第14話 涙
しばらく泣いていて、落ち着いたころには、みんな、次の事をやっていた。
色んな所に電話で訃報を知らせたり葬式の手配の電話をしたりしていた。
泣くのが納まりかけていたころに兄から母が呼んでいるという伝言を聞き
妹と病室に向かった。
その部屋は母と眠っているおばあちゃんだけだった。
蒸し暑かった。外はギラギラと日が差して室内を暑くしていた。
滅多に泣かない母がおばあちゃんを見てずっと泣いているのを見ると
おばあちゃんとの思い出を思い出す。
私と妹のことをいつも決まって「めんこいね~」って言ってくれて、
小学校の運動会でも中学校の運動会でもピアノの発表会でもずっと
来てくれていた。その中でも、私たちとおばあちゃんの思い出には必ずと言っていいほど母がいた。幼少期から母はおばあちゃんと一緒にいて最後まで一緒にいた。
なおさら、涙が込み上げてきて鼻がツンとする。
乾きかけてた服の袖も乾ききる気配がない。
しばらくみんなで泣いた。
落ち着いてきた頃にちょうど本州にいる母のいとこが来て、
思い出話が聞きたいと言ってきた。
おばあちゃんの口癖のこともおばあちゃんがよくしてくれた
おばあちゃんの幼少期の話も…。
その人は「知らなかった」と言って驚いた。
私たちは耳にタコができるほど聞かされていた話だったから。
それだけ長く一緒にいたことを改めて実感した。
あの時間がずっと続くと思っていたあの頃の自分に言ってやりたい。
『時間には終わりが必ず来る』
この言葉をよく聞いていたがあの頃はそこまで重要に考えていなかった。
けれども、今避けては通れない道を通ったからこそ言える。
もう一度おばあちゃんの声を聴きたい。
そう願っても聴けることはない。
もう暖かい手に触れることもない。
もうあの長話を聞けることもない。
聞けるのは”今”だけということを心に染みなくてもいい。
注意しろともいわない。
ただ、心に留めといて欲しい。
それが私が覚えていてほしいと世界中の人々に対する心です。
おこがましいや、他人だから口出しするなと思う方がいるかもしれません。
しかし、生涯の記憶がある中で最初の大切な人が亡くなるという大きな経験を
したからこそ、これからの人生の中で経験することになるだろう小さい子から
何回も経験している大人の方々に悔いのないように生活してほしいという
皆考えがちですが忘れやすい心を今一度思い返して欲しくて書きました。
この話を書き始めてから1年経ちます。
そして、もう少しでおばあちゃんの1回忌を迎えます。
1年前のことを思い返すと今なら『悲しい』ではなくて『寂しくて』泣いているのだと思います。
ありがちな言葉ですが、その方との思いで一つ一つを大切にこれからも過ごしてください。
この長い話を読んでくれた皆さまありがとうございました
ベッドの上のあなたへ むねかた @munekataminori
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