第21話 イ〇ナイツ

「はぁっ!」


俺の振るった剣が、金髪野郎の手にした剣を弾き飛ばす。

どうやらもう真面に剣を握るスタミナさえない様だ。


「ひぃ……ひぃ……もう許してくれ……」


やばいと思ったのか、奴はその場に跪いて許しを請いだした。

人の事を容赦なく殺しまくっておいて、自分は一回も死にたくないとかふざけた話である。


まあこいつの場合は一回こっきりだから、比べるのもあれだが。


「わかった。命は勘弁してやる」


殺す気なんて最初っからない。

チュートリアルミッションは‟倒せ”だったしな。


取り敢えずステータスを開く。

新たに追加されたクエストボタンから、チュートリアル画面を開い確認してみた。

が、まだ未達成だ。


どうやら、ただ相手が降参しただけでは駄目らしい。

まあこいつは疲労から降参しただけで、俺の剣はまだ一度も当たっていないのだからしょうがないか。


という訳で――


「けど、代わりに気絶するまでお前をこいつでぶっ叩かせて貰う」


手にした剣をこん棒に変える。

イメージした通りの形になってくれるので、ドラコの牙は本当に便利だ


「そ……そんな……」


何が「そんな……」だ。

死ぬよりはましだろうに。


「さんざん俺の事を殺しておいて、自分は痛い目にあいたくないなんて通らない。嫌なら死ぬまで続けるだけだ」


「……わ、わかった。だから殺さないでくれ」


「動くなよ」


「ぎゅえあ!?」


俺はこん棒を振りかぶり、奴の横っ面に叩きつける。

すると奴の体が盛大に吹き飛び、5メートル程向こうまで飛んで行ってしまった。


「えぇ……」


殺すつもりはないので、ちゃんと手加減したつもりだったのだが……


そもそも仮に全力だったとしても、俺に人をあれだけ吹き飛ばす様な力はない。

そんな強烈なパワーがあるのなら、最初の杭なんか軽く引き抜けていた筈だ。


「言ったじゃろ?ワシの牙は特別じゃと」


俺が呆然としていると、ドラコが笑いながら俺の肩を叩いて来た。

どうやら牙の力だった様だ。


聖獣の牙スゲーな。


「しかしあ奴、まだ気絶しておらん様じゃぞ?」


「マジか!?」


「ぐ……うぅ……」


近寄って確認してみると、奴は苦し気に呻き声を上げていた。

本当に気絶してない。


死んでもおかしくないと思ったんだが……あれだけ豪快に吹き飛ぶ攻撃に耐えるとか、流石Aランクハンターだけはあるな。


しかしこれだけ人外じみた打たれ強さがある割に、スタミナはそれ程でもなかった様に感じる。

まあ単に打撃耐性のレベルが高いってだけなのかもしれないが。


「トドメだ!」


手にしたこん棒で、倒れた奴を軽く叩く。

流石に弱り切っていたのか、今度こそ奴は白目をむいて気絶した。


「お!」


頭上で豪華版のファンファーレが鳴り響く。

レベルが上がった様だ。

しかも10も。


どうやら人間でも、倒せば経験値が入る仕組みの様だな。


だが上がった能力を確認し、俺は少し眉根を顰める。

成長がいまいちだったからだ。


HPは10上がっているが、それ以外がショボかった。

筋力2と、速さと体力が1ずつだけしか上がっていない。


まるで某シミュレーションRPGの、使えない奴の様な成長っぷりである。


「それでなくてもHPが一番いらないステータスだってのに……」


不死身の俺にとって、耐久力は完全な死にステータスだ。

ここだけもりもり成長しても何の意味もない。


……補填の癖にショボすぎだろ。


溜息を吐いていると、また世界が白黒に変わる。

目の前にパネルが現れ、チュートリアル達成おめでとうございますと表示されていた。


まあ成長はショボかったが、これで魔力付与を手に入れる事が出来る。

最初は完全に無理ゲーだと思っていたのだが、ドラコ様様だ。


俺は報酬を『受け取る』をタッチした。

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