第二十八話 スリカ視点
黒い髪の少女が戻ってきた。
『守護竜』が暴れる森で、正直誰も生きていないだろうと思っていた私は涙を流す。
「おお、おおおおお! よくぞ、よくぞ戻って来てくれたな!」
嬉しさのあまり、感極まって少女に抱きついた。
戻って来てくれてありがとう。
そうだ、疲れているだろうから、この森でしか取れない飲み物や食べ物を用意してやろう。
「辛かったろう、大変だったろう。ささ、暖かい飲み物を用意してやるからゆっくり休んでくれ、お腹が空いてるなら食べ物も用意するがどうだ」
「いや、飲み物だけでいい」
「そうか。なら最高の紅茶を用意しよう」
少女が飲み物だけを要求したので、ウェイターのようにテーブルまで案内して、『時空間アイテム袋』から淹れたてほやほやの紅茶を少女に出した。
「体が休まる紅茶だ。さあ飲んでくれ」
湯気立つ紅茶の匂いを嗅いだ少女が首を傾げるが、文句を言わず飲んでくれた。
飲んですぐ、少女が口を開く。
「スリカ少佐。この紅茶はまさか」
「知ってるのか? これは『ゴリラティー』というこの森に生息するゴリラからしか取れない最高級の紅茶だよ」
「どおりで飲んだ覚えがあるはずだ」
どうやらこの味を知ってるようだ。
でも変だな、ゴリラティーは名前の通り、ゴリラの血液からしか取れない紅茶だ。
飲んだ覚えがあるなら、この森でゴリラの血を飲んだことになる。
きっと戦闘中にゴリラ血がたまたま口に入ったとかいう理由で味に覚えがあるのだろう。
また一飲み、少女の顔がマッサージを受けた自分のように緩んだ。
心休まったようでなによりだ。
「落ち着いたようだし、君の名前を教えてくれないか」
「ああ、私は『ディーア・クロノ』だ」
「『ディーア・クロノ』か。よく『守護竜』が暴れる森から帰還してくれた。礼を言う、ありがとう」
「? 感謝を述べられる覚えは無いが?」
「いやいや、帰還してくれただけでもありがとうだ」
「そうか」
「で、だ。ポイントを確認したいから袋を渡して貰えないか」
「ああ」
クロノから袋を受け取った。
この試験の合格ポイントは10,000ポイント。
ある程度の強者なら簡単に集められるポイントだ。
自分は同じ試験で80,000ポイントを貯めて、同期達に差をつけて一位で合格した。
クロノは『守護竜』がいた森で戻ってきた強者だ、自分には及ばないだろうが――。
「どれ、ポイントは……1、10、100、1,000、10,000…………ろ、612,100ポイント!?」
息を吐く勢いで、思わず鼻水が出そうになった。
クロノが少し心配そうに口を開く。
「ダメだったか?」
「ダメじゃない。ダメじゃないけど……なんだこのポイントは。こんなの私でも……いや、もしかしたら歴代最高得点なんじゃ……」
もしかしてこの森にいる猛獣を全て狩り尽くしたのか?
調べてみるか、『サーバーアイ』。
魔力を込めた手を力強く閉じ、目も閉じて、手から解放されたように流れる魔力て森全体を見る。
守護竜がいない。変だな、帰ったのか?
何故ログハウスが!?
荒野になっていた森は再生しつつあり、あと一時間もすれば元に戻りそうになっていた。
大地の裂け目もあるが、もう塞がりつつある。
まるで怪我が治っていくように大地が再生する様は、この星を生きてると証明するようなものだった。
更に魔力の流れを早くして、念の為この星の半分まで観察する。
が、猛獣はいるものの、生存者は自分とクロノ以外は誰一人いなかった。
もしや、他の奴らから殺して奪ったのか?
いや、クロノはそんなことをするような女には見えない。
うーん、じゃあ600,000ポイントは一体どこから……。
ポイントの出どころについては何も分からなかったが、この星には他に生存者がいない事だけは分かった。
ゆっくりと目を開く。
「……もうこの森にいる人間で生きてるのは自分とクロノだけか」
誰も生きていないなら待っている意味は無い。もう試験は終わろう。
後は本部に帰還して、大佐へ唯一合格したこの少女、クロノを会わせて自分の任務はお終いだ。
クロノの目を見ながら、伝える。
「いいだろう、クロノ。試験は合格だ。これよりガーディアンズ本部へ転移する」
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