第52話
「あの、若。」
「ん?どうした?」
俺は自分でもわかるくらい落ち込んだ声を出していた
「……お邪魔でしたでしょうか」
「いや、お前のおかげで冷静になれた。ありがとう。今は一人にしてくれ」
「……わかりました」
シズカはそう言って立ち去っていった
俺は深く溜息をつき、歩く
リョウにでも、会ってみるか
普通に今まで殆ど忘れてたからな、同じタイムリーパーだっていうのに
とりあえず、今はあいつらから少し距離を置きたい
俺はその足のまま、スラムへと向かう
やっぱり、今の俺はスラムぐらしの方が向いているのかもしれない
一人の方が安心できてケンカもそこそこに強いときた
いや、そもそもシズカがいないと生きていけない時点でそれは無いか
カリナさえも大変だったというのだ
誰だ……か
俺はそこまで変わちまったか
自分の夢とはかけ離れてしまった
距離を置いたのは俺だ
どんな時でも笑ってられる本物はこの世に存在しない
笑って自分を騙し続けてもあいつらの死に際が頭から離れない
カリナが記憶を取り戻したという事実に実感が全く湧かず、カリナの死ぬ寸前の顔が頭に思い浮かぶ
両手を上げて喜ぶことができない自分
仲間を取り戻すことにどこか怯えている自分
大っ嫌いだ
臆病で頭脳派を気取ってはいるが情けなくて、もう誰も騙せなくなってしまった俺が
大っ嫌いだ
だが、今までのままの俺ではアレをまた繰り返してしまうだろう
あいつらが死んでいった原因は全て俺にあるのだから
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