第38話 リコールというか、ノルマを課す前に。~外交・先見チート チフユの手紙~

「ん~……見た感じ、フォレストエルフの時の箱と同じ造りか。あのとき箱が開いたのは、たぶんら経年劣化から偶然──普通に開いたわ。クソッ、認めたくねえ……!」


 セージはブツブツ言いながら受け取った箱を開けた。


 その中身は以前とほぼ同じである。

 セイヤの仲間が書いたらしい手紙。

 それと、マリンブルーの色をしたネックレス。


「!! さすが陛下!」


 手渡した本人のエアルウィンは瞠目した。

 セージが絡んでいるからか──演技の崩れ具合が増している。

 自分の種族担当の物ということも関係しているのだろう。


「セージ様万歳……」

「我が王に不可能はございません……」


 ションボリしつつもセージを褒めることは忘れない二人。


「せめて……知的要素担当のマーメイド関係者だと信じたい。脳筋だったり嫌な真実じゃありませんように……!」


 そういいつつ、パタパタと手紙を開いてゆく。











『聖也君の子孫君、こんにちは。


 シーエルフ担当のチフユです。

 なぜボクがシーエルフ担当かは聞いてますかね?

 情報や交渉に強いのと、ちょっとした予測の力があります。

 ボクの能力の相性的に、シーエルフが打ってつけでした。


 あっ、そういうとその辺の人より弱いって勘違いされそうですね。

 ボクもそうですけど、シーエルフも最低限の戦闘力はあります。

 最弱って言ってるのは、あくまでエルフという種族の中でだけ。

 誤解されがちですけど、そこいらの冒険者よりは全然強いんですよ?


 そして何を隠そう、聖也君の子孫の到来を告げたのはボクです。

 二つ持っているチートの一つで、その名は【先見チート】。

 名前の通り、大まかな先行きが分かる力なのです。

 たくさん褒めてくれてもいいんですよ? エッヘン!


 ……と、偉ぶりたいところなんですけど今のは無しで!

 調子にのりすぎて聖也君にお仕置きされるの、こわい。

 あ、あの【禁忌魔法】だけは二度と食らいたくないです。

 なんで、あんなことをニコニコしながらやれるんですか!?

 聖也君って凄く頼もしいですけど、こわい、こわすぎですよ。


 おっと、【先見】から話がそれちゃうところでした。

 実は【予言】ってほどの精度はないんですよねコレ。


 なんでか、世間的には【予言者】って扱いになってますけどね。

 そこまで言われるほど、強大な能力ではないです。

 同じに聞こえそうですけど、【先見】と【予言】は全く違います。

 先見は──【大きな流れだけがわかる】って言えば伝わりますか?


 例えば……子孫君の名前に【聖】の字がついてるかな、くらい。

 その程度で、詳細に何て名付けられてるかすら分かりません。

 なので、子孫君のことは仮に【聖一君】と呼んでおきます。


 さて、今回の主題に入ります。

 聖一君には大事なことを伝えなければいけません。

 今は海の向こうへと退けた【アラゴン神帝国】。

 シーエルフに常時、動向を見張るようお願いしています。

 聖一君の時代にどうなってるか、詳しくは分かりません。


 ただ、良くない【先見】の結果が出ています。

 当時、彼らは非常に危険な思想を持っていました。

 とても偏った選民思想を持っていて、他の民族を弾圧。

 結果的に、世界を支配しようとするほどに。


 聖也君とボクらで力を合わせて海の向こうまで追いやれはしました。

 でも逆に言うと、撤退しただけで滅んでいるわけではありません。

 とはいえ、時代ととも人の考えや主義も移り変わります。

 年数を経た結果、平和な国になっていれば良いのですけど……。


 どうしても【先見】の結果が気になるのです。

 ですので海を自在に動けるシーエルフに監視を任せることにしました。


 海上を移動できる【ポロトコタン】を造ったのは、そのためです。

 移動要塞の名前の由来はボクらの出身国の北の言葉からです。

 エルフにもそう伝えたのですが、正確な発音は伝わりませんでした。


 そこで申し訳ないのですが、聖一君にお願いがあります。

 薄々気づいてるかもしれませんが、先の【アラゴン神帝国】の件です。

 そちらの時代での彼らの主義を見極めてほしいのです。

 他国と調和できていれば良し。でももし、【先見】の結果通りなら……。


 聖一君には、とんでもない重圧を押し付けてしまうかもしれません。

 ただでさえ、聖也君の悲願の件もあるというのに……。


 今のうちに謝っておきます。

 ボクらの代で全てを清算できず、色々と背負わせてしまいました。

 本当にごめんなさい。


 とりあえず、ボクが伝えたかったのは帝国のこと。

 他の経緯は別の仲間が書いてましたので、それはそちらに任せます。


 これを読み終わったらシーエルフに帝国の現状を聞いてください。

 このことは彼女らにとっても他人事ではありません。

 もしもの時は聖一君、帝国からエルフを守ってあげてください。

 大丈夫です、心配しなくても聖一君は聖也君の子孫。


 力量的には十分すぎるハズです。

 いや──下手をすると聖一君の方が怖いかもしれません。

 これ、【先見】で出てたから仲間にも言ったんですけど……。

 あの、聖一君って本当に自分が弱いと思ってるんですか?


 なにせ、先見によると【聖一君の方が聖也君より強い】みたいですし。

 具体的に、どれくらい違うかは分かりませんでした。

 ほんのちょっとの差かもしれませんし、聖一君の方が圧倒的かもしれない。

 とにかく、聖也君ほどの強さがあれば問題はないハズです。


 ひとまずボクがメインで伝えたいのはこれくらいですかね。



 そうだ、最後に一つだけ問題を出しておきます。

 ちょっとしたお遊びですから心配しないでください。

 別に本気で取り組まなくてもいいですからね。


 ボクらが召喚された人数は6人ってのは気づいてますよね?

 実は、男女の比率でいうと半々なのです。

 つまり、男の子が3人と女の子が3人。

 さて、誰が男性で誰が女性か、わかるでしょーか?


 聖一君は聖也君の子孫ですし、聖也君だけは分かりますよね。

 でも他は意外と中性的な子もいるから、分かりづらいかも。

 まあ、こんなのは暇つぶしにでも考えてみてください。


 ……実はその中に聖也君の恋人がいる、なんて言ったら驚きますか?


 って、お遊び要素もこれくらいにしとかないとですね。

 また、こわいこわい聖也君にお仕置きされてしまいます。


 やたら常識人ぶるところは家系で同じだって結果は出てるんですけどね。

 あと、本気になった時の性格のヤバさも…………。


 あ、聖也君がリーダーなのはそこが原因じゃないですよ。

 能力が強いだとか、常識人ぶってるからだとかではないです。

 なんでリーダーかというと、大事な判断や方針を決める時のこと。

 聖也君って、感情を徹底的に排して客観的な決断を下せるんです。


 ……ただし、仲間や家族が絡む時だけは別でけどね。

 家族を傷つける相手にはゾッとするほどに冷酷になります。


 聖也君は【笑って済むキャパ】を超えると、本気でヤバいんです。

 ただ、悪意の有る無しで少し話は変わりますけど。

 冷酷になるって言ったのは、害意を持って身内に危害が及ぼされた時。

 その場合──【本当に平和な世界出身か】ってレベルになります。


 まあ、普段も笑いながらお仕置きしてくるんですけどね。

 その証拠として、エピソードの一つにこんなのがあります。


 とある仲間の内の一人が『もうそれで【生活魔法】って名前、無理がありすぎない? 【ヤバい魔法】にでも名前、変えたら?』というような意味合いの発言を聖也君にしました。


 すると──『お前しばらく原始生活決定な。ついでにお仕置き』って。

 め、名誉のため誰の発言かは伏せさせてください。

 いくらボクらがチート持ちだからって、心は人間なんですけど!

 身体は無事でも、精神が無事じゃないんですけど!

 アレ、本気でやめてくれないですかね……。



 そうだ、他の子と同じく試作品のアクセ入れときます。

 誰かにあげてもいいです、良かったら使ってくださいね。

 ちなみに、アクセが女性用だからといって持ち主が女性とは限りません。

 単純に、とある目的で造った試作品に担当がついただけなので。


 しまった。もう紙面が尽きちゃいました。

 まあでも、帝国以外の色々な事情は他の仲間も書いてます。

 ですので、照らし合わせて総合してみてください。



 時空を超えてお仕置きしてこないでね? 外交・先見チート チフユより』




「………………」


「へ、陛下……?」


「ま、まさかまた不穏なことが書かれていたのは……」

「我が王よ、聖火のご用意をいたしましょうか?」


「う、うーん。これはなんというか、扱いに困るな。とりあえず燃やすまでしなくてもいいか……? ひとまず我が家の神棚の所にでも置いておこう。ところで、エアルウィンさん」


「はい~?」


 思い出したように、おっとり口調に戻るエアルウィン。


「手紙の内容でですね、聞きたいことがあるんですけど」

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