第7話 意外にも彼らの昼食は和やかに進む
キーンコーンカーンコーンと小学生の時から変わらない音が鳴り、授業が終了する。いや嘘。小学校の時とは違うかも。高校の鐘の音は電子音だが、小学校のはちゃんと鐘がなっていたような気がする。だから変則日程だと融通が効かなかった記憶がある。
それはともかくお昼の時間だ。この高校の昼食の選択肢は4つ。学食、購買、お弁当、その他だ。お弁当はいわずもがな。学食と購買は校内に食堂と購買部がありそこを利用する。そしてその他とは校外にでてコンビニやスーパーで買うもしくはお店に入り昼食をとる方法だ。ちなみに校外に出ることは校則違反ではない。
オレはお弁当派閥だ。涼白さんと伊万里さんも同じ派閥。伊万里さんが涼白さんの前の席を借りて一緒に食べている。初めは昼休み中どちらかと席を交換しようかと提案したが断らてしまった。伊万里さんに「あなたのぬくもりを感じたくないし、アリアのぬくもりをあなたに感じてほしくないと」断られてしまった。もう伊万里さんたら、独占欲が過ぎるぞ。このこの。
あと普通に親切心だったよ。ぬくもり云々に関しては全く考えていなかった。そこまで変態じゃないよ。
ということでオレは自分の机にお弁当を広げ一人で食べている。お弁当よし、イヤホンよし。いただきます。
「宗介くん」
「っはい」
びっくりした。涼白さんに突然話しかけられた。意識をそちらに集中していたぶん驚きもひとしおだ。
「一緒にお昼食べる?」
「「え」」
伊万里さんとオレの驚きの声が重なる。
「伊万里さんがめちゃくちゃ動揺してますけど」
「な、な、なんでこの人を?」
「だって宗介くん一人で食べているみたいだし。一緒に食べたほうが楽しいよ」
「私が全然楽しくないわよ。いいアリアよく聞いて。日本では食事の最中は黙るのがマナーなの。だから彼と一緒に食べても楽しくなることなんてないわ」
「いつも一緒に話しながら食べてきたよね?」
「では間をとって一緒に食べるがオレは喋らないというのはどうだろう」
「日下部君、黙って」
「もうそれじゃあ一緒に食べる意味ないでしょ」
割と本気で発言したんだが。いいのよ。オレはニコニコ笑って見守っているからいつもの二人の昼食を繰り広げても。
結局涼白さんが押し切って一緒に食べることになった。まあ机を涼白さんの机にくっつけるだけだが。
「いや~すみませんね~気を使わせてしまったみたいで」
「いえいえ、いいんですよ~同じ部活仲間じゃないですか~」
「「えへへへへへ」」
「ちょっと待って」
オレと涼白さんが馴れ合っていると伊万里さんからストップがかかる。
「今聞き捨てならないことを聞いたんだけど、同じ部活?」
「「うん」」
「誰と誰が?」
「オレ(私)と涼白(宗介くん)が」」
「気をつけてアリア。この人アリアのストーカーよ」
「いやいや、最初に入部しようとしていたのにオレだし」
それでいうと涼白さんがオレのストーカーなのでは。
「まさかもうアリアの行動パターンを予測するまでに至ったのね。気をつけて高次の変態よ」
「被害妄想がすぎるよ」
しかも被害を受けてない人が。いや被害出してないけどね。なんだ高次の変態って。
「だったら私たちの会話を盗み聞きしたのね」
「そそそ、そんなこと」
「ほら怪しい」
盗み聞きなんてしてないしてない。さっきもイヤホンをさしていたけど、何も聞いてなかくて外の音に集中していたことなんてない。ないったらない。
「りんちゃん。そもそも私が入る部活を口に出したことなかったよ」
「そう、じゃあ偶然なのね」
涼白さんは少しオレたちを泳がせている節があるよね。すぐにオレを庇ってくれても良かったんだよ?
「それにしても同じ部活ね……それで日下部くんはいつ退部するの?」
「この時期から退部を考えることなくない」
「心配しすぎだよりんちゃん。同じ部活だからって特に何があるわけでもないのにね。ねー」
「ねー」
涼白さんもなかなか鋭い刃持ってるね。さらっと予防線を張った感じ。もしオレが本当に涼白さんを狙っている男子だったらがっくし来ていたことだろう。でもオレにとってはそのガードの高さは好印象です。
「そんなに心配なら。りんちゃんも同じ部活に入る?こっちの部活は兼部でも多分オッケーだよ」
「うちの部活は兼部ダメなのよね」
「わかった。じゃあ間を取ってオレがテニス部に入る」
「黙ってて」
やだ、冷たい声。ぞくぞくしちゃう。流石にボケだよ。テニス部兼部できないみたいだしね。
「ちょっと待って」
再び何かに引っかかったように伊万里さんが止める。なんか既視感あると思ったら、あれだね相席するやつだね。
「私がテニス部なんて言ったかしら」
「言ってないのでは?」
オレは聞いたことがない。
「じゃあなんで私がテニス部だって知っているのかしら?私のストーカー?」
「え?テニス経験者でしょ?だって少し日焼けしてるから外のスポーツで、筋肉のつき方が右腕と左腕で違うので筋力が偏るスポーツ。で、多分テニス部かなぁと」
「気持ちが悪い」
「ちょっとその発言は気持ち悪いかなぁ」
伊万里さんが肌を擦ってとり肌を沈めている。涼白さんも困った顔で微妙な笑みを浮かべる。
「待って待って待って。オレも中学時代テニス部だったからさ。テニス部という選択肢がすぐ身近にあったというか、シンパシーを感じるものがあったというか」
え、これ気持ち悪いの?高校生探偵も似たようなことやってたよ?
「はぁ、そういうことにしといてあげるわ」
おや、素直。
「宗介くんは中学の時テニスやってたんだね」
「はい、恥ずかしながらアニメの影響で始めて」
「へ〜何のアニメ?テニ◯リ?」
「いえ、てー◯ゅう」
「ごめん知らないや」
でしょうね。
「…………珍しい」ボソッ
知っているのね伊万里さん。
***
「そういえば、宗介くんのお弁当美味しそうだね」
「そうかな」
今日の献立は白飯、ミニハンバーグ、付け合わせの野菜にハッシュドポテトだ。
「二人のお弁当こそ盛り付けも綺麗で美味しいそう」
「ありがと。私のはママが作っているけど、りんちゃんは自分で作ってるんだよ。凄いよね」
「もう余計なことは言わなくていいの。別に普通よ」
「へぇ奇遇。オレもオレの手作りだよ」
「「え」」
ちょっと待って。今涼白さんまで驚いていたよね。伊万里さん、綺麗な口が空いてますよ。
「そんなに驚くことかな?このお弁当だって冷凍食品と今日の夕飯のハンバーグをちょっと取って詰め込んだだけだし」
「その夕食を作ったのは?」
「オレだね」
「……嘘。日下部くんと同レベル」
「伊万里さん!伊万里さん!」
伊万里さんがショックで意識が!
だん!
伊万里さんが拳で机を叩く。
「そのハンバーグちょっと食べてもいいかしら?」
「あ、私も」
「どうぞ」
まだ口をつけてないものがあるのでお二人でどうぞ。
「おいしい〜」
「くっ、おいしい」
なんで悔しいそうやねん。それと伊万里さん「くっ」っていうの似合いますね。
「じゃあ私からはこれをあげよう」
「………。」
涼白さんからは卵焼きを、伊万里さんは無言でお弁当の蓋に上に鶏の照り焼きを置いていった。
「おお、めちゃくちゃおいしい」
どちらの品も本当においしい。
「ママに伝えておくね」
「……どうも」
ちょいちょいと引っ張られ、涼白に耳元で囁かれる」
「自分の料理褒められて照れてるよ、りんちゃん」
照り焼きだけに。ってやかましいわ。
大丈夫ちゃんと口元が緩んでるのは気づいてるよ。
「ちょっと何を言ったのアリア?」
「別に〜私もりんちゃんの料理食べたいなぁって言ったの」
「嘘ばっかり。いつも交換しているくせに」
「いつでも食べたい味なの」
「もう調子いいんだから」
そういいつつ、すっとお弁当を涼白さんの方に寄せる。涼白さんも同様だ。
はい、ごちそうさまです。
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