第42話(空中散歩)

ヤコに続いてアキもバリアを抉じ開けようとする。リュウはバリアを解いた。もうタニア国王の命を狙う者は戦闘不能だ。ヤコとアキは、リュウに抱き付く。するとやはり、タニア国王の機嫌が悪くなる。


「我が夫に気安く触れるな」

「二人とも離れてくれ。地球とアナザーシープ、双方が平和になるにはこれしかないんだ」

「リュウ」

「リュウ君」

「じいちゃんに伝えてくれ。もうアナザーシープにゴミを棄てないなら全面戦争は回避出来ると」


ヤコとアキの心境は複雑だ。地球のためか愛する人のためか。ヤコは、リュウとタニア国王に真実を言う。


「私は内閣情報調査室のエージェントなの。ずっとリュウを監視していた。こういう時のために」

「ヤコ、何を言ってるの?」

「私はヤコじゃない。コードネーム、イーグルワン。日本政府の者よ」

「じゃあ政府に言ってくれ。アナザーシープにゴミを棄てないでくれと」

「うん。言うだけ言ってみる」


タニア国王が警告する。


「止められなければ全面戦争だ。我とて軍部を完全掌握している訳ではない。指示を無視して地球に攻撃を仕掛ける者もいるだろう」


ボン。ヤコは地球に戻った。そして、急いでマスターに電話を掛ける。マスターはすぐに出てヤコが状況説明をする。これ以上アナザーシープにゴミを棄てないでくれと。しかし、マスターは首を縦に振らない。日本政府は裏で世界中から核廃棄物を含め、ゴミを売り取ってアナザーシープに棄てる。それで国の借金返済をしていた。日本政府は今更後には引けなくなっていた。


ボン。アキも目覚めて地球に帰って来た。アキはそのままリュウの部屋を出て行った。


鬼軍曹達も地球に帰って来たが、足と尻尾は犬のまま。もう恥ずかしくて外を歩けない。二足歩行も出来ない。鬼軍曹達は再びアナザーシープへ行って治すしかなかった。すぐには行けない。なぜなら確りと睡眠を取ってしまって眼がギンギンだからだ。


ーータニア国王は気晴らしにリュウを連れて展望台へ行く。展望デッキに上がり、二人で景色を観る。空は明るいのに星が煌めいている。眼下には街が一望出来る。勿論、ゴミの山も。


「タニアは空飛べる?」

「無理! 高等魔法よ」


リュウはタニア国王を抱き寄せた。


「足を俺の爪先に乗せて」

「まさか飛ぶつもりか?」

「そうだよ」


タニア国王は言われた通りにリュウの足の上に足を乗せる。リュウはタニア国王を抱き寄せたまま、フワリと空中に浮く。


「怖いっ」

「大丈夫、大丈夫」

「その若さでこんな高等魔法を」

「このまま街の視察へ行こうよ」

「落とすなよ?」

「勿論」

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