第5話 告白ざまぁ、そして故郷(ふるさと)へ……

「セージさん、私とお付き合いしていただけませんか?」


「すいません、無理です。というかフィーナさん、この前、俺のこと振ったばっかじゃん」


 エルフコンビ二人と街に戻ったセージ。

 当初の予定通り、人が嫌がる塩漬けクエスト(報酬が割りに合わないので放置されている物件)をこなしつつ、余力で高難易度のクエストもいくつか達成していたのだった。


 そんなある日、街を出るきっかけとなったギルド受付嬢こと、フィーナから逆告白されたセージ。


「ええっ! でも、この前はセージさん、私に好きって言ってくれたよね?」


「そうだけど……今の告白って、俺が高難易度クエストをこなしてるからでしょ? それなら後ろにいるエルフのお陰だし、俺自身は全く強くなってないよ」


「いえ、セージさんの顔と性格自体は元々好みだったんです。ただ……生活する上で、冒険者をやるなら強くないと生活できないし、常に命の危険を心配するのもしんどいので……」


「というと?」


「別の職業につくなりして安定してもらえればオーケーを出してました。最後に引き留めようとしたのは聞こえてなかったみたいだけど……」


「え~……」


「ということで、改めてどう?」


「いえ、やっぱり結構です。逆に言えば戦闘力じゃないにしろ、他のステータスが無くなれば付き合っても捨てられそうだし……。ほら、ここのギルドのトップ戦士・ゴーリーなんかは打ってつけの人物じゃない?」


「ゴーリーさんはちょっと……。乱暴な人は苦手なので……」


「あ、そっすか。まあ世間話はこれくらいにして、今日の依頼表貰えます? 教会依頼の塩漬けクエスト・【迷いの大森林】近くに生えているエンジュ草の採取のやつ」


「はい、どうぞ。私はいつでもウェルカムなので、考えておいてくださいね?」


「だから無理ですってば。さっきも言ったけど、コレ借り物の力だし。それじゃ、行ってきます」


「グスン」


 ………………。


 街を出て目的地に向かう道中。

 アイナとエルフィは興奮していた。


「見ましたかエルフィ!? あれぞ……【告白ざまぁ】!!」

「ええ! さすがセージ様っ! 胸がすく思いとはこのこと! ナイスざまぁ!!」


「君ら大人しくしてたと思ったらこれか。別に振られた意趣返しがしたかったわけじゃなくって、価値観の違いに過ぎないってば。【ざまぁ】じゃないから。必要以上にフィーナさんをおとしめちゃいかんよ」


「はーい」

「愚民が勝手に堕ちていくだけですしね。貶める必要もありませんよね」


 好き勝手な言い草の二人。

 もはや何を言っても無駄な様子。

 セージは諦めた。

 人前で失礼な言動をとったら……強制的に制止しよう。

 そう思い、何か方法を考えておこうと決心する。


「ところでさ、二人とも」


「はい?」

「我が王、なんでしょうか?」


「道行く冒険者の人なんだけど。目が合ったからって、因縁つけるのやめない? まるでバーサーカーみたいだよ俺たち」


「セージ様、それは仕方なきこと」

「王の威光にひれ伏さないなんて……無双してくれと言ってるようなものです」


「威光なんて放ってないから。女性や子ども助けるのはいいけど、次に理不尽な無双したらエルフの里送りね」


「!?」

「セージ様! クーリングオフだけは、クーリングオフだけはぁあああ!!」


「なんで悲痛というか──被害者っぽい感じなの? はぁ、まあいいか。どうせこのクエストで最後だし」


「えっ!?」

「どういうことですか!?」


「あれ、言ってなかったっけ? 今やってるのって、お金稼ぎより街の恩返しなわけで。高難易度クエストはともかく、塩漬けクエストは今回の薬草採取であらかた終わりなんで……改めて故郷に帰ろうかなと」


「なぁんだ」

「そういうことだったんですね」


「…………君らもエルフの里に帰るんだよ?」


「「エッッッッ!?」」


「ここまでキレイにハモるのって珍しいね。逆になんで驚いてるのかナゾなんだけど……」


「急にそんなご無体なことをおっしゃられたら驚きますよ!」

「ええ、セージ様の村に着いたら──【ざまぁ】、【無双】からのスローライフ・【農業チート】のターンが始まるというのに!! 欲を言えば【モフモフ】も……!」


「また新しい単語が増えてるし。いいよその農業何とかってやつは。なんか土壌に悪そうだし、普通に先人の知恵を生かして育てるよ」


「土に宿るマナの存在を把握しているとは、さすが我らが王」

「私たち、どこまでも着いてゆきます!」


「……君らさ、俺についてくるなら理由、なんでもいいんじゃないの……?」


「…………」

「…………」


「おいこら。無言で目をらすんじゃない」


「私たちの存在意義は王たるセージ様ありきなので」

「もし自害せよと申し付けられればこの場で即刻、自害しますが?」


「急に重たいことを言うな。それから論点をすり替えるな。ふ~…………ご先祖様からの手紙にもあったし、もはや連れていくしかないのか……」


「なんと! 初代勇者様の古文書に!?」

「我々の同行が予見されてたと!? か、感激です!!」


 セージは天をあおいだ。


「まぁ……そんな感じ。双子っぽいエルフが付いてきたら諦めろ、的な。ご先祖様の言う通り、悪人でもなければ役にも立つわけだし……ここはポジティブにいくかぁ……」


「まさか私たちの嫁入りまで予言されてたなんて」

「アイナ、街に戻ったら花嫁衣裳の相談をしましょう」


「おうこら。さっそく調子に乗るんじゃない。むしろ君らの方が【スーパーポジティブ】だわ。俺もけっこう前向きな自覚があったけど、君らを前にしたら形無しだわ」


「そんな! 私たちが王を差し置くなんて!」

「滅相もない! スーパーポジティブの称号はセージ様のものです!」


「別に称号が欲しいわけじゃないから要らん。わかったわかった、連れて行くよ。アイナにエルフィ、君らって農業や家づくりって出来る?」


「ふふふ……! 王よ、私たちは別名【森の民】ですよ?」

「農業も木を使った家づくりも──お手の物です! 大船に乗ったつもりでいてください!」


「戦闘のときといい、本当に肝心なところで役に立つのが逆にしゃくだわ。ありがたいけども」



 悪態をつきつつも、結局は情にほだされ二人を故郷へと連れ帰るセージだった。

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