アイにレツヤじゃないか!さてはまた店番サボったな〜?」


アイ「ち、違うもん!私はレツヤを探しに行ってただけだし!」

レツヤ「おい!なんで俺が全責任負う流れなんだよ!」

アイ「事実を言っただけだもーん♪」


ユウキ「まったく...二人とも雇われの身なんですから、もう少し責任感を持ってくださいよ!」


レツヤ「はいはい、わかってますって...」

アイ「むぅ、結局私まで怒られるとか理不尽〜...」


レツヤ「でも、もう客いないんだな」

ユウキ「今日はもう閉店です。そろそろ片付け始めますね」


レツヤ「そっか。...あ、手伝い、いる?」

ユウキ「はい、当然です!手伝ってくれますよね?」


レツヤ「も、もちろん!やりますやります!な、アイもなっ!」

アイ「えぇ〜〜?私、お腹すいて動けな〜い」


レツヤ(小声)「頼むって〜、また昼抜きにされたら死ぬ...」

アイ「私には関係ないし〜」


ユウキ「...あ、ちなみに。手伝ってくれた人には今夜“SPコース”ご馳走しますけど?」


レツヤ「なっ!?聞いたか、SPコースだってよ!」

アイ「えっ!?よぉし、やる気出てきたぁ〜っ☆」


レツヤ「...チョロすぎるだろ」

アイ「うっさい!そんなことより手ぇ動かすよ!仕事!仕事っ!」


レツヤ「調子いいな、まったく... そういえばユウト、どこ行った?」

アイ「あれ、ホントだ。さっきまで一緒だったのに」


ユウト「ん?僕を呼んだかい?」


レツヤ「あ、いた!何やっての?」


ユウト「あぁ、店の手伝いだよ。ご飯ご馳走になるし、せめて少しは手伝おうと思ってね」


ユウキ「ありがとうございます!じゃあ、あれお願いします!」


レツヤ(小声)「なんだ、ユウトも手伝ってくれるのか...じゃあ俺はちょっと休んどこ」


アイ「さっすがユウト!頼りになる〜!...って、何サボろうとしてんのよアンタ!」

レツヤ「えーいいじゃん、ユウトが手伝ってるんだからさ〜...」

アイ「いいわけないでしょ!働く!お昼抜きになっちゃうよ!?」

レツヤ「ひぃぃ、それだけはカンベン〜〜っ!」


ユウト「(笑いながら)ほんと、変わらないな...お前たちは」


N:あの日、願った何気ない幸せな日々。だがその裏で、静かに魔の手は迫りつつあった――


 ◆◇◆◇◆◇


(街外れ)


N:街を一望できる小高い丘の上。静かな風が吹くその場所に、黒い衣を纏った二つの影が立っていた。まるでこの世界には不釣り合いな、異物のように――


ディス「(退屈そうに辺りを見回しながら)…この辺りに“あの御方”の器に相応しい人間がいるって聞いたけど…本当にこんな田舎町に、いるのかしら?」


ペア「いなかったらさ、街を絶望に染めちゃおうよ!ドロドロに溶かして、ぐちゃぐちゃにしてさ!絶対その方が楽しいって〜!」


ディス「(ため息)…またそれ? そんなお遊び、ひとりで勝手にやってなさい、ペア」


ペア「えぇー!?なんでよぉ!ディスも一緒に遊ぼうよぉ〜!」


ディス「(くすっと笑って)私、今日は帰ってからオタノシミの“続きを”しなくちゃいけないの。だから時間、無駄にしたくないのよ。ふふっ…♡」


ペア「(不満げに)なんかいやらしい笑い方してる…!ん?……あ、あっちの道、おもしろそ〜!ねぇねぇ、じゃあ僕先に行ってるから!バイバーイ!」


N:ペアはディスの返事を待たず、まるで風に乗るように軽やかに走り去った。足取りは軽く、だがその背中に宿るのは、破壊を楽しむ者の無邪気な狂気。ディスはペアがいないことに気づくと、しばし空を見上げ、心ここにあらずといった様子で小さくつぶやいた。


ディス「……まったく、少し目を離すとすぐ消える。ほんと、子供みたいなんだから」


N:闇は静かに、確実に街へとにじり寄る。まだ誰も、その存在に気づいていなかった。


 ◆◇◆◇◆◇


N:夕食を終え、食堂の空気はどこか満ち足りた、柔らかな雰囲気に包まれていた。満腹のレツヤとアイは、テーブルにもたれ掛かるように一息ついていた。


レツヤ「ふぅ〜、食った食った。……ごちそうさま」


アイ「あ〜……おいしかったぁ♪ これならあと三杯はいけたかも~」


ユウキ「(ズズンと迫る)こらーっ!食べたら終わりじゃありません!片付け、手伝ってくださ〜い!」


アイ「えぇ〜〜……」


レツヤ「……しょうがねぇ、片付けるか」


アイ「あっ、レツヤ~!ついでに私の分もお願い♡」


レツヤ「……お前なぁ、自分のくらい自分でやれよ」


アイ「けちけちけちけち~!レツヤのけちぃ〜!」


レツヤ「はいはい、わかったよ……」


アイ「やった♡ありがと〜♪」


レツヤ「(ため息混じりに)……利用されてんな、俺……」


(少し間)


レツヤ「……そういえば、ユウトの姿が見えないな」


アイ「あぁ、ユウトなら『ちょっと風に当たってくる』って言って、外に出て行ったわ」


レツヤ「そうか……なんか気になるな。ちょっと探してくるわ」


アイ「えっ!?ちょっと、片付けは!?」


レツヤ「あー悪い、あとは任せたー!」


アイ「こらー!“任せた”じゃないわよ、レツヤー!もーっ!!」


ユウキ「(奥から)就寝時間までには帰ってきてくださいねー!」


レツヤ「へいへい、わかってるって〜」


N:アイの叫び声を背中に受けながら、レツヤは食堂の扉を軽く開け、外の空気へと歩き出した。静かな夜風が彼の頬を撫でる――

彼の心には、なぜか胸の奥がざわつく感覚があった。



 ◆◇◆◇◆◇


 N:一方その頃、ユウトは街外れの山奥――木々に囲まれた静かな広場で、夜風に吹かれながら一人物思いにふけっていた。空には無数の星が瞬き、やがてゆっくりと霧が立ち込め始める。


ユウト「……やっぱり、ここは落ち着くな……」


(間。虫の音が、かすかに響く)


レツヤ「……予想通り、やっぱここにいたか」


ユウト「……レツヤ? どうしたんだ?」


レツヤ「お前の姿が見えなかったから、探しに来たんだよ」


ユウト「……そうか、それはすまないな」


レツヤ「いいって。……それより、やっぱお前ここ好きだよな」


ユウト「あぁ……なんだか、心が静かになる」


(少し間)


レツヤ「なぁ、ユウト……」


ユウト「ん?」


レツヤ「ここで、流れ星に願い事をしたら叶うっていう噂……信じるか?」


ユウト「……さあな。でも……思い出すな、10年前だっけ。ここで一緒に流れ星を見たよな」


レツヤ「あぁ……俺、あの時願い事するの忘れちまって……それから、ずっと引きずってんだよ」


ユウト「ははっ、そうだったな」


レツヤ「そういや、お前はあの時……何を願ったんだ? 叶ったのか?」


ユウト「……どうだろうな。今のところは……叶ってるのかもしれない」


レツヤ「そっか。叶ってんなら、いいじゃねえか」


ユウト「……そう、だな」


(しばし沈黙。霧が濃くなる)


ユウト「……それにしても、霧が……ずいぶん濃くなってきたな」


レツヤ「あぁ……」


ユウト「伝承によれば……」


レツヤ「(被せ気味に)伝説のつるぎ、聖剣に認められし者――伝説の勇者なり! ……だっけか?」


ユウト「そうだな。そして……この霧を払えるのは――」


レツヤ「(勢いよく)伝説の勇者だけだっ!!」


ユウト「(呆れ気味に)……お前、やけにテンション高いな」


レツヤ「だってよ、伝説だぜ!? 勇者だぜ!? うわ~! あこがれるよなぁ~! 勇者!!」


ユウト「……はは、まぁ。確かに。男なら誰でも一度は憧れるよな。勇者、か……」


レツヤ「よーし! 俺も明日から、また気合い入れて修行するぞ! いつか聖剣に認められるようにな!」


ユウト「ふふ、ほんとにお前は単純だな……でも、そういうところが……お前らしい」


レツヤ「それが俺のいいとこだろ?」


ユウト「……うん。いい性格してるよ。たとえ努力したって、報われるとは限らないのに」


レツヤ「まぁな。でもさ、何もしないよりは、マシだろ? もしかしたら……本当に聖剣に選ばれて、俺が伝説の勇者に――ってことも、あるかもだし!」


ユウト「……あはは、それはないな」


レツヤ「なんでだよ! 0ってわけじゃねえだろ!」


ユウト「確かに、0ではないけど……でもやっぱり、お前が勇者ってのは……ないな!」


レツヤ「ちくしょう、今に見てろよ! 絶対目にモノ見せてやるからな!」


ユウト「ああ、期待してるよ……」


N:冗談を交わしながらも、胸の奥にそれぞれの想いを抱える二人。

――この穏やかな時間が、永遠に続くと信じていた。

だが、その静けさの裏で、運命は確かに動き始めていた。


間 場面転換


N:二人がのんびりと後片付けをしている頃――静かだった店の外に、じわじわと冷たい影が迫っていた。

夜の帳が降りると同時に、空気の温度が、ほんの少し下がる。


アイ「ふぅ〜、後片付け終了〜!……って、ちょっと!? 結局ほとんど私がやってるじゃん!」

アイ「あーもう、レツヤのやつ、後でどつき回してやるんだから!」


ユウキ「あはは……まぁまぁ、ほどほどにしてくださいね」


アイ「だーめ!今回は本当にビシッと言ってやるんだから!“後でやる”って言って、全然やんないんだもん!」


ユウキ「でも……アイさんも、洗濯物の取り込み、いつも“後でやる”って言って、結局レツヤさんに――」


アイ「(ギクッとする)え、あ……それはそれ!これはこれ!」

アイ「とにかく!言い聞かせないと、ダメなんだってば!」


ユウキ「まぁ……二人で分担してくれるなら、僕としてはどっちがやってもいいんですけどね」


アイ「だめだめ!甘やかし禁止!あたしがビシッと、ね!」


???「……こんばんは、お嬢さんたち」


アイ「へっ?」


ディス「青髪の少年……ここにいないかしら?」


ユウキ「っ!? あなた……どこから……」


(突然現れた女――ディス。その場の空気が、一気に凍りつく)


ディス「あらあら、そんなに怖がらなくてもいいじゃない? ふふ……私、興味ないものには、手を出さないわよ?」


アイ(小声で)「……だれ、この人?」


ディス「私の事かしら? ふふ、ただの旅の者よ」


ユウキ「どうしてよそ者がここにいる!貴方はどうやってこの街に入ってきたんですか!?この街は、聖なる結界に守られています。外から来る者は、加護を受けなければ入れないはず……なのに、あなたは……」


ディス「あらあら、固いこと言うのね」

ディス「結界? あぁ、あのペラペラのカーテンのことかしら? 風が吹けば破れそうな」


ユウキ(息をのむ)「な……!? あの結界を、そんな……」


ディス「さて、青髪の少年は――どこかしら?」


ユウキ(警戒しつつ)「……答える義務はありません。どうか、お引き取りを」


ディス(微笑みながら、片手を上げ)「あら、まだわからないのかしら?」

ディス「――この金髪の、可愛い女の子がどうなってもいいの?」


アイ「……っ、え? な、なに……?」


(突然、空気が張り詰める。ディスの掌に漆黒の瘴気が集まりはじめる)


ユウキ(唇を噛み)「わ、わかりました……話します。だから……彼女に、手を出さないでください……」


ディス「ふふ、そうそう。物分かりのいい子は好きよ?」

ディス「あなたの死は、なるべく苦しまないようにしてあげる……約束するわ♡」


ユウキ(震えながら)「……彼は、外に出ています。気分転換にと、出ていきました」


ディス「ふぅん……で、どこに?」


ユウキ「わかりません。行き先は、言わずに……」


ディス「……使えないわね」


ユウキ「あなたの目的は、何なんですか?」


ディス(くすくす笑い)「さぁ、なんでしょうね? それは――ひ・み・つ♡」


ユウキ(奥歯を噛み締める)「……っ」


ディス「まぁ、無駄足にはなったけど……情報は得られたし。今日はこれくらいにしてあげる」

ディス「感謝しなさいね。命、助かったんだから……♡」


N:ディスは、闇に溶けるようにして姿を消していった。場に残ったのは、氷のように冷たい空気と、二人の心に深く突き刺さる恐怖だけ。


ユウキ「……っ」


アイ(震えながら)「ふぇ……こわかったよぉ……」


ユウキ「大丈夫、もう行った……」

ユウキ(拳を握り)「……でも、何もできなかった」


アイ「……ユウトたち、大丈夫かな……」


ユウキ「心配ですね……っ、アイさん!?」


アイ(すでに駆け出しながら)「私、探してくる! あんなヤツに見つかる前に!!」


ユウキ「待って、一人じゃ危ない! せめて――」


ユウキ「(呆然と)……もう、いないし……」

ユウキ「(小声で)行くなら、せめて……無事に、帰ってきてくださいよ……」 



N:一方そのころ、食堂で起きた異変など知る由もない彼らは、いつものように他愛ない思い出話に花を咲かせていたのだった。


ユウト「……と、いうわけさ」


レツヤ「そうなのか! やっぱお前はすごいな!」


ユウト:「そんなことないよ、僕だってまだまだ力不足だ」


レツヤ:「そっか…、強くなりたいよな、大切なものを守れるくらいさ」


ユウト:「あぁ…」



レツヤ:「そういえば、ユウトは今回何しに戻ってきたんだ?魔法都市の方で、仕事が見つかったんだろ?」


ユウト:「あぁ、仕事の件なら断ってきたよ」


レツヤ:「えぇ!断った!?」


ユウト: 「うん…それで、ここに戻ってきた理由だったか?それは―――ここにはもう、帰ってくる気はなかった。でも、気づいたんだ。自分の中の一番大切なものに…」


レツヤ:「そうなのか、まぁ!ここに残るってんなら、これからもよろしくな!ユウト!」


ユウト:(クスッと微笑んで)「相変わらずだな、君は」


レツヤ「なんだよ、茶化すなよ~!ってかやっべ!早く戻らないと、またアイにキィキィ文句言われる!」


ユウト「フフフ……あぁ、そうだな。そろそろ――」


???「やっと、見つけた……」


ユウト「っ……!?」


N:ユウトは、かすかに揺れた茂みの奥で、じっとこちらを見ている“それ”の気配を感じ取った。


レツヤ「どうしたんだ?」


ユウト「……いや、なんでもない」


レツヤ「ああ、そうか……じゃあ、店に戻ろうぜ?」


ユウト「……いや、気が変わった。僕は、もう少しだけここにいるよ」


レツヤ「え?―――そっか、わかった。んじゃ、俺先に戻ってるぞ!」


ユウト「せっかく来てくれたのにすまないね」


レツヤ「気にすんなって。日が変わるまでには戻るんだぞ!」


N:そう言って、レツヤは気楽な調子で手を振りながら、街のほうへと走り出した。


ユウト(小声)「……ごめんな、レツヤ」


N:ユウトは、再び茂みに目をやる。その奥――“ペア”の存在は、すでにそこに立っていた。まるで最初からそこにいたかのように、ひとつの影が、静かに笑っていた。



レツヤ「あいつ、相変わらず一人が好きだよな~」


ディス「ふふ、それはそれは・・・都合がいいじゃない?ねぇ、坊や」


N: 突然、茂みの奥から動きがあった。ひときわ不穏な気配が漂い、視線がその先に引き寄せられる。フードを深くかぶった女が現れ、そのフードをゆっくりと外すと、妖艶な笑みを浮かべながら、低く響く声で語りかけてきた。


レツヤ「なんだお前、誰だ」


ディス「んふふ、私が誰だって?名乗るほどのものではないけどぉ~ ここで死んじゃう坊やには話してもいいかも…しれないわね♡」


レツヤ「死ぬ?何物騒なこと言ってんだよ」


ディス「(妖艶に)フフフ、ボウヤ…一回ぃ死んでみない?」


N: 目が交わる瞬間、その妖艶な瞳は深く、鋭くレツヤの心を引き寄せる。まるで、視線が肉体をも貫通するかのように、レツヤの思考すらも侵食していく。その瞬間、何もかもが止まったかのような錯覚に陥る。緊迫した状況で、ほんの一瞬の隙間に全てが決まる。だが、レツヤは意識を奮い立たせ、何とかその誘惑を振り切る。


目をそらし、耳を澄ます。だが気づいた時には女の姿は無く、周囲には闇が静かに広がっていた。


レツヤ「っな!どこ行きやがった!」


ディス「フフフ、ここよ坊や」


N: 突然、声が響いた。その場所にいないはずの女の声に、レツヤは動揺を隠せない。姿を消した彼女の気配を必死に探すが、どうすればいいのか分からず、ただ闇雲に視線を泳がせるだけだ。女はまるで闇そのものに溶け込むように、姿を消してしまっていた。


そう、レツヤはまだその「技」に対する知識を持っていなかったのだ。静寂の中に、ふとした音が響く――わずかな刃の音。レツヤはそれを、聞き逃さなかった。


レツヤ「っとあぶね!いきなり切りつけてくるなんて、お姉さんもしかして危ない人?」


ディス「へぇ、あれをよけるなんてなかなかやるわね。でも、次は避けられるかしら?」


レツヤ「ふん、やるってんなら容赦しないぜ?相手が女だろうとな!」


N: 両者は間合いを取りながら、武器を構える。しかし、レツヤの心の中には焦りが渦巻いていた。


レツヤ「さっきの攻撃、斬りつける瞬間の空を切る音を頼りに何とか避けれたが、あれを何回もされたら、こっちが体力と集中力を持たねぇ!ここは、俺が使える最高の技で一気に勝負を決める!」


N: レツヤは剣を強く握りしめ、呪文の詠唱を始める。


レツヤ「詠唱」

Call《コール》 elementalspirit《エレメンタルスピリット》 Earth《アース》

Connect and release《コネクトアンドリリース》

―――Sword enhance《ソードエンハンス》


ディス「あら、もっと強い技を使っても平気よ?お姉さんともっと楽しみましょ?」


レツヤ「このアマ!舐めやがって・・・行くぞ!ハァアアア!!!衝撃波ショックウェーブ!」


ディス「あらあら、こんな子供騙しで私が捕まると思った?まだまだね坊や」


レツヤ「ふん、まだまだなのはお前のほうだぜ?そうやって避けることは読んでるんだよ!喰らい尽くせ!月蝕剣イクリプスソード!!!」


ディス「(よろける)ううん・・・フフ、案外やるじゃない」


レツヤ「余裕な顔してられるのも今のうちだぜ、次でトドメだ!はああああああああああああ!!!」


ディス「ウィスパー)じゃあ今回は少しだけ、私の力を見せてあげる」


レツヤ「何をぶつぶつと言ってやがる!」


N: 相手の行動を読み、得意のイクリプスソードを決めたレツヤ。勢いよく攻撃を畳みかけようとしたその瞬間、突然、ディスの目が紅く光り輝いた。すると、周囲の空気が一変し、場の温度が急激に下がり始める――まるで氷の世界に包まれたかのように、全てが凍り付く。


ディス「一度入ったら抜け出せない冷たい世界、迷い込んだら最後、ゆっくりじわじわとアナタを私の色で染め上げて、気づいた時には私のことしか考えられないようにしてあげる。安心して?悪いようにはしないから、たっくさん可愛がってあ・げ・る♡」


N:女が口を開くと、彼女を中心に少しづつ闇が広がっていく。レツヤはあっという間にその闇に飲み込まれ身動きを封じられた。


レツヤ「なっ!動けねぇ・・・」


ディス「まさか、逃げようなんて考えてないわよね?怖がらなくても大丈夫よ、さぁおいで?アナタの居場所はこぉこ!」


レツヤ「っく・・・なんだこれは・・・何かの呪文詠唱か!?」


N: 女はゆっくりとレツヤに近づき、その耳元で甘く囁く。


ディス「私から逃げられると思った?フフ、残念でした♡」


N: レツヤは全身が硬直し、身動き一つ取れない。未知の感覚に圧倒され、彼の意識は揺れ動く。しかし、彼は何とか冷静を保とうとし、必死に対応策を模索するも、彼女の魔力に絡め取られ、ますます動けなくなっていった。ディスの言葉はただの言葉にすぎない。魔力が彼の五感を狂わせ、精神をも侵食していく。 女はレツヤの完全な動きを封じ込めた後、静かに彼を捕らえた。今や彼は完全に彼女の支配する領域に足を踏み入れていた。


ディス「隻影伏魔殿シェードテリトリー、フフ、捕まえた♡」


レツヤ「グハッ・・・クソ・・・が・・・」


N: 無力化されたレツヤは、抵抗する力すら残されておらず、ディスの掌の上で無惨に動きを封じられていく。彼女の刃が、冷徹にレツヤの身体に突き刺さった。


ディス「久々に楽しめたわ、ありがとね坊や」


ディス「ん〜 でも万が一この坊やが力をつけでもしたら厄介だわね。おまじないがてら少し呪いをおきましょうか」


レツヤ「なんだ...やめ...ろ....」


N: レツヤの言葉は力なく、空気に消えた。ディスの魔力に包まれ、彼はもう反撃の意志を持つことすらできなかった。



N: ディスは冷たく微笑みながら、レツヤの意識が遠のいたのを確認すると、満足そうにその場を歩き始める。彼女の目には、次の段階へと進む準備が整ったことを示す冷徹な光が宿っていた。


ディス「ふふふ、面白いこと思いついちゃったぁ♡ って、そういえばペアはどうしているかしら?蝙蝠こいつを使って作戦内容だけでも伝えておかないといけないわね・・・ふふふ」


N: 蝙蝠は空を飛び、ディスが指を振るとその姿は闇の中へと消えていった。その瞬間、ディスは微かに首を傾げ、少しだけレツヤの体を見下ろしながら呟いた。


ディス「さて、連絡が遅れたお詫びにペアにちょっとしたサプライズを準備しないといけないわね。ふふ、これがどう転ぶか、全く予想がつかないわ…。」


N:静寂が戻った森の中、血の匂いに混じって、ほのかな甘い香りが漂っていた。ディスはレツヤを見下ろしながら、静かに、だが愉しげに、再び口元を歪ませる。


N:一方その頃――


ディスがレツヤの頬に残酷な慈しみを注ぎながら、その運命を弄んでいたその瞬間。舞台の裏では、また別の運命の糸が静かに動き出していた。


かつて誰かが「この地の空気は、静かな戦の気配を孕んでいる」と評したように、山奥の広場を取り囲む森には、肌を撫でるような緊張感が漂っていた。風は止まり、鳥すら声を潜めている。


その森の一角、木々の影に紛れるようにして、ペアは佇んでいた。


ペア「(興奮混じりに)佇まいから感じられるあのオーラ…あの気配は只者じゃない…澄んだ綺麗な海のような雄大さを感じ取れる、深い銀と青の髪…。あれは……紛れもなく、“あのお方”の器だ!」


N:言葉に宿るのは、敬意とも畏怖ともつかぬ奇妙な執着。その目は、何か神聖なものに触れたかのように、かすかに震えていた。


ユウト「ん?誰だ!?」


N:ペアの不穏な独り言に気づいたユウトは、険しい表情で警戒する。


ペア「(慌てて)あぁ、そうだ!ディスに連絡しないと…」


ユウト「(鋭く)そこか!何者だ、出てこい!」


N:瞬間、空気がわずかに動いた。ユウトは即座に異変を察知し、視線を茂みの方へと向ける。

そこには、静かに――まるで現実の影から抜け出してきたかのように、一人の謎めいた少女が姿を現した。


その歩みはゆっくりと、しかし確かな存在感をもっていた。口元には不思議な微笑を浮かべ、小さく何かを呟いている。それは独白のようであり、誰かへの問いかけのようでもあった。


ペア「あっ、見つかっちゃった!ディスに怒られちゃうかな…まぁ、いっか!」


ユウト「名を名乗れ!なぜそこに隠れていた?」


ペア「うーん、どうしようかなぁ…こういう時、ディスならどうするんだろう…」


ユウト「何をぶつぶつ言っているんだ!?人の話を聞いているのか!」


ペア「え?あぁ、聞いてないよ!」


ユウト「なんだお前、ふざけているのか!」


ペア「あはは!僕はいつもふざけてるよ!」


ユウト「何っ!?こいつ…」


N: ペアはユウトの言葉に反応せず、ペアは嬉しそうに笑っている。自分のペースを崩さず、ユウトの言葉を無視するように歩みを進めるその姿に、ユウトはますます怒りを募らせる。


ペア「ただね、話は聞いてないけど、1つだけ教えてあげる!」


ユウト:(鋭い目つき)「………」


ペア「僕の名前はペア!巷では“絶望の二人組”って呼ばれてるんだ!はは、すごいでしょ!?」


ユウト「なんだと…!お前が、闇の組織、絶望の二人組の一人、残忍のペア…」


ペア「そうだよ!名前を聞いただけで絶望しちゃったかな?あは!」


ユウト「M)絶望の二人組…闇の組織でもかなり上位の二人組と聞いたことがある。」


ユウト「M)なんでも、人の心を弄び、じわじわ痛ぶり、絶望を頭に刻み込んでくる残虐のディス…」


ユウト「M)命乞いをする人に一縷の望みを見せ、そこから一気に絶望に叩き落とす残忍のペア…」


ユウト「M)この二人組は、今まで多くの人々に“絶望”という二文字を刻みつけてきたらしい…」


ユウト「僕に勝ち目はあるのか…?」


ペア「ねぇ!君さ、僕たちについてきてよ!あのお方の器になってほしいんだ!」


ユウト「あのお方?器?なんの話をしているんだ!」


ペア「あーあ、説明ってめんどくさい〜!とりあえず、ついてきてよ!」


ユウト「何を勝手なことを!ついて行くわけないだろ!」


ペア「そっかぁ〜…じゃあ、コロスね!」


N: ユウトの返事を聞いたペアは、即座に戦闘モードに切り替え、殺気をむき出しにしながら構えを取る。その瞬間、ペアの両腕に装着されていた腕輪から、鋭く禍々しい鉤爪が現れた。


ユウト「M)あれは、アイアンクロー!?この世界であれを使いこなせるのは、指で数えられるほどしかいないと言われるほど扱いが難しい武器…くっ、くる!」


ペア「あはははは!あはははは!死んじゃえ!死んじゃえ!!!」


N: ペアの鉤爪が空を切り裂く音が響く。ユウトはなんとかその攻撃を受け流しながらも、ペアの激しい猛攻を受け続け、反撃の機会を探る暇もなかった。


ユウト「っく…このままでは……」


ペア「君、よっわーい!あは!…ん?ディスから連絡だ、もうーこれから面白くなるところだったのに…」


N: ペアが一時的に攻撃を止めると、ユウトはすぐに体勢を立て直し、再びペアを見つめる。その周りには無数の蝙蝠が飛び交っていた。


ユウト「息切れ)なんていう強さだ…それになんだあの蝙蝠は…」


ペア「へぇ、面白そう!それでいいよってディスに伝えてね!行ってらっしゃ〜い!」


N: ペアが手を振ると、蝙蝠たちは闇の中へ一斉に消えていった。

 


 ペア「さて!続きやろ、お兄さん!」


ユウト「っく、僕だって伊達に生きてきたわけじゃない!見せてやる、僕の本当の実力を!」


ペア「にひひ!やる気だね!そうこなくっちゃ!」


ユウト「M)あまり魔法は使わないほうがいいのだが、やむを得ないだろう」


(↓呪文詠唱↓)


ユウト「Call《コール》 elemental spirit《エレメンタルスピリット》 Earth《アース》

Connect and release《コネクトアンドリリース》

Sword enhance《ソードエンハンス》」


N: ユウトが呪文を唱え終わると、ユウトの剣が光を放ち、周囲にオーラを纏い始めた。


ペア「へぇ、魔法も使えるんだ!魔法を使えて剣の才能もある…さすがあのお方に相応しい器だ!」


ペア「じゃあ僕も…」


N: ユウトの魔法を見て、ペアは即座に魔法で対抗しようと詠唱を始める。この世界では、戦いにおいて闘気(オーラ)と魔法を使い分けるが、闘気は魔法には基本的に勝てないため、魔法には魔法で対抗するか、加護を使ってガードするしかない。

抜かりのないペアはしっかりと相手の動きを見て状況を判断し、的確な判断を下していた。


(↓呪文詠唱↓)


ペア「Call《コール》 elemental spirit《エレメンタルスピリット》 Wind《ウィンド》

connect and release__《コネクトアンドリリース__》」


ユウト「させない!」


ペア「っと危ないなぁ、全く!」


N: 先ほどの猛攻に力量の差を感じたユウトは、魔法を使われたら勝ち目がないと考え、詠唱中のペアに斬りかかる。

咄嗟の判断で詠唱を中断し、回避したペアだったが、その動きで体勢を崩してしまう。


ユウト「このまま畳み掛けてやる!」


ペア「あわわわわわわ…」


N: 勢いそのままにユウトはスキルを発動する。

剣を大きく振りかざし、詠唱を開始した!


ユウト「Sword enhance《ソードエンハンス》 skill 《スキル》limit Break《リミットブレイク》」


N: ユウトの詠唱に応えるように、彼の剣が七色に輝き始める。


ペア「ちょっと…これ、まずくない…?」


ユウト「煌めけ光の剣よ!Shining 《シャイニング》 Braid《ブレード》」


ペア「このまじゃ…!」


ユウト「もう逃げられないぞ!くらえええええええええええええええ!!!」


N: ユウトの剣は、思わず目を覆いたくなるほど激しい閃光を放ちながら辺りを照らし出した。

そして、その光り輝く剣を振りかざし、渾身の一振りを放った!すると、その剣身からまるで光の矢のような衝撃波がペアに襲いかかり、体勢を崩しているペアを直撃する。全身全霊の一撃は見事に命中し、ペアは体勢を立て直すのをあきらめ間一髪の所で守りの構えをとったが、その威力は尋常なモノではなく、ものすごい勢いで吹き飛ばされ、轟音と共に一直線に飛んでいき、勢いをそのまま大木にぶち当たった。


ペア「っかは…」


N: そのまま力なく木の根元に力なく座り込んだペアは、そのままピクリとも動かなくなった。


ユウト「息切れ)やった…のか?」


N: しかし、ユウトはまだ気づいていなかった…

今、戦っているペアが、なぜ“絶望の二人組”として万人に恐れられているのかを。


ユウト「息切れ)まずは、一人だ...もうピクリとも動かないが、念には念を、しっかりとトドメを刺しておこう...」


N: ユウトが剣を振り下ろそうとしたその瞬間、背後から冷徹な声が響く。


ディス「そこまでよ」


N: 突如として現れた声に、ユウトはその場で急いで振り向いた。

目に飛び込んできたのは、黒装束に身を包んだ怪しい女性の姿だった。

その存在感は、まるで周囲の空気を変えてしまったかのように重く、冷徹で、異様だった。


ユウト「誰だっ!?」


ディス「坊やの命が惜しかったら、武器を捨てなさい」


N: 女性の言葉と同時に、何かがユウトの前に投げ出された。

それはボロボロになったレツヤの姿だった。

血に染まり、息も荒いレツヤが、命の危機を感じさせるように震えながらユウトの前に転がり落ちる。


レツヤ「すまん...ユウ....ト...俺.........勝てな...かった...みたいだ......っがは、ごほごほ」


ユウト「レツヤ!?」


N: その瞬間、ユウトの胸を突き刺すような衝撃が走った。

倒れていたレツヤを見つめるその目には、怒りと不安、そして深い悲しみが交錯していた。


ディス「この坊や、すっごく強かったわ!手を抜いたら、私がやられていたかも知れないわね...」


N: ディスの言葉は、まるで何の心配もなく、遊びのように響いた。

その笑みには冷酷さと楽しさが入り混じり、ユウトの心を凍らせる。


ユウト「お前、レツヤに何をした!?」


ディス「何って、遊んであげただけよ?ちょっと楽しくなっちゃって、やり過ぎちゃったけど...ふふふ」


N: その笑い声は、冷たく響き渡り、ユウトの心を切り裂くようだった。

ディスの楽しげな言葉と、レツヤの苦しむ姿が絡み合い、ユウトの中で怒りと絶望が渦を巻く。

怒りが湧き上がると同時に、冷徹な現実が彼を包み込んでいった。彼の無力さ、仲間を守れなかった自分への痛切な悔恨。


ユウト「っく...」


N: 言葉にならない思いが、ユウトの喉元に詰まり、震える手が無意識に剣の柄を強く握りしめる。

その手のひらに伝わる熱さが、彼の決意をさらに強める。だが、その手は震えていた。


ペア「ディス...」


ディス「あら?そこに座り込んでいるのはペアかしら?随分と酷い有様じゃない」


ペア「う、うるさい...」


ユウト「1人は倒した!あとはお前だけだ!」


ディス「貴方、まだ気づいてないの?かわいそうね...」


N: その言葉と共に、ディスは冷ややかな足取りで床に転がったレツヤへと近づく。

そして、無慈悲にその身を踏みつける。

レツヤの口からは痛みに満ちた叫びが上がり、ユウトの胸に突き刺さる。


レツヤ「ぐあああああ」


ユウト「やめろ!こっちだって人質はいるんだぞ!」


N: ユウトは焦りながらも、ペアを人質に取ろうとする。しかし、その直後、ペアは何事もなかったかのように立ち上がると、無邪気な顔でユウトを見つめる。


ペア「ったた、痛かったなぁ...ん?どうしたのかな?」


ユウト「っな?お前は、さっき僕がーー」


ペア「あれ?あんな攻撃で僕が倒せると思っていたの?あはは!君の頭の中は、お花畑なんだね!」


ユウト「なに...僕の攻撃は、全く効いていない...?」


ディス「ようやく、自分の置かれた状況を理解できたようね」


ユウト「たしかに、直撃していたはず...なぜだ...?」


ペア「プププ、特別に教えてあげるよ!...あの攻撃は蚊に刺された程度だったよ、大袈裟に吹き飛んでみたけど...どう?迫真の演技だったでしょ!...君は、弱いんだよ?あは、何も守れない無能なのさ!君のせいでお友達はボロボロになってる...かわいそうなお友達!君がもっと強ければ、お友達はこんな思いしなくてもよかったのに...あーあ、痛そうだなぁ...あは、あはは...あはははっはははははは!」


N: ペアの言葉は、徐々にユウトの心を深く抉り、冷徹に響き渡る。

その声には悪意と楽しみが混ざり、ユウトの胸に冷や汗がにじみ始めた。

そして、ペアの笑い声が無情に響き渡り、ユウトは自らの無力さを痛感せざるを得なかった。



ユウト「あ...ああ...頼む...もう...やめてくれ.......」


N: 目の前には幼馴染の親友がボロボロになって倒れている。自分にはなにもできなかった。力不足だった。絶望するには、十分すぎる出来事だった。少しずつ目の前が暗くなり、胸が締め付けられる。

これ以上何が起こっても、きっと何も感じない程度には、感覚が麻痺していただろうか。


ユウト「終わった...」


N: 思わず口から溢れていた。何も考えられない。

全身は脱力し力が入らない。


ユウト(心の中で)「3人で穏やかな日々を...」


N: 思い出すのは、まだあの時の笑顔だけ。いつか流れ星に願ったことは、叶うどころか目の前で砕け散っていった。


ユウト(心の中で)「もう、何もいらない。」


N: 自分の中で確信が生まれた。最初からわかっていたじゃないか。束の間の幸せに浮かれて、目の前が見えていなかったんだ。

望んじゃいけなかったんだ。


ユウト(心の中で)「もう終わりにしよう。」


N: 世界の音が静まる。胸の中に広がるのは、冷徹な空虚感。心の中のすべての声が消え、ただ静けさだけが支配する。


ユウト(心の中で)「さようなら、優しい世界だったよ…」


N:ユウトは深い絶望に包まれ、その心が沈み込んでいった。目の前の無惨な現実に、もう何も感じられなくなった。彼の瞳には、もはや希望の光は一筋も残っていなかった。


その様子を見て、ペアは楽しそうに口を開く。


ペア「いいね、いいね!その目、その目だよ!僕が見たかったのはその目!絶望して、目の前が真っ暗になって、何も考えられなくなる…って顔!最高じゃないか!あはは、あはははは!」


N:ペアはユウトの絶望を見て、まるで予想通りの反応を見たかのように、楽しげに笑っていた。


ディス「あーあ、せっかく痛ぶり甲斐のありそうな子だったのに...」


ペア「いいじゃないか!絶望しすぎて、魂抜けちゃってるな...て感じ!」


ディス「そうね、器があればそれでいいし今日の仕事はもう終わりね」


ペア「あぁ、楽しかった!」


ディス「もうこの坊やはいらないわね、ここに捨てていきましょ」


レツヤ「っく...そ.....が....」


ディス「誰かに拾ってもらえるといいわね、坊や」


レツヤ「ユ...ウ...」


N: 薄れゆく意識の中、かすかに消え入りそうな声でユウトの名前を呼ぶ。

自分のせいでユウトが絶望している。目の前で繰り広げられるその惨状をただ見つめることしかできない。必死に手を伸ばし、想いを伝えようとするが、その声は夜の静寂に紛れ、ほんのかすかな風に乗るように消え入り、ユウトに届くことなく消え去ってしまう。まるでゴミのように捨てられ、身動きも取れず、血だらけで無惨に地面に横たわる自分の姿に、無力さと惨めさを感じ、ただ呪い、そして願った。


レツヤ「(心の中で)もし俺が無能じゃなかったら、足を引っ張らなかったら、ユウトと肩を並べるくらい強かったら、こんなことにはならなかったのに…俺は...聖剣に認められる程、強くなりたい...強くなりたい...強くなりたい…!!!」


N:レツヤは心の中で強く願った。絶望とともに、自分の無力さを痛感しながらも、どこかでその悔しさを力に変えようとしていた。


ペア「さて、帰ろー!」


ユウト「ああ...あああああ..............」


ディス「うるさいわね!ほら、行くわよ!」


N:ユウトは無力なままで、何もできずにその場を引き離されていった。山奥の広場に一人取り残されたレツヤは、すでにボロボロで動ける状態ではなかった。そんな中、一足遅れてアイが広場にやってきた。


アイ「二人とも、どこへ行ったのかしら…って、言っても大方検討はついてるんだけどね~!どうせこのあたりで二人して話し込んでるんでしょ~…って…なにこれ、酷い…」


N:アイが広場に足を踏み入れたとき、目の前には血だまりと荒れ果てた場所が広がっていた。恐る恐るその場を見渡すと、彼女の目に飛び込んできたのは、血に染まったレツヤの姿だった。


アイ「レツヤ?レツヤ!しっかりして!レツヤ!」


N:アイは必死になってレツヤを呼びかける。しかし、レツヤはすでに意識を失っていた。彼女の言葉は空しく響き、何も返ってこなかった。


アイ「お願い、死なないで!目を開けてよ!死なないで!!!・・・いやだよ、死なないで...目を開けて私を安心させてよ!!!(間)なんでもいい!私に彼を守る力をください…」


N:アイは心からの願いを込めて必死に叫びながら、涙を流し続けた。それは、自分の無力さに打ちひしがれながらも、心の底からの叫びだった。


アイ「もう1人にしないでよぉ...うっうぅ...」


N:アイはその後、涙が枯れるまで泣きじゃくった。彼女の心はその時、レツヤの命を助けたいという一心で満ちていた。


N:山奥の広場、ここは願いが形になる聖域として知られている場所。流れ星が降る夜に、強い想いを込めて願い事をすると、それが形になり、願いが叶うと言われている。この夜、広場の空には流れ星が降っていたという。

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勇者達と流れ星 鳴里 @ruhu0103

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