本作は、古墳時代の武蔵野を舞台にした歴史小説でありながら、英雄譚ではなく「移住と共同体」の話として読ませる点が斬新で巧みでした。
都を追われた主人公は、自分の知識で新天地を支配してやろうと武蔵野へ向かう。だがそこで出会うのは、未開の土地ではなく、すでに高度に発展し、平和に暮らす大集落――この肩透かしがまず響く。
さらに後半では、ようやく得た安住の地が――この先は実際にお読みいただきたいです。
ラストで、主人公はもはや孤独な放浪者ではなく、。愛する人と仲間を伴い、次の土地へ向かう。その変化が静かな余韻として沁みました。
古代の生活感と、人が移り住みながら共同体を作っていく歴史の手触りが、素朴に、しかし確かに伝わる一作でした。