356 美弦合流
アルガスが設営したテントのすぐ脇に一台のバイクが停まって、ライトの光がフッと闇に吸い込まれた。
「誰か来たね」
先に
大っぴらに開放している感じではないが、そこに能力の気配を感じた。
敵の偵察にフィールドを回っていた
「うちの施設員のバイクだと思うので、キーダーの誰かを連れて来たんだと思います」
「そうなのか」
「恐らく、本部からじゃないですかね」
曳地は「へぇ」と目をかっぴらく。
彰人はバイクの主が誰なのか見当がつくようだが、桃也には全く想像がつかなかった。
本部所属の施設員はあまり把握できていないのが現状だ。
「向こうに4人もいらねぇしな」
桃也が目を凝らすと、一つの影が境界線を飛び越えて来るのが見えた。
「
「美弦」と桃也が呼び掛けると、すぐに彼女の声で「はい」と返事が届いた。
輪郭が徐々に鮮明になって、数メートル先から一気に4人の元に飛び込んで来る。
「美弦、お疲れ」
桃也が
「──それで、私が先に来させてもらいました。後で平野さん達とも合流予定です」
「分かった。長官まで来るなら、マサと
「
久志の意見に彰人が
「
「あの二人は敵の所へ向かってる。綾斗くんが建物の中だろうって当たりをつけたんだけど、応援は欲しいよねって桃也と話してた所だよ」
「なら私が行きたいです!」
考える間もなく美弦がピシリと挙手するが、「怪我してるコは後回しだよ」と彰人に即却下されてしまう。
パッと見た感じは怪我してるように見えないが、彼女があっさり「分かりました」と食い下がる所を見ると、余程の傷を負っているのかもしれない。
桃也には建物の中にあるという気配も、美弦の怪我も見抜くことも出来ない。
彰人と最初に会った頃から思っていたが、これは経験と熟練度の差だろうか。
「行きたいのは分かるけど、美弦は曳地さん達と外を見張っててくれ」
桃也はフィールド内に居るだろうキーダーの顔を頭に並べて、彰人に向き直る。
「長官が来るなら、やっぱり俺は中に入るよ。彰人はフォロー頼むな?」
「さっきの話ちゃんと聞いてた? 君は──」
「無理はしないからさ」
『大晦日の
「僕が引けって言ったら引くのが条件だからね?」
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