第30話(★子作りの基本・2)

ーーアキはソファーから起き上がり、リュウの様子を見に行く。ヤコも起きていたが、リュウは寝たままだ。


「リュウが起きない。何があったの?」

「リュウ君はアナザーシープの住人になったとよ。国王さんの婿になったと」

「どういう事よ? もう起きないの?」

「多分」

「リュウ! リュウ!」


ヤコはリュウの体を揺さぶる。アキはそれを制止した。


「もう帰って来ないと。でも全面戦争は回避出来たとよ」


アキはヤコに王座の間で起きた事を全て喋った。そして、アキは涙を流しながら自分の部屋に帰った。それを確認したヤコは上の者に電話を掛ける。


「マスター、おはようございます」

『おはよう、イーグルワン。事態が動いたか?』

「ええ、悪い方向に」

『何があった?』

「対象が一時的に使えなくなりました。それとアナザーシープは地球に向かって二酸化炭素を撒いてます」

『やはり戦争をせねばな』

「それについては少々お待ちを」

『何か策があるのか?』

「対象がアナザーシープの国王と結婚するとの事です。操ればこちらにとって都合の良い事に転ぶかもしれません」

『分かった。イーグルワンは一旦、支部に戻り、詳しい報告を』

「了解しました」


ピッ。電話は切れた。


ーーヤコは、さる組織に所属するエージェントだ。リュウに気に入られるように髪型、ファッション、趣味を偽り、成人式で接触した。キャバ嬢は一般人に溶け込むための仮の姿だ。しかし、リュウと一緒に居る事で次第に葛藤が生まれた。だから、三角関係の修羅場になった時も演技で包丁を持ってみたものの、その先はノープランだった。


「リュウ…………戻って来てよ」


ヤコはリュウの部屋を後にして、組織の支部に行った。


ーーその頃、アナザーシープではリュウと国王が城の1階にある厨房で餃子パン作りをしていた。国王は呪いにより、子供の姿だから台の上に立つ。


「餃子作りって結構キツいね」

「リュウはなかなか筋が良いぞ。餃子は餡と皮が命だ。それをパンで包む贅沢。立場が違っていたら、我はパン屋の看板娘だ」

「国王の名前はなんて言うんだ?」

「タニアよ。タニア・アナザーシープ国王」

「タニアか、良い名前だ。妹はゼニア姫だよな」

「それがどうした?」

「いや、何でもない。ただの世間話だ」


タニア国王はジーっとリュウの顔を覗く。リュウは照れて目を逸らす。


「逃げようなんて、良からぬ事を考えてないだろうな?」

「腹くくってる」


その時だった。ガタン。タニア国王が台から足を滑らして転びそうになる。それをリュウは咄嗟の判断で手を掴み、事なきを得た。


「あ、ありがと」

「可愛いよ」

「バカ」


今度はタニア国王が照れた。

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