第5話 喋る動物達の村

二人はウィーネ村へ向けて足を進める。


「なぁ、アランだっけ、君はなぜ言葉を話せるんだ?」

翔平がアランに聞く。


「それが普通でしょ?君たちだって言葉を話してるじゃないか。それと同じだよ。」


この犬が言うには

どうやらここでは犬が言葉を話すのは普通のことらしい。



ウィーネという村の近くまでくると、村を阻むように生える、巨大な大木があった。


「大きな木だなぁ。」

2人は思わず声が漏れた。


「この大木は聖なる大木ギアランテといって僕たちの村をいろんなものから守ってくれてるんだよ。」


アランの言う通り、このデカさならどんな雨風でもびくともしないだろう。


大木を過ぎると木々が遮っていた視界がはっきりと見えてくる。


そこに見えたのはたしかに村である。

綺麗に造られた木造の家が整列し、整備された畑が広がっている。


しかし、村を歩いているのはたくさんの動物たちである。

ウシ、ウサギ、シカ、サル、ウマ、たくさんの動物たちが一つの村に集まっている。

そして、当然人間もいる。


「なんなんだ、ここは」

翔平は唖然としている。


「とりあえずウィーネを案内するよ。」

「いや、、ちょっと待ってくれ。いったいこの村はなんなんだ?」

晴人は慌てて聞く。

「何をそんなに驚いてるの?別に普通の村じゃないか。」

「いや、普通じゃないんだよ!ここは動物の村なのか?」


戸惑う二人を不思議がるかのようにアランは平然としている。

「君たちだって動物でしょ?」

その言葉に二人は返す言葉が出なかった。


「晴人、とりあえず行ってみよう。」

翔平が小さな声で晴人に言った。

「アラン、とりあえず案内を頼むよ。」



村の入り口には門番をしている二匹の犬がいた。どちらもアランとにた柴犬のような色をしていた。

アランがさっと前に出る。

「お疲れ様です。アラン様。」

二匹の犬がさっと首を下げお辞儀のような動作をする。

二人にはその光景がおかしく映る。

…犬にも上下関係があるのか??


「アラン様、そちらにいらっしゃるのはどなたですか?」

門番の犬が二人見ながらアランに聞く。


「この二人の人間は遠方からの客人だ。通せ。」

「かしこまりました。」

そういうと、二匹の犬は二人にもお辞儀をして門を開けた。


翔平がアランに尋ねる。

「お前は、この村では偉い人なのか?」

「言ってなかったっけ、僕は犬の族長だよ。」

「そーいえばさっきいってたような…」

どうやらアランは偉い犬のようだ。


「それにしてもこの村、よくできてんなぁ」

翔平の言う通り、この村では信じられないような光景が広がっている。

小動物から牛や馬など大きな動物が一緒に歩いている。

いろんな動物が種族関係なく話し合っている。

村からは楽しそうな話し声が溢れている。

ウィーネが悪いところでないことは晴人にもすぐにわかった。


「君たちはいつまでここにいるつもり?」

アランに聞かれて二人はハッとした。


「いつまでって、今はわからないんだけど……」


晴人はここから帰れるのだろうかという不安に襲われた。いつどうやって帰ればいいんだ、、


晴人が戸惑っていると翔平が助け舟を出した。

「帰る準備ができたら帰るよ。」


「そう、わかった。ではそれまでの宿を用意するよ。」

「それはありがとう」


宿が見つかったのはよかった。

しかし、晴人の心に芽生えた不安が消えることはなかった。


「今日はとりあえず休もう。ここへ来たということは帰り方だってあるはずだ。」

翔平はその不安を感じ取ったのか優しく晴人にそう言葉をかけた。


「そ、そうだよな。大丈夫だよな。」


晴人はこれ以上弱い姿を翔平に見られたくなかった。だって翔平は強いやつだ。この状況を楽しめるくらいに。

でも俺は弱い。だからいつも翔平に頼ってきたんだ。

だからだろうか、俺はどうしても自分が好きになれないし、自信もない。俺はいつでも変わりたいと思ってるんだ。

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